第12話

 事件は意外な結末を迎えたと新聞は夕刊の一面と号外で報じ、ニュースは速報し、マスコミは再び騒いだ。周々木早苗と夫の大輔はテレビのニュースで知り、目を見開いた。千葉葵子が留置所内で自殺をした。逮捕から約五日のことだった。真相究明もできていないまま、事件の重要参考人は世を去ったのだった。

 マスコミ各位はさまざまな意見を交えて報じている。夫の浮気が原因で事件を起こし罪に耐えられなかった、夫の後を追い自殺をした、真実を喋ることが怖くて逃げた――等々。憶測は多種多様だったが、やりきれない気持ちになっていた早苗を、大輔は黙って抱き寄せた。つけていたニュース番組の最後は、こう締めくくられた。自殺した千葉葵子氏の最後はとても安らかで微笑んでいたそうです、と。それを聞き、早苗は何故か安堵した。


「ねえ、大輔。葵子さん、幸せだったのかな」


 呟くように尋ねると、さあな、と大輔。


「本人じゃなきゃわからねーよ、幸せだったかどうかなんて」


 そうだよね、と頷き続ける。


「大輔、さっきの件なんだけど……」

「ああ、うん。急でごめんな」

「ううん、気にしてない。むしろ、ちょっと会社に感謝した。上司さんにありがとうって伝えといて」

「え、あ、ああ。うん。わかった」


 葵子のことが速報で報じられる前、大輔は定時よりも早く帰ってきた。驚いていた早苗に、転勤することになった、と伝えた時、それは全国ネットで流れたのだ。


「行こう、熊本に。あたし、大輔と一緒ならどこへでも行くから」


 そう言うと、大輔の胸に顔をうずめた。数秒と経たず、嗚咽が漏れる。大輔は早苗の体を強く抱きしめた。

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