デート

晴れ時々雨

待ち合わせの時刻前だというのに既にベンチに腰をかけ、熱心にスマホを覗き込んでいるので声をかけると彼は拘束具を販売しているサイトを閲覧中だった。

「やあ、君も見てごらん。手首を戒めるのにもこれだけの種類とデザインがある。ただし君に選ぶ権利はない。これは君に着けるものだし、それを見るのは僕だからだ。それに君以上に僕は君を知っている」

そう言って開いていたページをブックマークした。

「しかし便利な世の中だね。紙媒体も嫌いじゃないしむしろ好きだが持ち運ぶのに色々と気になる点がある。これが本ならきっと写真集のような趣もあるだろうから大きさも含めブックカバーもできないだろう。別に恥じているわけじゃない。僕にはれっきとしたパートナーもいるし、何の気なしに雑誌を覗いてしまった人間の戸惑う顔を見るのもおもしろい。ただ芸術的とも言えるその手の雑誌は汚れてしまうのが惜しくて屋外へ持ち出そうと言う気になれないのだよ」

普段と比べかなり饒舌な彼は画面を閉じ立ち上がった。

「さあどこへ行く?どこへなりと。君の行きたいところすべて回り終えたあと、そこからは僕の領域になる。今見ていたのは今夜使うものじゃない。」

彼は車のドアを開ける。それは夜のドアに繋がっている。

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デート 晴れ時々雨 @rio11ruiagent

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