第128話 こたつバトル
夕食の後、俺と夏凛は再びこたつに入っていた。
何度か足が触れ合ううちに夏凛が小悪魔モードに入って、俺の靴下を足だけ使って脱がせようとしてくる。
「夏凛、俺もやられっぱなしだと思うなよ!」
「望むところです。兄さん!」
悲しいかな、脚が細い夏凛はこたつの中で稼働できる範囲も広く、その上、俺よりも運動神経の良い夏凛は片方の靴下を脱がせてしまう。
「ふふ、兄さんの靴下はもう片方しかありませんね」
「ぐぬぅぅ!」
こちらが不利だと判断した結果、負けないためにどうすれば良いか考え、行動に移した。
夏凛が諦めるまで脚をホールドする、それが俺の取った戦法だった。
夏凛も俺の戦法に気付いて脚を絡めてくる。始めた当初は「えい!」とか「やぁ!」とか言ってたのに、互いの脚を絡め始めたら口数が減っていった。
スカートのままこたつに入った夏凛の脚はとてもスベスベで肌触りが良く、気付いたら戦いの事とか忘れて夢中で絡め合っていた。
スリスリと触れ合う互いの脚、何故かただそれだけなのに気分が心地よくて、胸もドンドン熱くなってくる。
絡み合いも次第に激しくなっていくが、互いの脚がクロスカウンターのように伸びたところで急に動きが止まった。
(なんだ、この柔らかくて生暖かい感触は)
(え、この硬くて暖かいモノって何?)
そしてすぐにインパクトがやってくる。
「イテテ!」
「あん♡」
衝撃的な感触から我に返った夏凛が、バッと自身のスカートを押さえてこたつから出てしまった。
「今日は……もう寝ますね。また明日……」
顔を真っ赤にした夏凛は、そのまま2階の自室へと向かった。
「俺も寝るか」
1人残された俺は特に見たいテレビも無かったので、早々にベッドに入って目を閉じた。
恋人同士になったのに、何でイチャイチャできないんだろ。てか、普通の恋人って何をやってるんだろ?
そんな事を考えているうちに、俺の意識は徐々に薄れていった。
☆☆☆
何だかとても息苦しい、口の中で何かが蠢いてるような、そんな感じがする。
息苦しさも、次の瞬間には消え失せていて、その代わりに綺麗な声が聞こえてきた。
「兄さん、起きてください」
「……ん、んん。あれ? 夏凛?」
「はい、あなたの妹であり、恋人の夏凛です」
目を開けると、制服姿の夏凛が立っていた。
「おはよう、夏凛」
「おはようございます! それで話があるのですが……」
「今日も部活なんだろ? 一体どこの部活が休みの日にまで活動してるんだよ」
「うーん、どこの部活も来てますよ? ただ、本来の部活動じゃなくて年末に向けて大掃除をしてるんですけどね」
「なるほど、大掃除か……うちの家には無縁の言葉だよな」
「あははは……物が少ないですから」
「あ、でも料理をするようになったから水回りはしとかないといけないな」
「それでしたら私がやっておきますよ?」
「いやいや、夏凛は部活に行って掃除をするんだろ? 疲れてるじゃないか、俺に任せろよ」
「……兄さん」
大したこと言ってないんだが、感極まった夏凛はベッドにいる俺に飛び込んできた。
「兄さんが専業主夫で、私が大手企業で働くやり手のキャリアウーマン、そんな感じですよね♪」
「おいおい、働くのは俺だろ?」
「私、兄さんを養うのは苦ではありませんよ? むしろドンと来いです」
妹よ。兄としての威厳どころか、男としてのプライドが許さないのだよ、それは。
「とにかく、俺が働くと言ったら働くの!」
「じゃあじゃあ、共働きの夫婦という事でどうでしょうか?」
「うぅ、それなら良いかもしれないが……って、もう出る時間だろ?」
「あ、いけない! じゃあ兄さん、行ってきます」
「いってらっしゃ──んんっ!」
──ちゅっ!
最後に触れるだけのキスをして夏凛は学校に行った。今の光景を客観的に見ると、何となく夏凛の言うような未来が訪れそうな気がしてくる。
「いかんいかん、そんな未来は俺が変えてやる!」
せめて共働きに持ち込んでやる。俺は心の中で固く誓ったのだった。
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