第108話 駅前のカフェ

 次の日の放課後、カフェで待ち合わせをした。


 今回は夏凛の助っ人予定も入ってないし、恵さんも用事は無いので全員揃う感じだ。


 家に帰って手早く着替えた俺は、夏凛と一緒に出ようと誘ったが嫌だと断られて憂鬱な気分でカフェに向かった。


 店内を見渡してみるが、2人の姿は見付からなかった。


 1番乗りは俺か、取り敢えずテーブルに座っておくか。


 選んだのは通りに面した席で、ここなら2人をすぐに見付けられる、そう思ったから選んだ。


 ぼけーっと通りを眺めていると、夏凛と恵さんが2人でこっちに向かうのが見えた。


 女子高生と思えない程のスペックを誇る彼女達が談笑しているのを見ると、それだけで心が満たされる。


 2人が店内に入ると、すぐに周囲の男共が注目し始めた。


 歩く先に誰がいるの? 待ち合わせ相手は野郎じゃないだろうな? 俺の彼女より綺麗……。


 そんな声が微かに耳に入ってくる。


「あっ、兄さんあそこにいますよ!」


「ホントだ、黒斗ー。やっほー!」


 2人が俺の対面に座ると、冷たい視線がいくつも向けられて中には殺気に近い視線もあった。

 正直なところ、もう慣れたのであまり気にはしないようにしてる。


 3人揃ったところで注文を取り、ホットコーヒーを3つ頼んだ。


 そして、運ばれてきたコーヒーに砂糖やらミルクやら入れていると、恵さんがズバリといった感じに聞いてきた。


「ところでさ、黒斗と夏凛は何で一緒に来なかったの?」


「あー、なんというか。夏凛が嫌がったんだ」


 俺がそう言うと、夏凛がすぐに否定した。


「違います! 兄さんと行くのは嫌じゃないです。ただ……別々に家を出て、そして待ち合わせをしたかっただけなんです……」


「あーなるほどね。黒斗が少し悲しそうな顔をしていたのはそれもあったのか。良かったね、誤解でさ」


「そりゃあ、まぁ……夏凛に嫌がられて少し傷付いたけど──」


 夏凛は言葉の途中なのに、泣きそうな顔になっていたので慌てて続きを言った。


「でもさ! こういうのも新鮮で良いよな、うん」


「……兄さん」


 ポワワァァァンっと花柄の空気が出来上がったところで、恵さんがコホンと咳払いをした。


「でさ、ファンタジアの件なんだけど。思ったよりお金かかりそうなんだよね」


「タダじゃないの!?」


「入場料タダなんだけど、隣接するホテルの宿泊費は半額ってあるのよ。んでもって距離的に1泊2日は避けられないから必然的にそこに泊まることになるんだけど……途中の交通費、お菓子ジュース代、色々かかるよねぇ~って話をしにきたの」


 そりゃあそうか、何でもかんでもタダにしてたら儲からないもんな。


 しかし困ったなぁ、多分叔父さんも知らずにくれたんだと思うけど、捨てるのも勿体ないよなぁ。


「一昨日それに悩んで歩いていたらさ、保健室の前にある掲示板に【学校公認バイト】ってのを見付けたの」


 恵さんの渡してきたチラシに書いてあるバイト内容を確認すると【白月神社の掃除やその他雑用】と書いてあった。しかも時給900円で来週1週間だけの短期らしい。


 一緒にチラシを見ていた夏凛が「白月神社?」と疑問の声を上げていた。


「名前だけは聞いたことあるな、どこだったか……」


「あ、学校の裏に小さな山がありますよね? その1番上にポツンとあったような気がします!」


「ああ、あそこか。俺達が帰る方向とは反対側にあるからぼんやりとしか知らなかった」


「取り敢えず、話し聞くだけ聞いてみましょうか」


「ああ、そうだな」


 恵さんもこれに同意し、次の日の放課後に保健室前で集合することになった。


 次の日の放課後、依頼主は保健室にいるとのことなので、3人揃って保健室のドアを叩いた。


「は~い」


 中から聞こえてきたのは夏凛も馴染みのある声。ガラガラっと音を立てて中に入ると、待っていたのは白里先生だった。


「あれ? 君達が電話をくれたバイトの話しを聞きたいって子?」


 なんだろう、依頼主が白里先生ってわかった途端に嫌な予感ばかりするんだが。このバイト、本当に大丈夫なのか甚だ疑問を抱くばかりだ。

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