第5話 家族ルール
昨日、暗闇で妹である夏凛の胸を揉みしだき、今日に至ってはマジマジとバスタオル一枚の半裸を見てしまった。
前回は不可抗力なれど、今回は完全に俺のミスだ。洗面所を通って風呂かトイレに行くタイプの我が家は、洗濯機横の洗濯カゴに今日着た服を入れる。
つまりトイレに行くとき、洗濯カゴに下着があるはずだし、何よりシャワーの音で気付けたはずなんだ。
「うおおおおお!俺は何て愚かなんだ!」
ベッドに潜って後悔に
コンコン
バカな、夏凛が来るはずがない!だとすれば幽霊か?縁結びの次は心霊現象なのか!?
「すみません、夏凛です。お話しがあって来ました。お時間よろしいでしょうか?」
あ、はい。そうですよね……多分、先程の件について苦情を申し立てに来られたんですよね。わかりますとも。
ドアを開けると髪をお団子にした夏凛が立っていた。
「もしかして、寝てましたか?」
夏凛、至近距離で見るとこんな顔してたのか。綺麗と可愛さに全振りしていて、とても整った顔立ちだ。……俺の妹とは思えない女性だ。
「あの……何かついてますか?」
「え?あ、いや!なんにもついてないぞ?」
いつの間にか見とれていたようだ。俺は慌てて用事について聞くことにした。
「それで、何か用か?」
「はい、先程……私の裸を見ましたよね?」
「いやいや、バスタオル巻いてたろ!?」
「昨日だってその……触られましたし」
「待て待て!あれは不可抗力だ!」
「それでですね」
ダメだ。この娘、話し聞かないタイプだわ。
「家族ルールを設けたいと考えました」
「家族ルール?」
「はい、まずは洗面所に行く時は必ずノックすること!鍵が開いていてもです!」
「わかった。他には?」
「今は思い付きません。何かある度に増やして行きましょう!」
「了解」
夏凛は「よろしい」と言って出ていった。ああ、今日は何だかんだでよく話した気がする。にしても夏凛って結構主張するタイプだったんだな。
少しだけ家で会話することに暖かさを感じた俺は、いつもより寝心地の良い睡眠をとることができた。
☆☆☆
次の日、いつも通り起きて学校に向かい、席に着く。登下校一緒に行動する友達はいないが、別にボッチと言うわけではない。同じ方向のやつが何故か居ないだけだ。かといって、カースト上位に君臨するほど友達がいるわけでもない。
ボッチにならないために、他愛もない会話をするだけの友達を最低1人は作っている。
それが俺の席の前にいる城ヶ崎さんだ。彼女も俺と同じ"底の者"である事にこだわりを持っているので、自然と話すようになっていた。
ツンツン
城ヶ崎さんをペンで突っついた。これは用がある時の合図だ。いつも通り城ヶ崎さんが後ろを向く。少し茶色がかったセミロングストレートな髪が特徴的なハーフレスメガネの女の子、評するとしたらそんな感じだ。
「何か用?」
「少しだけ聞きたいことがある」
「何?好きな人でもできた?」
「今のところいないな。それよりも、運命の赤い紐って知ってる?」
その言葉に彼女はキョトンとした顔になり、次に吹き出した。
「プッハハハハハハ!似合わね~!しかも糸じゃなくて紐とか……く、くはははは」
「笑うなよ!真剣なんだぞ?」
「ごめんごめん、で?それがどうした?」
俺はこの3日間に起きた出来事を説明した。(揉んだ、見た、は省く)
「消えた紐、しかも動く……う~ん、でもなぁ。回数的にも必然って言える回数じゃないしな~、もうちょい様子見るしかないんじゃない?」
「結局そうなるか。悪化したらまた拓真さんに会いに行ってみるよ」
「力になれなくてすまんね。てかさ、アンタに妹いたとか驚きなんだけど」
「そうか?言った気がするけど」
「アンタ1日2回くらいしか話さないじゃんか。必要最低限しか話さないからわかりようがないし」
城ヶ崎さんはそう言って前へ向き直った。休憩時間もそろそろ終わるからだ。
全ての授業が終わり、いよいよ帰ると言うときに担任の先生から声をかけられた。
「お~い、黒谷。ちょっといいか?」
2年の時の美人な先生と違い、この先生はTHEゴリラを体現したかのような大男だった。故に逆らえない。
「お前に頼み事があるんだ。来年から水泳部を拡張しようと思ってな。使われてない部室を片付けてくれないか?」
はいきた!イエスかハイしか選択肢がないやつぅ。
「先生な、1週間出張なんだ。その間に校長の視察が入るからよぉ~、金曜までにしといてくれや」
「……了解しました」
俺は今のうちから社会での生き方を訓練されている。そう思うことにして踵を返そうとしたとき、ゴリラが思いもよらない事を言ってきた。
「お前1人じゃ厳しいだろうと思ってな。2年の美女を相棒につけてやる。感謝しろよぉ!ハーハハハハハ」
2年の美女か……。軽度だが俺はコミュ力がない。それでも、1人で部室掃除をするよりかは幾分マシだった。
翌日の放課後、俺はなんて話しかけようか悩みながらその人を待った。
そしてその人が現れたとき、俺の口からは自然とその人の名前が出てきた。
「か、夏凛……か?」
「あ、あの!剛田先生から手伝いで呼ばれ……た……」
そう、俺の前に現れたのは、スク水にパーカーを羽織った実の妹だった。
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