後の領主、真の英雄試験が始まる
モニカたちの勝利により俺の嫁たちは全勝となった。
バルトさんが俺たちを褒め称える。
「魔人や魔獣相手にお嫁さんが3連勝とは! まさかここまでやるとは思いませんでした。短期間でずいぶんと強くなったのですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます。これもバルトさんのご指導のおかげです」
バルトさんがいなければレベル限界を超えられず、俺は今でも三流冒険者としてくすぶっていたはずだ。
メイミーやラネットさんと一緒になれることもなかっただろう。
俺を慕ってくれる嫁たちにも感謝しきれない。
この3連勝で俺たちは4戦中3勝を収め勝ち越し英雄に大きく近づいた。
もう俺の試合で負けても英雄になれるはずだ。
「これで英雄になれるんでしょうか?」
「なんの御冗談を」
「えっ?」
完全に勝ち越しなのに英雄になれないの?
なんでなんだ?
「3連勝をしたと言ってもあくまでもお嫁さんを披露するための前座であり、余興の試合。簡単な言葉で言い直すのならば『お遊び』です。ラーゼル君が次の試験で負ければ不合格、英雄として認められることもなくなります」
マジ?
俺の嫁たちが全勝したことで浮かれまくっていた。
確かに嫁たちが強くても俺が英雄と認められるのには全く関係ない。
「いいですか? 次の試験は3対1の戦いです。貴族であれば2人を倒して勝ち越しすれば英雄として認められますが、平民であるラーゼル君は全勝しなければ試験に合格とはなりません」
3人相手に全勝か。
正直キツイ。
気になる相手は神とか悪魔じゃないだろうな?
「ご安心ください。相手は普通の人間です。ただし騎士団の精鋭メンバーとなります」
騎士団だと?
騎士団と言えば幼少のころから剣技を鍛えてきた貴族がなるもの。
もしくは冒険者として実績を積み重ねAランクに到達したものが稀になれる。
付け焼き刃の俺の剣技ではかなうわけもない。
そんな剣技に秀でた者たちと戦わないといけないのか。
しかも3人相手。
勝てるのか?
いや、生き延びられるのかもわからない。
貴族のことだ。
平民などモンスターと同じく容赦なく切り捨ててくることだろう。
「まあ、3人相手で一人はきついと思いますのでこれを渡しておきます」
バルトさんが俺の手に渡してきたものは見覚えのある宝珠だった。
『護身の宝珠』
すべての攻撃は護身の宝珠が吸収し、一定ダメージを受けると宝珠が砕ける。
それで勝敗を決める取り決めとなっていた。
当然ダメージは宝珠がすべて吸収するので怪我はしない。
ラネットさんとの戦いのときに使った魔道具だ。
普通は宝珠が砕けた時点で試験が終わるのだが……。
「今回は宝珠が砕けても試験は続行します」
「それは戦闘不能になるまで戦いが続行するということですか?」
「そこで済めばいいんですがね。平民相手なので確実に
止めを刺す。
すなわち殺すと同意だ。
俺はとんでもない戦いに巻き込まれてしまった。
*
英雄試験が始まる。
余興ではないのでここらからはリングアナウンサーがいない。
ここからは審判官が試合を見届けることになる。
「まずは挑戦者ラーゼルよ、入りたまえ」
コロシアム中央の審判官に呼ばれる。
俺はバルトさんに教えられたように片膝をつき名乗りをあげた。
「我はラーゼル、国の盾となるべく勇者の称号を欲する者」
「よかろう」
続いて対戦相手となる騎士が呼ばれた。
騎士なのか貴族なのかが理由なのかはわからないが跪かずに胸に拳を当て名乗りを上げる。
「騎士スイフト、王国の秩序を守る者なり」
まずはスティックを持った回復役の騎士だ。
かなりガッシリした体格を体格をしているところを見ると多分今回だけの臨時の回復役なのだろう。
腰にはアイテムバッグらしきものも見える。
アイテムバッグからマナエーテルを取り出されたら魔力を回復されて厄介だな。
まずはこいつを一番に片付けたほうがいいな。
次は突撃槍と大盾を持った騎士だ。
「我はユーリア、王国の治安を守る者なり」
兜を被っているので素顔は見えないが、多分声の感じからするに女性なんだろう。
凛々しい声とすっきりとした体形が清々しさを感じさせる。
アリエスさんが騎士になったらこんな感じになると思う。
「我は騎士団長アインハルト、王国と民を守る者なり」
騎士団長かよ!
王国の中で最強の騎士の登場か?
しかも武器がおかしい。
ぶっとい金属製の六角棍を背負っている。
騎士と言えば普通は剣とか大剣なんじゃないのか?
なぜに両手棍?
「うむ」
審判官は試合の開始を宣言する。
「悔いのないように戦え。では始め」
俺は開始と同時に回復役を潰しにかかる。
一直線にスイフトに駆け寄り襲い掛かった。
「させるか!」
そこに立ちはだかったのは大盾持ちのユーリアだ。
ユーリアは俺の突撃を大盾で受け止める。
『グワワーン!』
するとユーリアは自分の大盾の攻撃を俺のカウンタースキルで数倍にされて返された。
重い盾の攻撃を何倍にもされて返されたのだから
全身に大ダメージを負って弾き飛ばされコロシアムの壁に叩きつけられる。
そして、全身の防具が砕かれて……。
うわーーー!
やべーよ!
貴族のお嬢さんの全裸を衆目に晒すことに?
ラネットさんのビキニアーマー崩壊の再現じゃね?
これは試験に合格しても絶対に処刑される案件だ。
俺は土埃が舞う中、すぐにユーリアに駆け寄る。
鎧が砕け散りいろいろと大事なところがポロリしていた。
「これだけの観客の前で負けて恥を晒すことになったんだ。くっ、殺せ!」
「すまん。わざとじゃないんだ」
俺は土埃が落ち着く前にマントをユーリアに掛けなんとか衆目を遮った。
「こ、殺さないのか? それにこれは?」
「女の柔肌は旦那にしか見せる物じゃない」
「くっ!」
俺はすぐにスイフトに向かう。
スイフトは目の前でユーリアが倒されたのを見ていたので怯えまくっていた。
「ば、化け物が! く、来るな!」
スイフトはスティックを振り回し俺を追い払おうとする。
だが運悪く俺にスティックが当たりカウンター。
鎧を破壊されすっぽんぽんとなり地に伏せて尻を突き上げピクピクとしている。
それを見ていた観客が騒ぎ始めた。
「あの英雄、見えないほどの剣撃で騎士団の精鋭を一瞬で血祭りにあげたぞ!」
攻撃じゃなくカウンターです。
「あの騎士が化け物と言っていたのが聞こえたんだが、そんなにすごい攻撃なのか?」
いや、なんにも攻撃してませんよ?
「そりゃそうだろ? 防具を一瞬で粉々にする攻撃だぞ? あの騎士たちも生きてはいまい」
二人とも生きてますし。
それにしても一瞬だったな。
俺というかカウンターの指輪つええ!
これ楽勝で終わるんじゃね?
「よくも大切な我が部下たちを殺したな! 許せぬ平民!」
いや、まだ生きてますって。
目を血走らせてアインハルトがとてつもなく大きなジャンプをし、空から俺を襲い掛かってきた。
だがこんな攻撃など俺のカウンターの前では無意味!
俺は余裕で攻撃を受けた。
カウンターで反撃するはずだったんだが……。
「ぷぎょふげー!」
俺はアインハルトの両手棍を食らう。
カウンターで回避すると思いきやそのまま食らいひしゃげる俺の顔。
俺はその勢いのまま、コロシアムをゴロゴロと吹っ飛び壁に叩きつけられた。
なんでカウンターが発動しない?
飛びそうになる意識の中、俺はアインハルトが俺に止めを刺しに来るのを視界の端に捉えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます