後の領主、大量発生の駆除を始める。

 アンデッドフライはヤバい。

 毒液を吐くがただの毒じゃない。

 なんでも腐らす腐食液だ。

 皮鎧はもちろんのこと金属鎧でも穴をあけてしまうほどの強烈な腐食作用を持つ。

 おまけにケーブフライが持っていた神経毒はそのまま残っている。

 食らったら無事にはいられないだろう。

 

 アンデッドフライとはケーブフライの死にぞこないがアンデッド化したものだ。

 アンデッドは肉体的には既に死んでいる状態なので身体を両断したぐらいでは動きを止めない。

 頭を叩き潰すか灰しか残らないぐらいまで焼き尽くさなければ動き続ける。

 身体を上下に両断しても残った上身体で這いつくばって襲ってきて、足を噛まれ危うくアンデッドになりかけたなんて話も聞く。


 このダンジョンで大量発生してるアンデッドフライには心当たりがあった。

 多分俺とメイミーを襲ったケーブフライの死にかけがアンデッド化したものだと思う。

 でも、あのケーブフライたちは剣や弓で倒されたのではなくて、ルナータの魔法に焼き尽くされた。

 ルナータの魔法の火力なら一網打尽に燃え尽きているはずなんだがな。

 灰になっていればアンデッド化のしようがない。

 どうやってアンデッド化したのかは謎だ。

 それにしても数が半端ないな。


「これだけの数のアンデッドフライがいると厄介ですね」

「たしかにね。でもここで引き下がる訳にもいかないわ」


 ラネットさんは剣を構えアンデッドフライの群れに飛び込む。

 俺もラネットさんに続いて飛び込んだ。

 食いつかれないように敵との距離に気をつければなんとかいけるはず……。

 あれ?

 めちゃくちゃ弱くね?

 ラネットさんも俺もサクサク斬り倒してあっという間に殲滅。

 毒液を吐く暇も与えず、完全に拍子抜けだ。


「弱いですね」

「手ごたえ無いですね」


 ケーブフライの方が強かったんじゃないかってぐらい弱かった。


「これはあれかも。アンデッドフライが弱いんじゃなくて私たちが強くなり過ぎたのかもしれないですね」


 マンイーターのスケルトンとの死闘で俺たちはかなり成長したんだろう。

 サクサクと手ごたえが感じられずに全てのアンデッドフライを倒してしまった。


「他はもういないかな?」


 俺は範囲哨戒のスキルを使い、辺りの索敵をしてみる。

 アンデッドフライはどこにも見当たらなかった。

 どうやら全滅させたようだ。


「アンデッドフライは全滅ですね」

「歯ごたえがないわね」

「こんな弱い敵で未帰還になるんですかね?」

「私たちにとったら雑魚でも、Dランクの冒険者にしたら強敵だと思うわ」


 ラネットさんの意見にはおおむね同意。

 でも気になる点があった。

 未帰還のパーティーの中にCランクの3人組パーティーもいたのだ。

 さすがにCランクパーティーならやられることはないと思うんだけどな。

 それを話すとラネットさんも首をひねる。

 

「何か引っかかるわね」

「俺も他に何か原因があるんじゃないかと思っています」


 サテラ周辺の初期ダンジョンでアンデッドの駆除をしまくる俺たち。

 次々にダンジョンを攻略し最後のダンジョンにたどり着いた。

 ウエットのダンジョン。

 俺とアリエスさんが出会ったダンジョンだ。

 そこで未帰還の原因となったモンスターが現れた。

 3匹のアンデッドだ。

 その姿に見覚えがあった。


『やっと見つけたぞ、ラ、ラーゼル!』


 えっ?

 嘘だろ?

 目の前にはアンデッド化したケイロスたちがいた。

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