後の領主、ダンジョンに潜りまくる
翌朝。
ダンジョンに潜ることになった。
ベランさんとラネットさんは玄関先で既に待っている。
その横には大量の物資。
食糧や薬品、ランプオイルなどの消耗品が積んであった。
その量、馬車1台分には届かないがかなりの量だ。
どこか遠方まで遠征に行くんじゃないかってぐらいの結構な物資である。
さすがにこんなにアイテムボックスの中に入れられないし、入れたら敵を倒して手に入れた素材をしまう場所がない。
俺が当面必要な分だけで積み込みを止めるとベランさんが渋い顔をした。
「きみはなにを成す為にダンジョンに向かうつもりなんだ?」
「レベル上げです」
「じゃあ、レベル上げの事だけを考えて素材の事なんて考えるんじゃない」
安全を考えるならば物資はいくらあっても構わない。
ダンジョンの中でトラブルに巻き込まれて出るのに時間かかるかもしれない。
それに素材なら食糧を食べて出来た空きにしまえばいいとのことだ。
俺は物資をアイテムボックスが満タンになるまで詰め込むことにした。
すっきりとする玄関。
レベルが上がったせいか前よりもずっと多くのアイテムを収納できるようになってるな。
「よし、行くぞ!」
早速ベランさんの案内でダンジョンに潜る。
1時間ほどで最初のダンジョンの入り口に着いた。
「ここだな」
こんもりした盛り土の小山の斜面に石で組まれた人の背丈ほどの質素な入り口だ。
誰も入ってないらしく敷き石が苔むしていた。
「ダンジョンの中のモンスターは森の中より強いから気を抜くんじゃないぞ」
ベランさんが先頭になって入る。
すぐに敵と接敵した。
このダンジョンの中は敵だらけだ。
でも……。
「弱いな」
一撃で敵を倒したモニカが肩を落とす。
「この前のダンジョンの敵よりずっと弱いぞ」
敵の数は多いけど、最初に潜ったアルティヌスのダンジョンよりもかなり弱い。
こりゃ稼げそうにないな。
階層が浅そうだし仕方ない。
でも、まだダンジョンは他にもある。
「よし、サクッと倒して次に向かうぞ!」
「おー!」
俺たちは駆け足でダンジョン中の敵を片っ端から全滅させながら進む。
それはもう、10秒に一集団を倒すぐらいのペースだ。
あまりのペースにベランさんがあきれかえっている。
「きみらはいつもこんなペースで狩りをしてるのか?」
「まだアルティヌスのダンジョンしか攻略したことが無いんですが、あそこでもこんな感じでした」
「アルティヌスのダンジョンて、あの高難易度ダンジョンをか?」
完全にあきれられた。
*
このダンジョンは予想通り浅かった。
8層でボスが現れる。
黒い霧を身体から滲み出させる狼みたいなボスだったがラネットさんが一刀両断にして一瞬で片付いた。
現れる宝箱。
道中でいつの間にか倒していた階層ボスからドロップした鍵で宝箱を開ける。
報酬はボス前部屋もボスもミスリルインゴットで完全なハズレだ。
「ハズレか」
それを聞いたベランさん。
完全に気が動転している。
「ミスリルインゴットは大当たりだろ? 金貨20枚になる当たりアイテムだぞ? それをたったの1時間程で二つも見つけるなんて幸運すぎるぞ!」
道中の魔石の方がかなり数があったので価値があるんじゃないかと思う。
「これはハズレですよ」
「そんなわけがない! 当たりに決まってるだろ!」
バルトさんにはハズレと言われたんだけどなー。
モンスター素材は後でみんなで分けることにした。
*
ポータルを使いダンジョンの外に出てきた俺たち。
ボスを倒したので帰りはポータルが使えるのだ。
らくちんらくちん。
報酬が山分けと聞いてベランさんにやる気が出てきた。
「さてと、次に向かうぞ!」
次はここから2時間ほど歩いた先。
歩き過ぎたのか既にメイミーが疲れ気味の顔をしている。
足取りも重いのを無理やり歩いてる感じ。
疲れたと言わずに健気なのはいいけど辛そうだな。
「大丈夫か? 背負ってやろうか?」
「大丈夫です。いたっ!」
石につまずいて転んだメイミー。
俺との話に気を取られていたせいだ。
転んだのは俺のせいでもある。
俺はメイミーを起こしておんぶする。
「ご、ごしゅじんさま? こんなことしてくださらなくても」
「気にすんな。俺の嫁だろ。辛いときは夫婦で助け合わないとな」
「はい……嫁です(ぽっ」
そして俺に聞こえない小さな声で……。
「こんな優しい人と出会えてよかった……」
メイミーは幸せそうな顔をすると俺の肩に頬を寄せて身を任せた。
それからすぐにダンジョンに着いた。
*
ダンジョンの入り口はさっきのダンジョンと同じぐらい。
アルティヌスのダンジョンと比べると明らかに小さい。
ここの稼ぎも期待出来そうにない。
さっさと倒して次に進むか。
「よし、潜るぞ!」
「おー!」
潜ったんだけど……。
「よわっ! よわすぎなんじゃないか?」
あまりの弱さにモニカが泣きそうだ。
「確かに弱いわね」
敵が弱すぎてモニカはご機嫌ななめ、ラネットさんも困り顔。
入り口はさっきのダンジョンと同じぐらいだったけど、敵は更に弱かった。
おまけに数も少ない。
5層でボスだ。
地面から生えた魔法を詠唱しようとしているサボテンミミズみたいなのがうねっていたけど、モニカが引っこ抜いて終わりだ。
「2時間掛けて来た意味がないな」
報酬もまたまたミスリルインゴットだ。
ベランさんはホクホク顔だけど、俺はガックリだ。
*
次のダンジョンまで一時間ほど掛かる。
「あれはなんだ?」
歩き始めて15分。
その道中にモニカがダンジョンを見つけた。
入り口が全く苔むしていないダンジョンで、たぶん出来てすぐの真新しいダンジョンだ。
ベランさんは嬉しそう。
「新ダンジョンか。報告したら報酬を貰えるな」
「ほほー」
「おまけに名前を付けることも出来るぞ」
「おおー! じゃあ、ここは私が見つけたからモニカのダンジョンだな」
早速ダンジョンに潜る。
敵は……居ない?
「なんで敵がいないんだ?」
「さー?」
「とりあえず先がありそうだから進むか」
さらに進む。
5分ぐらい進んだだろうか?
洞窟の行き止まりに宝箱があった。
ラネットさんが不思議がる。
「あれ? もう宝箱なの?」
「敵が一匹も居なかったな」
「出来たてのダンジョンでモンスターがまだ召喚されてなかったのかな?」
「道中もうねっているだけで枝分かれしてなかったしな」
「でもボスがいないのがおかしいな」
「ラーゼルさんもおかしいと思いましたか」
俺もラネットさんも首をひねる。
「ひゃう!」
メイミーはなにかに怯えていた。
「どうした?」
「なにかに足を舐められました」
「でも、この辺りにはなにもいないぞ?」
「なんか気持ち悪いです。早くここを出ましょう」
「お、おう」
モニカが宝箱を開けようとするけど開かない。
敵が居なかったから鍵を落とす敵がいなかったしな。
俺がリビングキーで開けようと近づくと……。
背後が光る!
そして光の中から敵が現れた。
「敵召喚だ!」
「なんだこりゃ!」
現れたのはスケルトン。
アルティヌスのダンジョンのボスより強い。
ベランさんが叫ぶ!
「これはダンジョンじゃない! マンイーターだ!」
「マンイーター?」
「ダンジョンよりもたちの悪いダンジョンに擬態して冒険者を食らう巨大なモンスターだ! そのモンスターの腹の中に俺たちは居る。しかも敵が強い!」
「にげるぞ!」
「どこに?」
「えっ?」
俺たちの来た道が無くなっていた。
四方を壁に囲まれた完全な密室。
どうなってるんだ?
まあ、そんなことはどうでもいい。
スケルトンをどうにかしないとヤバイ!
スケルトンは俺とラネットさんの二人で互角ぐらいの強さだ。
俺たちのパーティーの最強戦力のモニカでやっと一人で倒せるぐらいぐらいの強さ。
そんなスケルトンが一匹づつ延々とかなり早いペースで召喚される。
「俺とラネットさんで一体、モニカは一人でスケルトンを倒してくれ」
「はい」
「まかせろ!」
「メイミーとビアンカは補助を。ベランさんは二人の護衛を!」
「はい!」
「了解!」
これはキツイ。
急いで敵を倒さないといけない。
倒し切れずに敵が3匹以上同時に出てきたら補助役のメイミーとビアンカが襲われてお終いだ。
気が抜けない戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます