後の領主、部屋に乱入される
ラネットさんと抱き合っていると……。
『バン!』
ドアが激しく開け放たれた!
「なにまたエッチなことしてるんだよ!」
モニカだった。
エッチなことなんてしてないぞ。
抱き合っているけど服を着て抱きしめあってるだけだし。
でもモニカはご立腹で状況がよく見えてない。
エッチしてると勘違いして飛び込んできたのか、黒目がぐるぐる回ってて怖い。
「いつまで待たせるんだよ! 廊下で待ってる者のことも考えろよ!」
怒りで身体を震わせるモニカだった。
「エッチなことなんてしてないし! ただ、肩を抱き合ってるだけだし」
「黙れ! さっきの叫び声はなんだったんだよ? 言い訳出来るならしてみろ!」
「あれはレベルの上限を上げただけだ。その時のレベルアップ痛で出た声だ」
キョトンとするモニカ。
そして俺の目の前にツカツカとやってくる。
「上限を上げただと? お前はそんなことが出来るのか」
「出来る」
「じゃあ、私のレベルも上げろ」
「もちろんそのつもりだ」
俺はラネットさんに頭を下げて退室してもらった。
モニカをベッドに横にする。
なぜかビアンカも横になっていた。
モニカとビアンカは仲がいいみたいなんだけど、さすがに個人情報であるステータスをモニカに聞かせるわけにもいかないか。
「ビアンカは次なので廊下で待っててくれないか?」
「ビアンカは私の親友だから気にしなくていいぞ」
部屋を出ようとするビアンカの手をモニカがひしっと握る。
相変わらず仲がいい。
まあ、そういう事ならいいか。
「レベル上限上げの前にステータスの確認をするからな。偽装とかしてるなら解除してくれ」
「ほいさ」
俺はモニカのステータスを紙に書きとめた。
名前:モニカ
ジョブ:ドラゴン
レベル:67/99
HP :1943/1943
MP :235/235
攻撃力(ATK):869
耐久力(DEF):737
魔法力(INT):232
幸運度(LUK):39
スキル:【格闘】67 【ブレス】9 【飛行】23 【人化】33 【偽装】3
なんだこりゃ……。
かわいい見た目に反して桁外れな強さだった。
「モーちゃんつよーい!」
「ふふふ。どうだビアンカ。すごいだろ?」
「モーちゃんすごーい!」
おれもびっくりして椅子からこけそうになる強さだった。
「モニカってこんなに強かったのか」
「多分強くなったのはこの前のダンジョンで戦ってからだな。あれから身体が凄く軽いんだ」
ダンジョンの敵をせん滅したときの話だな。
あれだけ戦えばレベルが上がりまくるな。
「それにしてもレベルの上がり方が半端ないな」
モニカは産まれてすぐなので元のレベルは1桁とかそんなもんだったはずだ。
それが今は60超え。
レベルの上がり方が半端ない。
「ドラゴンは人間とはレベルの上がるペースが違うって聞いたぞ」
あー、それでか。
多分ドラゴンはレベル上限が高い分、レベルアップの必要経験値が少ないんだろう。
上限が最初から99になってるしな。
この99からさらに上限を上げられるのか気になる。
「さあ、ラーゼル。レベル上限をガツン!と上げてくれ!」
「ごめん、今は無理だ」
「無理? さっきと話が違うじゃないか?」
「すまん。でも、今のお前はレベル上限に達してないから上げる必要もない」
「でも上げたいんだ! 強くなりたいんだ!」
「上げるにもカンストしてないから身体の中に眠る潜在経験値がないから上げられないんだよ」
「せんざい?」
「簡単に言えばレベル上限を上げる素だ」
「そうなのか……もっと強くなれると思ったのにガッカリだよ」
いやいやいや、なにガッカリしてるんだよ?
もう十分すぎるぐらい強いし。
「HP4桁とか聞いたことないし、たぶん国一番の勇者と殴り合ってもいい勝負どころか圧倒的大差で勝てる強さだと思うぞ」
「人間如きに勝てても仕方ないだろ」
誰に勝ちたいのか怖くて聞けない。
次はビアンカの測定だ。
「モーちゃん横に居てね」
「ほいさ」
名前:ビアンカ
ジョブ:魔法使い
レベル:41/41
HP :212/212
MP :294/294
攻撃力(ATK):43
耐久力(DEF):39
魔法力(INT):370
幸運度(LUK):21
スキル:なし
ステータスを見せる。
するとモニカがポツリと言った。
「よわ!」
「うわーん! モーちゃん、思ってても本音言わないでよー!」
「親友だから隠し事はしないぞ。ビアンカが弱いからこそ私たちは一つになってたんじゃないか」
「そうだったね」
なんというか……モニカの規格外のステータスを見た後だとつつましい。
レベル上限がかなり高い分、魔法力以外のステータスがかなり貧相。
ステータスを見比べてないから何とも言えないが、全体的にみると僧侶のメイミーよりも劣るんじゃないだろうか?
冒険者として一番重要視されるレベル上限は俺がいたらあってないようなものなので、レベル上限の高さはアドバンテージにはならない。
たぶん一般的な冒険者としてはレベル上限が高いし強いんだろう。
でも俺やラネットさんやメイミーみたいな『レベル上限があっという間に訪れたポンコツだけど実は能力が高く一癖ある者』たちと比べると貧相としか言えないステータス。
なんとかしてステータスを上げるリングかポーションが欲しい。
ひと段落が付いたらバルトさんと相談してみよう。
「ビアンカはレベル上限を上げられるかもしれないな。やってみていいか?」
「はい」
「ただ、レベル上限を解放するとかなりの痛みが襲ってくるので覚悟してくれな」
「どのぐらい痛いんですか?」
「うーん……剣で刺されたぐらい?」
本当はもうちょっと痛いかもしれない。
あんまり怖がらせても怯えさせるだけなので軽めに説明しておいた。
でもビアンカはかなりビビってしまい顔を青くしている。
「どうしよ? そんなに痛いの?」
「大丈夫だビアンカ。私が隣にいるからな」
「うん。頑張ってみる。ラーゼルさんお願いします」
俺は早速レベル上限上げを始める。
いつでも止められるように1レベルずつ上げていこう。
ベッドに横になったビアンカのレベル上限を解放する。
『ドン!』
ビアンカの身体がベットに軽く沈み込む。
「きゃー!」
「大丈夫かビアンカ?」
「痛かったけど、だ、大丈夫」
どうやら気絶もしなかったみたい。
これならいけるな。
一応続けていいか確認する。
「まだいけそう?」
「はい」
「じゃあ、一気に上げるな」
「お願いします」
『ドン!』
ビアンカの身体がベットに再び沈み込む。
今度はかなり大きく沈み込んだ。
「ぎゃあーー!」
今度は気絶をした。
鑑定してみる。
名前:ビアンカ
ジョブ:魔法使い
レベル:41/44
HP :212/212
MP :294/294
攻撃力(ATK):43
耐久力(DEF):39
魔法力(INT):370
幸運度(LUK):21
スキル:なし
レベル上限は44どまりだった。
潜在経験値は殆ど貯まってなかった。
たぶんレベル上限が高かったので、貯まったのはレベル41に到達してからの僅かな時間だけだったんだろうな。
これは思ったよりも育てがいがありそうだ。
実はこの後、もう一人の仲間が増えることを俺は知らなかった。
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