後の領主、次の女の子のステータスを調べる

 メイミーと入れ替わりに入ってきたのはラネットさんだ。

 いつもの凛々しい態度とは違って顔を真っ赤にしてモジモジしている。


「ラーゼルさん、聞いてください」

「なんでしょうか」

「さっきメイミーとものすごいことをしてましたよね?」

「どうしてそれを?」

「廊下まで丸聞こえでした」


 ぐはっ!

 丸聞こえだったと?

 あんなことやこんなことをしたことがみんなに聞かれていただと?

 さすがに俺も恥ずかしくなり顔を真っ赤にする。


「私はあなたとそういうことをするのは嫌いじゃないんだけど、みんなに聞かれてる前だとちょっとね……」


 俺も同じく恥ずかしいです。


「この前、あなたと仲良くなった時も聞かれてたらしいし」

「マジですか?」


 確かラネットさんと仲良くなって、朝になったらみんなも一緒に寝てた時のことだ。

 あれも廊下に丸聞こえだったんですね。

 なんでみんなが朝になったらベッドの中に潜り込んできてたのか理由がわかった。


「なので、今日はそういうのは抜きにして欲しい」

「わかりました」


 というか俺は露出癖は無いのでみんなの聞いている前でなんて出来るわけがない。

 まだ童貞を卒業したばかりのひょっこで恋愛経験値は0《ゼロ》に等しい。

 露出プレイは俺にとってハードルが高すぎるシチュエーションだ。


「では、ベッドに横になって下さい」

「ベッドに横になれですって? あなたは言ってるそばからやる気なんですか! 私は人前であなたと仲良くする姿を晒すほど慣れてないんです!」


 顔を真っ赤にして涙目になるラネットさん。

 唇がわなわなと震え閉じられず、握りしめて下げた拳もプルプル震えて恥ずかしがっている。

 なんか、ものすごく勘違いされてるぞ!

 俺は必死に弁解する。


「ご、誤解ですから!」

「ステータスを測定するだけならベッドに横になる必要なんてないだろ?」


 もっともな意見だった。

 なんで俺、メイミーをベッドに寝かせたんだろう?

 ラネットさんは恥ずかしさのあまり今にも泣きだしそうなのでとりあえず弁解だ。


「鑑定だけなら横にならなくても済みますが、上限解放が出来るか挑戦してみますので」

「また上限解放ができるんですか? まだ上がるんですか?」


 俺に顔をグイと寄せるラネットさん。

 食いつきが半端ねー。

 ラネットさんはレベル上限上げに関してはいつもひたむきだな。

 こんなところにラネットさんの真面目さがうかがえる。


「ラネットさんの身体の中に眠る経験値を呼び覚まし、レベル上限を上げるのです」

「わかりました。レベル上限アップの為ならどんな辱めでも受けましょう!」


 そういって服を脱ぎ始めるラネットさん。

 一瞬で下着姿に。

 その下着にも手を掛けて今にも産まれたままの姿にレベルアップしようとしている。

 なにやってるの?

 この人!

 俺は慌てて止めた。


「ぬ、脱がなくていいですから! 横になるだけでいいんです」

「えっ?」


 余計なことをしたのであまりの恥ずかしさに限界を超えたのか、ラネットさんは石化したかのように固まった。

 そして俺の視線を誤魔化すかのように動きを見せないようにのろのろと服を着始めた。

 あえて突っ込みはしない俺。

 恥ずかしがる女の子に恥辱プレイをするほどの鬼畜な男ではない。

 服を着直したラネットさんは爆発寸戦に顔を真っ赤にしていた。

 おれはそれをスルーして上限解放作業を進める。


「じゃあ、まず鑑定から始めますよ」

「鑑定板が無くても鑑定できるんですね」

「鑑定の指輪が有りますからね」


 ラネットさんを鑑定して、ステータスを紙に書き写す。

 ラネットさんに渡すと嬉しいのか目に涙を浮かべる。


「こんなに私のレベルが上がってたんですね。ありがとう、ラーゼルさん」


 ラネットさんの鑑定結果はこんな感じだった。


 名前:ラネット

 ジョブ:剣士

 レベル:35/35

 HP :432/432

 MP :185/185

 攻撃力(ATK):464

 耐久力(DEF):98

 魔法力(INT):54

 幸運度(LUK):51

 スキル:【片手剣】LV39


 元はレベル26だったんだけど、やはりラネットさんもカンストか。

 それにしても攻撃力がやたら高いな。

 Aランク冒険者でもかなり上位に相当するレベルだ。

 たぶんレベル26でカンストしたときに、それでも騎士への夢を忘れずに必死に戦い続けた結果だろう。

 片手剣スキルがかなり上がっていたからだ。

 それが今になって効いている。


「喜ぶのはまだですよ。これからレベル上限を上げます」

「そうだったな。頼む!」

「前にもレベル上限解放をやったので知っていると思いますが、かなりの痛みが襲ってきます」

「覚悟している。一思ひとおもいにやってくれ!」


 ベッドの上で手をぎゅっと握りしめたラネットさん。

 ラネットさんとの初めての夜を思い出す。

 ここは1レベルごとに上げるのではなく一気に上げてしまった方がいいな。

 俺はレベル上限を上げる。


「行きます!」


『ズン!』


 ラネットさんの身体がベッドに沈み込む。

 ものすごい力がラネットさんに圧し掛かっている!

 そして、ベットの上で大きく弓なりになって跳ねた!


「ぐぎゃああああああ!」


 ラネットさんは絶叫すると気絶した。


 *


 すぐにラネットさんは目を覚ました。

 視点が定まらないのか、薄目で俺を見つめる。


「大丈夫ですか」

「だいじょうぶです」


 ラネットさんは俺の手を握り、俺を引き寄せる。

 そしてキスをしてきた。


「ありがとう。生まれ変わった気分です」


 早速鑑定をしてみる。


 名前:ラネット

 ジョブ:剣士

 レベル:35/58

 HP :432/432

 MP :185/185

 攻撃力(ATK):464

 耐久力(DEF):98

 魔法力(INT):54

 幸運度(LUK):51

 スキル:【片手剣】LV39


 58?

 どんだけ潜在を貯めてたんだよ!

 ラネットさんがレベル26でカンストしてから藻掻もがき苦しんだ努力の結果がここに現れた。


「レベル上限が58に上がりました」

「ありがとう! 私はラーゼルさんと一緒になれて幸せです」


 俺たちはベットの上で抱き合い喜びを分かち合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る