後の領主、ピンチを利用する

「はあ、はあ、はあ、いくら倒してもキリがないぞ」

「さっきからずっと倒しているのに!」


 ベランさんが3匹目のスケルトンの攻撃を受けている。

 やばい!

 早く倒さねば!


「ここは私一人でどうにかしますから、ラーゼルさんはベランさんの加勢に行って下さい!」

「わかりました、ラネットさん!」


 俺はベランさんに加勢。


「助かったぜ! 俺もこいつらみたいに死んでスケルトンになるとこだったぜ」

「冗談は止めて下さいよ」

「ふふふ。すまんすまん」


 冗談を言うぐらいの余裕はあるみたいだ。


「でも、このまま召喚が続くと俺たちも冗談じゃなくスケルトンになってしまうぞ」

「マジですか?」

「このスケルトンたちはマンイーターに食われた冒険者のなれの果てだ」


 元冒険者だったの?

 たしかに、それっぽい装備を付けてるスケルトンもいるな。

 こんなのにはなりたくねー。


「マンイーターのMPが尽きて召喚が止まるか、俺たちが力尽きて食われるか、どちらに均衡が傾くかガチの勝負だな」


 でも、均衡はあっさりと崩れた。

 俺たちのレベルが上がって強くなりスケルトンを圧倒し始めた。

 今は一人で一体を余裕で相手に出来る。

 モニカもかなり余裕が見えてくる。


「ラーゼル。壁をぶちやぶって、ここからでよう」


 脱出の為に壁に拳を振るおうとするモニカ。

 俺は慌てて止める。


「いや、待て!」

「なんでだ?」

「せっかく敵が沸き続けるんだ。このままレベル上げをしようぜ」

「お、ナイスアイデア!」


 俺たちはスケルトン討伐を続ける。

 3時間ほどすると、スケルトンの召喚が遅くなりそして止まった。


「MPが尽きたのかな?」

「らしいな。おまえら、よくここまで頑張ったな」


 ベランさんが俺たちの健闘を讃えてくれる。


「ああ、みんながんばった」


 特にモニカが頑張ってくれた。

 スケルトンを一人で相手にしていたモニカが居なかったらきっと俺たちは生きていられなかっただろう。

 俺がモニカの頭をぐしゃぐしゃと乱暴になでると喜んでいた。


「じゃあ日没も近いことだし帰るか」


 帰りの支度を始める。

 あとはマンイーターを片付けるだけだ。

 俺がマンイーターにとどめを刺そうとするとモニカがポツリといった。


「MPが尽きただけなら、MPの回復薬を飲ませてみればいいんじゃないか?」

「飲ませるって?」

「ここはマンイーターの腹の中なんだろ?」

「おう」

「飲ませれば元気になるはずだ」

「でも飲ませるって、どこに口があるんだ」

「こうやって飲ませるんだよ」


 モニカは俺からマナエーテルの束を奪うと床にぶちまける。

 マンイーターがマナエーテルを吸収した。

 すると、ぶるぶると床や壁が震えて……。


『ズゴゴゴゴゴゴ!』


 うひょ!

 スケルトンの大群が現れた!

 その数20匹近く!

 MPをたっぷり補給したマンイーターは元気いっぱいだ。

 心なしか、ガッシリとした体つきになってスケルトンがパワーアップしている気がする。


「おい、モニカ! エーテルぶちまけ過ぎだろ!」

「すまんすまん!」


 これはマズい!

 俺たちが強くなったといえ、20匹のスケルトンは多すぎる。

 こんな狭い部屋にスケルトンが20匹も沸いたら身動きが取れない!

 しかも、倒した瞬間に新たなスケルトンが召喚されてるし!

 そして倒し切れなかったスケルトンがメイミーたちに群がり……。

 ヤバい!

 メイミーが死んでしまう!

 俺が助けに入ろうとするが間に合わない!


「ていっ!」


 メイミーがスケルトンを杖でバッチバチに殴って戦っていた。

 しかも完全に優勢!


「ごしゅじんさまの足手まといにはなりません!」


 メイミーもレベルが上がりまくってたみたいだ。

 ビアンカも杖でスケルトンをぶん殴りまくっていた。

 それを見てベランさんが驚く。


「なんでお嬢ちゃん、そんなに強くなってるんだ?」

「昨日レベル上限をごしゅじんさまに上げてもらったんです」

「レベル上限を上げただと?」


 あっ……。

 ベランさん部外者だった。

 メイミーがポロっとベランさんに秘密をばらしてしまった。

 でもまあ、今はそんなことを気にしてる暇はない。

 沸きまくるスケルトンを倒しまくらないと!

 モニカがマナエーテルを必要以上にぶちまけたお陰で、俺たちは翌朝までスケルトンを倒し続ける羽目になったのだ。

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