後の領主、師匠のお嫁さんに襲われる
アリエスさんは上半身下着姿となる。
「ラーゼルさんも脱がないとダメですよ」
そういうと、俺の膝から降りてズボンを脱がそうとする。
な、なに?
この痴女モード。
どうしちゃったんだ?
アリエスさんのことを知ってからあまり長くないけど、こんな痴女じゃなかったはず。
剣一筋の真面目な女の人だったはず。
でも目の前にいるアリエスさんは完全に痴女モードで俺のベルトを緩めようとする。
「女の私だけが脱いでいるのに、男のあなたが脱がないのは失礼ですよ」
確かにそう。
女の人だけ脱がしておくのは失礼。
俺も脱ぐべき。
アリエスさんの筋肉質でありながら柔らかそうな、まるで芸術品の彫像のような身体。
相手が俺のことを好いているんだから、その芸術品のような身体に身を
で、でも……。
アリエスさんは人妻だぞ。
おまけに旦那さんのバルトさんは俺を窮地から何度も救ってくれた恩人でもあるし。
さすがに不倫となるので手を出すわけにはいかない。
寝取るなんて恩知らずなことは俺には出来ない。
「ちょっと待ってください。俺にはそんなこと出来ません!」
「なんでなの? 私がしてあげるって言ってるのよ?」
「アリエスさんに手を出すわけにはいけません!」
「私に魅力がないの?」
「アリエスさんの結婚前なら喜んでしました。でも今は師匠であるバルトさんの奥さんなんですから手を出すわけにはいけません!」
「既に男に抱かれた使い古しの身体には興味がないの?」
「そういう事じゃないですから!」
なにを言ってもダメそうなので、俺は部屋から逃げようとする。
でも、扉があかない!
全力でこじ開けようとしてもビクともしない。
すべての部屋の扉は魔法のような力で閉じられていた。
マジかよ!
俺、アリエスさんに食われちゃうの?
アリエスさんは服をすべて脱ぎ捨てると舌なめずりをし俺に襲い掛かろうとする。
「鍵も掛けずにこんなことをするわけないでしょ。さあ、諦めるの!」
「嫌です!」
「そっちが嫌でも私はするからね」
無茶苦茶な力で引き倒されて、再び馬乗り。
もう逃げられない。
バルトさんごめん。
俺はあなたのお嫁さんと不倫をしてしまいます。
いや、まだだ!
ここで諦めるな! 俺!
バルトさんが帰ってくるまで耐え続けるんだ!
精神統一して賢者モードに移行すれば不倫なんてしたくても出来ないはず。
俺は精神統一するが……。
産まれたままの姿のアリエスさんが目の前にいてチラチラと視界に入るんじゃ賢者モードになるのは絶対に無理!
俺の意志と反してギンギンに高まっている!
「止めて下さい!」
「ここまで来て引くわけにはいかないわ!」
気がつくとズボンもパンツもすべて脱がされていた。
「いくわよ!」
「バルトさんを裏切りたくない……」
『バーン!』
その時、扉が勢いよく開け放たれた!
そこに立っていたのはバルトさん!
こめかみがピクピクと引きつっている。
「こ、これはどういう事なんですか?」
「いや、これは……」
「それに大切なアリエスを……師匠の嫁と知っておきながら劣情に負けて襲ったというんですか!」
「ち、違いますから! 感謝してもしきれない師匠のお嫁さんに手を出すわけがありませんから!」
「そうですか」
『バチン!』
その時、大きな指を鳴らす音が俺の頭の中に響いた。
気が付くと裸のアリエスさんは居なくなり、俺は服を着てソファーに座っていた。
どういうこと?
俺がキョトンとしていると声が掛かった。
「試験は合格ですね」
バルトさんだった。
いつの間に部屋の中に?
「『試験』? 『合格』?」
「ラーゼル君は無類の女好きとお見受けしましたので、少しばかり幻覚をお見せして試験をさせてもらいました」
「試験?」
「私の最愛なるアリエスさんに手を出さないかどうかの試験です。師匠である私のお嫁さんに手を出すようであれば生かしておけないので……。師匠の奥さんを寝取る弟子とかシャレになりませんからね」
「もし、あのままアリエスさんに押し倒されて最後までいっていたら?」
「もちろん、不倫できないように引きちぎっていましたよ」
バルトさんの目は冗談じゃなくマジっぽい。
怖くてなにを引きちぎるのか聞けなかった。
「絶対にアリエスに手を出さないこと。これが師匠と弟子の最大の約束です」
「はい!」
そう凄まれた俺。
生きた心地のしない厳しい目。
これは間違いなく本気だ。
絶対にヤバい目だ。
俺は絶対にアリエスさんに手を出さないと心に誓った。
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