後の英雄、更なる危機に襲われる

 二人に問い詰められている俺を見てビアンカが助け舟を出してくれた。


「ラーゼルさんはモーちゃんと寝たりしていません。寝たのは私ですから」


 さらに厳しくなる二人の目。

 それ全然助け舟になってねえ!

 なんで火に油を注ぐどころか、爆薬をぶち込んでるんだよ!

 

「はあ? モニカだけじゃなくビアンカとまで寝たんですか?」

「ごしゅじんさま……。そんなに欲求不満が溜まっているのなら私がいくらでもお相手してあげるのに……」

「結婚早々浮気をするなんて女の敵です!」

「ちょい待て! 誤解だって! モニカとはなんにもしてないから!」

「ラーゼル、嘘はいけないぞ。クレソンの宿でアツい夜を朝まで過ごしたじゃないか」

「寝たのは私だけですって、信じて下さい」

「二人とやってるじゃないの!」


 俺はラネットさんにボコボコにされました。

 真剣の腹で殴るの止めて下さい。

 マジ痛いし、危ないです。


 *


 殴りつかれたラネットさんはあきれ顔でみんなにいう。


「すでにしちゃったことだし仕方ないわね……。ビアンカもモニカも第三第四夫人で許すわ」


 ラネットさんの提案にモニカが突っかかった。


「第三夫人てなんだよ! 嫁に第一も第二も上も下もないだろ! みんな同じ嫁だろ」


 賛成2(モニカ、ビアンカ)、反対(ラネットさん)、おろおろして無回答(メイミー)で多数決の結果嫁に順位付けするのはなくなりました。

 ただ、公式の場では一番最初に結婚したラネットさんが正妻として対応するらしいけどね。


 *

 

 バジリスクが安定して狩れるようになってきたのとみんなのレベルも上がりまくったせいか経験値があまりおいしくなくなってくる。

 さすがに次の獲物としてキマイラと戦うのはきついので弱い敵のいる上の階層へ移動して数で稼ぐことになった。

 臭い消しのグザレミ草を焚いて煙を身体にしみこませ敵を避けながら上の階を目指す。

 途中何度か敵を避けられない危険な状況になったが、俺の幸運度が高いせいか、なにごとも起こらずに敵が去っていった。

 幸運度、すごいな。

 そして到達した10層。

 ここなら一人で一体を余裕で狩れるはずだ。

 みんなテンション高めで敵を倒しまくる。


「なんだろう、この敵は? 弱い弱すぎます!」

「まるで風船を針で突いたように敵が倒れていくな!」

「モーちゃんすごい!」

「だいぶ強くなりましたね」

「さすがごしゅじんさまです!」

 

 キャンプも作らずに移動しながら狩り続ける俺たち。

 すさまじい数の敵を狩り続け階層を制圧し、敵がいなくなったら再び下の階層を目指す。

 昼前には元居た40層に戻って来れた。

 俺の嫁たちって強いんじゃね?

 間違いなくAランク冒険者並みの破壊力がある。

 あんなに怖そうだったキマイラも一瞬で沈めている。

 ラネットさんが正面から飛び込み、その隙にモニカがしっぽの蛇を引きちぎり始末。

 あとはラネットさんの剣技とビアンカの魔法のファイヤーアローとメイミーの光魔法のホーリーアローで瞬殺だ。

 

「既にグレン様の強さは超えてますね」


 ボダニカルさんからの強さのお墨付きももらった。


 敵を倒しても強さが変わらない。

 どうやらレベルがカンストしてしまったようだ。

 調べてみると俺は上限のレベル45でカンスト。

 みんなも上限までキッチリレベルを上げた。

 ドラゴンとの戦いが終わったらみんなの上限を上げてやらないとな。

 それと経験値5倍の支援効果が発揮できるように俺のレベル上限も上げないと。


「ここでやれることはやったな」


 雄叫びを無効に出来るレベルまで上げた俺。

 あとはドラゴンの隙を見て雷迅棍で電撃を食らわせればいいだけ。

 痺れてぶっ倒れて俺の勝ちだ。


 目標のレベル40に到達し、達成感を身体全体に満たし俺たちはダンジョンを後にした。


 *


 屋敷に戻りおそい昼飯を食べる。

 さすがに徹夜でレベル上げをしていたので疲れ果てた。

 ドラゴンが来るまで少しの間の休憩することとする。

 モニカとビアンカは出かけるようだ。


「なにしに行くんだ?」

「二人でちょっとな」

「ラーゼルさんは戦いに向けて屋敷で休んでいて下さいね」


 意味ありげな言葉を残して二人は仲良く手を繋いで屋敷を出ていく。

 仲いいな。

 こんな田舎の町で遊ぶところなんてないと思うんだけど。

 なにをする気なんだろう?

 女の子同士でナニでもするのか?

 俺がベッドで仮眠を取ろうとするとメイミーが抱きついてきた。


「久しぶりのごしゅじんさまの匂いです。いい匂いです」


 俺の胸に顔をうずめて深呼吸レベルで俺の体臭をスハスハと吸いまくるメイミー。

 汗臭くないのかな?


「とってもいい匂いですよ。ごしゅじんさまがクレソンに出かけていた間は寂しかったです」

「そうか、すまなかった」

「モニカとビアンカさんも仲良く出かけちゃったことですし、私たちも仲良く寝ましょう」

「おおう」


 といったメイミーは徹夜のレベル上げで疲れたのかすやすやと寝息を立てる。

 寝るってそっちのことだったんですね。

 心の汚れた大人でごめん。

 メイミーの寝顔を見ていたら俺もすぐに眠りに落ちた。


 *


「ラーゼルさん、起きて!」


 ラネットさんだった。


「ドラゴンがやってきました! しかもマズいことになってるんです!」


 町のはずれにドラゴンがやってきていた。

 ドラゴンが俺に一日の猶予を与えた意味を知った。

 ドラゴンは電撃を食らわないように完全防護の電撃耐性の鎧を身にまとっていたのだ。

 これでは雷迅棍は効かない!

 俺たちの作戦は早くも破綻した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る