後の英雄、仲間を医務室に運ぶ
バタリと倒れたメイミーは身体を揺さぶっても意識を取り戻さない。
どうなってるんだよ?
「おい、どうしたメイミー!」
俺は耳を顔にあてる。
息はしている。
死んではいない。
よかった!
でも、なんで反応がない?
「お、俺なんにもしてないから!」
顔を真っ青にしてガタガタと震えているダール。
いつもの勢いはない。
俺は奴の胸倉を掴み問い詰めた。
「こういうことは、よくあるのか?」
「ない! 少なくとも俺が教官を始めてからは初めてだ」
俺はメイミーにポーションを飲ませる。
ボコボコになったラネットさんを回復させたほどのハイパーポーションならなんとかなるはず!
でも、容態は一向に変わらず。
ぐったりとしたままで壊れた人形のようだ。
なんで薬が効かない?
これはマズいぞ!
本格的にヤバいことになってるんじゃないだろうか?
俺は大慌てでメイミーを医務室に運ぶ。
*
医務室には聖女のクレハさんがいた。
よかった!
この前みたいに誰もいなかったら大変なことになっていた。
「僧侶の講習を受けたら倒れてしまったんです。助けてください!」
「講習?」
「回復魔法を使う講習です」
「使った魔法は?」
確か無詠唱だった。
でも使った魔法はなんとなくわかる。
ダールが『ヒール』を使えと言っていたからな。
「『ヒール』だと思います」
「それならMP不足ね……」
聖女さんは鑑定板を額に当てる。
これは簡易的なステータス確認の魔道具だ。
HPとMPと状態が表示される。
HP:22/22
MP:-27/30
状態:メンタルブレイク:強
「予想通り『メンタルブレイク』ね」
メンタルブレイクか。
メンタルブレイクとはMPの過剰使用による衰弱の状態異常。
MPが尽きると衰弱状態となり、激しい頭痛と大幅な防御力ダウンが襲ってくる。
当然頭痛で動けなくなり、この時に敵に襲われると大ダメージを受けてしまう。
回復職が死亡する一番の原因だ。
でもメンタルブレイクで意識がなくなることなんて聞いたことがない。
それにしてもMPが0を切るなんてことが起こるなんて……。
MPが0を割っているのを初めて見た。
「MPを回復するマナエーテルという薬があれば治るんだけど、そんな高価な薬品はこの医務室にはないの。錬金術ギルドから融通してもらうしかないわね。申し訳ないんだけど、借用書を書くから錬金術ギルドにまで行ってきてくれないかしら?」
マナエーテルなら持っている。
俺はアイテムボックスから取り出す。
「これを使えますか?」
「そう! それよ!」
口移しで飲ませる。
効果はてきめんで、すぐに目が覚めた。
「うーん、ごしゅじんさま?」
「大丈夫か? メイミー」
「ここは?」
「医務室だ。突然倒れて心配したぞ。どこも傷まないか?」
「はい、どこも傷みません。ここまで運んでくれたんですね。ありがとうございます」
結局メイミーが倒れた原因はよくわからなかった。
メイミーが魔法を使ったらMPが尽きてしまったのが倒れた原因。
それはわかる。
でも普通は残りMPを超える魔法は使えないはず。
おまけにMPが0を超えるほど割り込んでいたのも聞いたことがない。
さすがにこのまま僧侶をさせ続けるわけにもいかない。
俺はメイミーを連れて回復魔法のエキスパート、神殿の神官に相談することにした。
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