ラウンド7 パンチングマシン

 ? 「あ、先輩あれやりませんか?」


 そうアオイが指さした先には、一台のパンチングマシンがあった。


 サウンドバッグの小さい奴が付いていて、それを殴ると機械に叩きつけられる。その衝撃でパンチ力を測るという物だ。


 男なら誰でも興味のあるパンチ力。


 だけど俺はそれに興味が湧かなかった。


 桜井 「やらない」


 アオイ「えー、なんでですか? やりましょーよ、せーんーぱーいー!」


 俺の腕をブンブン振って駄々をこねる。


 そのあと、俺が何回嫌だと言っても、アオイの諦めてくれない。


 アオイ「なんでですかー? もしかして実はパンチ力雑魚なんですか?」


 桜井 「…あ?」


 ちょっと今の発言は頂けないな。


 アオイの手を振り払う。


 アオイはさらに驚きつつも、俺は機械に100円玉を入れる。


 そしてグローブをはめた。


 桜井 「何キロ出しゃーいい?」


 アオイ「え、あ…に、200キロ」


 桜井 「分かった」


 そのタイミングで、サンドバッグが立ち上がる。


 ゲーム画面には大きくGO!と表示されていた。


 息を小さく吸う。


 そして腰を思いっきり捻った。


 桜井「シッ!」


 サンドバッグに右拳が当たる。


 まさに弾けるような勢いで、バーンッ!と轟音をたてた。


 アオイ「…え?うそ…信じられない…」


 そんな驚くような声を上げるアオイ。俺も画面に目を向けた。


 253キロ。そう画面には表示されていた。


 ふぅ、と息を吐いてグローブを外す。


 桜井 「これでいいだろ? ほら、早く帰んねーとドラマ始まっちまーよ」


 キョトンとするアオイを背に俺は歩き出した。



 翌日。


 アオイ「あ、」


 桜井 「おう」


 偶然廊下ですれ違った。


 するとふふっと笑いアオイは口を開いた。


 アオイ「今日も屋上来てくれますよね?ゴ・リ・ラせーんぱい♪」


 桜井 「あ?」


 にひひーと、笑いながら、逃げるアオイだった。

 

 その姿はまるでウサギ後輩だ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る