ラウンド2 ヒーローになったのが運の尽き
それは、今から約二週間ほど前のこと。
桜井「あー、まじでむしゃくしゃする」
その日俺は不機嫌だった。
日直を任されていた俺は数学のノートクラス全員分の提出を言い渡され、それを言われた通り持っていったら、明日の授業の準備を手伝ってくれた言われ、しかも1時間も残されたのだ。
よりにもよって嫌いな数学というのも本当に腹が立つ。
桜井「っち、帰るの遅くなったじゃねーかよ」
スマホをチラリと見ると、ポケットにしまう。
怒りの矛先が分からぬまま、俺は歩き出した。
桜井「つーか、なんで俺なんだよ、もっと暇な奴とかいんだろ…」
ぶつぶつと呟きながら歩いていると、下駄箱で3人の男が目に入った。
柄の悪そうな感じだったので、とりあえずノータッチ…
「なぁ、いいだろ? どうせ暇ならこのあと俺たちと遊ぼうってさ?」
?「えっとー、そういうの困るんですけど」
明らかに女子の声がした。
ゆっくりとさり気なくそっちに顔を向ける。
そこには、3人の男子に囲まれた、薄茶髪のポニーテールの女子生徒がいた。
身長が小さめで、胸の膨らみもそこまでない。だけどパチリと大きな瞳を持つ彼女の顔は、遠目で見ても可愛いかった。
正面にいた男子が彼女の肩に手をかける。
男子「ぜっーてぇー楽しませるからさ、な?」
? 「いや、だから私この後…」
男子「あぁ、分かってるって、暇なんだろ?」
女子生徒は困ったような表情を見せた。
そしてこの日、正直むしゃくしゃしていてその発散先を探していたということもあったのだろう。
俺は男子へ足を進める。
男子「よし、それじゃ店の予約…ってなん…」
男子が振り返った瞬間、その顔にこぶしを叩き込んだ。
男子は派手に吹っ飛び、嫌な音をたてて、頭を地面に打ち付ける。
「は、はぁー!?なんだお前!」
そう叫んで飛びかかってきたやつにつかさず蹴りを入れる。
ふっぅ…と声を上げてその場に蹲った。
そして最後の1人は…いつの間にか居なくなっていた。
桜井 「辞めろよ、嫌がってんだろ」
俺は首をポキポキと鳴らす。
ふぅー、スッキリした。
………。
……。
…。
桜井「…やべ、逃げよ」
下駄箱から靴をとって走り出す。
派手にやりすぎた…。
そして、玄関を通過した瞬間。
? 「あ、あの!」
さっきの女の子に声をかけられ振り返る。
桜井「ん? あぁ、そう言えば怪我とかしてない?」
? 「え、あ、怪我は大丈夫です」
桜井「ならよかった…そんじゃ」
? 「あ、ちょっと待ってください!」
桜井「いや、なる早で頼む、じゃないと確実に謹慎になっちまう」
? 「あはは…それなら、先程は助けてくださり、ありがとうございました」
名前の知らない女子生徒が笑う。小さくて可愛くて、俺はその笑顔に胸を打たれる。
桜井「…おう、そんじゃ気をつけてな」
俺はダッシュで校門を抜けた。
それから数日経ってあの女子生徒が俺を訪ねてきた。
名前は小夜葵、アオイって呼んでくださいって感じで。
その日の放課後、彼女に呼び出された。
正直、浮かれていたのは認めよう。だって後輩の女の子から目をキラキラさせながら、今日時間あります?って聞かれたらウキウキしちゃうじゃん?
てな感じで屋上の扉を開けた瞬間。
アオイ「あ、先輩、お待ちしてました」
にこりと笑う。
でもなぜかその格好は体操服にボクシンググローブという、嫌な予感しかしない格好だった。
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