第十話 武器屋と呪具

 今日は薬草採取をするということで東門の前まで来ていた。東門は俺が町に入る時に通ったあの門なのだが何故か冒険者で溢れかえっている。冒険者は皆武装し殺気立ってそわそわと落ち着きがない。これは早くオスカーを探して事情聴いたほうが良いよな。そう思い観光地のように溢れ返った冒険者の中を縫うように進んでいった。


「レイヤこっちだ」


 冒険者の波に飲まれ右往左往しているとどっからか声が聞こえ手を引っ張られた。どうやら声の主はオスカーだったようだ。繋がれた手をしっかりと握り返すオスカーは冒険者を左右に押し分け進んでいった。結局冒険者に摘まれ放り出されたわけだけど。


「オスカーさんは大丈夫だったんですね。これどういう状況ですか、何かあったのか冒険者で溢れかえってますけど」

「お前ギルドに行かず直接こっちに来たのか」

「そうですが」


 呆れ顔をしたオスカーにわけもわからず首を傾げる。


「取り敢えずギルドに行くぞ」


 そう言うとオスカーはアウロラちゃんを連れてあるき出した。




 ギルドに入ると中は閑散としていた。酒場の方もいつもなら朝っぱらから飲んでいる人達で埋まっているはずのテーブルはほとんどが空席だった。


「ゴブリンジェネラルが出たらしい、東門は封鎖される」

「ちょっと待って、なんの話、ゴブリンジェネラル? 何それ」


 とっさにそんな言葉が出たが考えれればわかることだ。薬草採取は中止、ゴブリンジェネラルは多分ゴブリンの上位種小説でよくある設定だ。要はこれからどうするかを話したいんだろう。


「ゴブリンの巣が、見つかって、薬草……取れないから、今日……どうしようって」


 アウロラちゃんが付け足してくれた。


「そういうコッタ。最近魔物が活性化しているしよくあることだ」

「よくあることですか?」

「あぁ、六年前にもな魔物のスタンピードが町を襲ってな」


 俺の問に答えてくれたオスカーはどこか悲しい顔をして天井を見た。

 スタンピード聞き慣れない言葉、たしか集団暴走的な言葉だったはず。六年前何があったのかは知らない、だがオスカーの表情がその時の悲惨さを容易に想像させた。


「この話はこれでしまい。でだ武器屋行くぞ」

「ヘ?」


 オスカーは手を叩き話を終わらると、急に立ち上がる。俺は話がつかめず頭の中に疑問符を浮かべた。


「薬草採取は、資金集め……だから。予定……前倒し、した」

「そういうことですか。ありかどうアウロラちゃん」


 またアウロラちゃんが補足をする。内容を理解し、しゃがみこみアウロラちゃんにお礼を言った。

 オスカーは要件だけを言うタイプかよく覚えとかないと。ギルドの出口で早く来いと手招きをしているオスカーを見てそう思った。




「おい、おっちゃん。来たぞー」

「「「⋯⋯⋯⋯」」」

「反応ないな」

「うん」

「そうですね」


 オスカーに連れられ武器屋に来たのだが。見た目は少し古ぼけていて店内も武器が乱雑に置かれてる。正直武器屋というよりもリサイクルショップという方があっているかも知れない。


 この武器屋は町の西側にある、安くてオスカーの知り合いが営業しているらしい。自分で武器や防具を作っているが基本はいらなくなった武器や防具を買い取って売ってる。やっぱりリサイクルショップみたいな場所だった。

 オスカーは銀貨一枚あれば剣と胸当ぐらいなら買えると言ってた。


「中に入ろうぜ。多分、奥の鍛冶場にいるから暫くしたら出てくるだろう」

「そうですね……」


 店内に置いてある武器を見ていが武器の種類ではなく値段で並べるっぽいな。文字が読めないから確かではないけど。

 自分で打った武器は奥の棚や壁に飾られている。でも中古品は刃こぼれがなく防具なんかも、修繕されていて新品みたいで気にはならない。


「おー、坊主と嬢ちゃん久しぶりだな……お前さん誰だ?」

「……はじめまして、僕はレイヤと言います」

「「久しぶり(です)」」


 奥から出てきた人は、想像してたゴツイ鍛冶屋のおっさんとは違い細マッチョの優しい顔をした中年のおっさんって感じの人だった。


「俺はジークだ。で、今回はどうしたんだ?」

「コイツの武器を買いに来たんだ」

「ほう、お前さん武器はどんなのがいいんだ、予算どれくらいだ」

「あっいや、僕……武器とか触ったことなくて……」

「剣と胸当を買いに来た、予算は銀貨一枚」


 ジークさんの質問にどんどん声が小さくなっていった俺にたいして、オスカーが質問に答えてくれる。


「そうか……ならこんなのしかねえぞ」


 そういって持ってきたのは、博物館でよく観る剣だ、長くもなく短くもない振りやすそうな剣。試しに剣を持ってみると思った以上に重かった。それを見てか、ジークさんは笑いながら「鍛えれば扱えるようになる」と言っていた。


 その後も他の武器も見てみたが最終的に扱いやすい剣にした。壁に飾られている剣が少し気になり魅入っていると、とジークさんがそれは使い物にならないとシワを寄せて言った。

 ルパン一味が持ってる斬鉄剣のような剣。柄と鞘が木製で刀身が黒いのが特徴的で中二病心をくすぐられる。


 斬鉄剣は振っているとすぐに柄が壊れしまぅそうだ。実際この剣を使った冒険者が大怪我をして売りに来たり、剣だけが帰ってきたりと色々あったらしい。


『これ呪具ですよ』

「うっお! 起きてたのかよ」


 急に声をかけられたせいで変にのけぞり視線が集まる。「なんでもない」と

 咳払いをし斬鉄剣を見るふりをした。


「呪具ってなんだ」

『呪式が付与された道具の事ですよ。呪術が込められてるといえば分かりやすいですかね』

「なるほど、もろばのつるぎ的なものか」

『ものば? 呪具にはデメリットを被る代わりに実力以上の力を出す事のできるものが多くありますから。これも同じたぐいのものでしょう』

「なら呪具でしか倒せない魔物もいるってことか」

『よくわかりましたね。魔物ではないですが邪魔と言う化け物がいますよ』


 やっぱり、ゲーや小説よくある設定だ。だが今はいらない、そんな強大な敵と戦う気もないし。そう考えオスカーの元へ移動した.


「お前さん、あの剣気に入ったのか」


「欲しいならくれてやる但し絶対剣だけ返しに来るなよ」と斬鉄剣を渡された。大丈夫です、壊したりしませんと言ったら何故か笑われた。

 流れでもらってしまったけど本当に大丈夫なのか。不安になりジークさんに尋ねると大丈夫だと言っていた。


 結局剣と胸当、斬鉄剣(仮)を銀貨一枚で買った。普通ならもっとするんだがおまけだと言ってくれた。ついでにジークさんに剣の振り方や手入れの仕方を教えて貰った。一通り終わった頃には、四の鐘がなり終えたあとだった。

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