第九話 鑑定と能力

教会から鳴り響く鐘の音に体を起こし瞼を摩る。目覚まし時計が鐘の音というのは未だになれない。


「……俺達だけかよ」


重い瞼を持ち上げキョロキョロと見回すが宿はもぬけの殻だった。暫く座ったまま呆けていたがギルドに用があることを思い出しギルドへと向かった。


ギルドには行ったが鑑定はニの鐘からだと言われ鐘が鳴るまでギルドボードを見たり町中を探索したりと暇を潰して待った。


「よっ、朝早くからどうしたんだ」


ギルドに帰ると、ひとっ汗かいたぜとでも言ってそうなほど爽やかな顔をした男……オスカーに声を掛けられた。


「オスカーさん……スキル鑑定してもらいに行くんです」

「スキルか? 登録して貰った時に鑑定してもらって無かったのか。スキル鑑定は金がかかるぞ」

「……今なんて言った」


 俺の聞き間違いだろうか、登録の時にしてもらえると。しかも金がかかると……聞き間違いであって欲しいなー。


「冒険者登録の時無料でしてもらえると言った。スキル鑑定には銅貨一枚かかるぞ」

「よし……クレーム言ってくる」

「クレーム? 苦情は止めといた方がいいぞ。昨日の職員は新人職員で可愛いだろ……だから古参冒険者から娘の様に可愛がられてる。あの職員と揉め事を起こすとどうなるか分かるよな」

「…………」


 昨日のの冒険者一同による一斉殺気の理由が分かった。あの職員このギルドのアイドルみたいなものか。スキルの事はおわずけだな。


「ちょっと俺の家に来い」

「えっ……なんですか……」


 オスカーに引っ張られギルドを出た。オスカーの話だと家に鑑定石という石があるらしく、数は少なく値段が高い為そう易々と使えないが何でも鑑定できる石らしい。


 西に歩き裏路地を抜けた場所に家は有った。木材の家で所々壊れてる。周りも華やかな商店街と打って変わって陰鬱な空気が漂っている。多分ここスラム街とかそんな感じの場所なんだろう。周りの家も布で壁を補強してたり路肩で人が寝てたり、中には人が住んでるのか疑いたくなるような家まであった。


 辺りを見回していると光が差し込んでいる場所があった。少し気になり光が差し込む方へ進む。角を曲がると空き地が広がっており、そこには子供が集まり遊んでいた。その中にはアウロラちゃんの姿もあった。アウロラちゃんは不格好な椅子に座って同い歳くらいの少年と何か話している。少年が何かを斬るポーズをとって楽しそうに笑っていた。



暫くその光景を眺めていると後ろから声がかかった。振り向くとそこにはオスカーが立っておりその手には瑠璃色の丸い玉を持っていた。


「これが鑑定石だ使え」

「いいのですか?」

「遠慮するな、俺達パーティーメンバーだろ」


 そう言うと、ナイフで俺の血を取り鑑定石に付けた。一瞬鑑定石が淡い光を放ったかと思うと光を地面に放射し崩れ落ちた。地面には日本語で個人情報ステータスが描かれていた。


 種族 人族ヒューマン

 名前 勇樹 玲夜レイヤ=ユウキ

 性別 男

 年齢 16歳

 生年月日 7月23日 

 住所 不定

 家族構成

  父 勇樹 和博

  母 勇樹 かえ子

  姉 流石 さつき

 職業 冒険者

 恩恵 英霊の加護

 スキル 『星願』『言語理解』『愚人』『愚者』『魔力感知』『闘気感知』『魔力操作』『闘気操作』『殺気感知』


 ツッコミどころが沢山あるが気になるのは恩恵とスキルぐらいだな。以外とスキル沢山持っているし。恩恵の英霊の加護ってのが気になるが多分歩世の事だろう。加護だから特別な効果でもあるんだろうけど今は確かめ方を知らない。『星願』はどんなスキルなんだ? 星に願う、全く持って意味が分からん。星は地球とかこの星の事か、願うはそのままだろうが、そして人を馬鹿にしたようなスキル『愚人』『愚者』。オスカーは隣で意外と多いいなとこぼしてた。


「歩世分かるか」

『星って神のことじゃないですか。神に願いを言いうと願いを叶えてくれる……ありえないですよね』

「そうかもしれないけど……一旦放置だな。英霊の加護って歩世の事だよな」

『多分そうだと思います』


 もう少しスキルに詳しく分かればいいのに、探せば本とかに載ってあるかもな。鑑定の職員なら詳しく分かるかもしれない。


「お前スキル凄いな多分これ中位スキルだぞ」

「中位スキル? これがですか」


 アイツが指したのは『星願』のスキルだった。中位ってのは多分スキルのランクだろう。この訳の分からないスキルにそんな価値が。何だ嬉しい様な嬉しくない様な微妙だな。


「ああ、中位スキル以上は収得に時間が掛かるんだが……」

「このスキル初めから持ってたと思います」

「なら祝福ギフトか、珍しいな」

祝福ギフト?」

「……祝福ギフトってのは産まれた時から備わってるスキルの事だ。俺は『錬成』と『鉱物鑑定』の二つ。お前は『星願』と『愚人』,『愚者』,『言語理解』か?」

「多分そうだと思いますが、笑いませんでした」

「笑ってねえよ」


 顔を見ると目を逸らすしこいつ笑ってたな。その事はどうでもいいとして、祝福ギフトなんてものがあるのか。産まれた時からなら日本で産まれた時から持ってたということなのか? オスカーは錬成って言ってたし、錬成って金を作るアレだろ、そんなもんまであるのか。


「何で『星願』と『愚人』『愚者』なんだ、もっといいスキルが良かったのに」

『それは俺達は産まれた時から持ってる訳じゃなくこの世界に来る時に取得するからです。その人の才能より生活態度や生活環境からくる可能性が一番高いですから。俺なんて家の近くに墓地があるという理由から降霊術だったわけですし』

「それはなんとも……」

『でも祝福ギフトによって魔術の相性とかも分かるしそれにおいては『降霊術』で良かったと思っています』

「魔術の相性、それって俺は何になるんだ」


 そう歩世に尋ねると、「さあー、星って付いてるくらいだから光とか?」と疑問符を並べる。


 光か……光とか勇者の魔法だったりするからな、もしかして俺の時代が来たんじゃないか…………ないな。


「おーい大丈夫かー聞こえてるかー」

「大丈夫です、何か?」

「いや、眉間にシワを寄せたり苦笑いしたり、しまいにはにやけていて気持ち悪かったから」

「…………」


 顔に出てたのか……歩世と話す時は気をつけないと。


「で、なんの話なんですか」

「あぁ明日、朝早くからギルドに来てくれないか町の外に行きたいから」

「外ってFランク冒険者に討伐系の依頼なんてありましたっけ?」

「依頼じゃない。薬草を取りに行くだけだ。買取はライセンスがあれば誰でも出来るしな。金があればお前の武器も揃えれる」

「……武器」


 そういえば武器持ってなかったな。そう見ればオスカーも槍を持ってるしやっぱり必要なのか。


「そうゆうわけだ。明日は朝早いからな」

「分かりました」


 その後アイツとは分かれいつもの宿に戻った。明日町の外に、冒険者らしいことやっとできるな。武器と言ってたし、できるならボウガンとかの方がいいんだよな。近距離で戦闘とか危ないし、コタ探すのが目的だから余りそういう事したくないしな。

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