第八話 新たな仲間と兄弟

 朝起きてギルドに向かった。昨日見忘れてた冒険者規則を確認するためだ。ギルドに着くとすぐに規則を確認する。規則には依頼を失敗又は断る場合は依頼料の三分の一支払はなければならないとか、犯罪を犯した場合又は共犯は冒険者ライセンスを剥奪とするとか、色々書かれていた。


「そういえば、冒険者ギルドって俺達の世界の人が立てたんだよな」

『そうですが、正確にはハンター組合です。その後傭兵ギルドと併合して冒険者ギルドになりました』

「へーじゃ――」


「よー来たな、酒場に行くぞ」


 昨日の男が歩いて来る。朝からデカい声だ、冒険者はみんなこんな感じなのか? 皆朝から喧嘩やらなんやら騒がしい。さっきだって腕相撲をしていてテーブルを壊していたし。勝手に話を進める男に溜息をつきながら男の後をついていった。


「レイヤ、こいつが俺の妹のアウロラ」


 突拍子もなく言い放った言葉に俺は理解が追い付かず一瞬呆け顔をしてしまった。その後男が手を向けている方向に目を向け「あぁ」と意味を理解しうなずいた。


 男の手の先には、十歳前後の少女がいた。透き通る白い肌と白い髪、白髪と違う 銀色に似た髪色をした少女だ。どこかで会ったような親近感が湧く感覚がある。少女は不器用で何処かぶかぶかした笑顔を向けている。


「……初めまして、アウロラちゃん。僕の名前は玲夜です」

「……レイヤ……初めましてアウロラ、です」


 多分だがこの子は人見知りなんだろう。挨拶を済ますと、男の後に隠れてちらちらとこちらを見てる。


「まずパーティー登録済ませようぜ」

「そうですね……」


 まず、情報交換が先だと思うけどと内心呟きながら男の後をついて行く。


 パーティー登録は冒険者登録カウンターで行うみたいだ。パーティー登録の時職員が昨日の女性で昨日の件で物凄く謝られた。何故か知らないが周りの冒険者からの眼光が凄く、目で射殺すかのような殺気を肌で感じた。そのせいだろうか『殺気感知』というスキルを収得できた訳だが。


「パーティー登録できたし、本題に入ろう。レイヤの探し人……実は俺は何も知らないんだ」


 笑ながら済まんと誤ってきた。その姿に眉間にしわをよせ引きつった笑みを浮かべた。


「そんな顔するなよ。知ってるのは俺じゃなくて妹のアウロラだ。アウロラは特殊なスキルでレイヤと探し人かは分からないがもう一人見たって」


 男が、顔を僕の耳に近づけて言った。スキルで僕達のこと知ったって事だよな。この子が……その時背景から何処か分かるかもしれない。


「……サンマグノリア王国」

「そのサンマグノリア王国にいるのか!」


 大声をだした所為かアウロラちゃんは怯えながら首をコクンと縦に振った。天使かな可愛い、身長が低いせいか余計に。


「じゃあすぐ行こう」

「無理だ、金が無いだろ。国境を超える為には入国審査もあるからレイヤじゃ審査も通らねえよ」

「じゃあどうすれば」

「責めてCランクに成るか、行商人に成るか、不法入国するかこの三択だな」


 1番早いのはCランクに成る事だな……不法入国ってよくその考えを思いつくな。確かランク上げるには昇格試験があったけ。


「沢山依頼を受けるしかないですね」

「おう、じゃあ今すぐ受けるか!」


 そう言うと、満面の笑で机の上に紙を一つ置いた。紙には蜂の巣の駆除と書かれてる。どうやら依頼書のようだ。家の屋根に蜂の巣ができたから駆除して欲しいと書かれ家の場所、蜂の巣の大きさなどが書かれていた。ただやたらと多い。


 依頼報酬金は銅貨三枚。男に聞くと貨幣価値は、月に金貨一枚あれば食には困らないらしい。


 Fランク冒険者は基本は町の外での依頼が無く街の中での依頼(主に雑用)ばかりだそうだ。実際に掲示板を見てみると街道の掃除やら草取りなど酷かった。しかも依頼報酬金は低い、大体鉄貨五、六枚ぐらいでギルドが出した依頼だけだ。


「その依頼訳ありなんですか?」

「訳ありってかめんどくせーな町全体だし……もう依頼受けてるから早く行こうぜ」

「町全体てっ――」


 質問をする前に、妹の手を引いてギルドの外に走っていった。


 冒険者ギルドの裏手に来た。蜂の巣の駆除と聞いて何となく予想はしてだがやはりスズメバチだった。テレビで見る大きさではないが拳より大きく家の壁に張り付いている。


「アレ……スズメバチだろ、どうやって駆除するんです」

「スズメバチ? あのカクテルビーの事か。どうやってったって魔法で」


「氷魔法 アイスウォール」

「火魔法 ファイヤーボール」


 そう男が唱えると分厚い氷が現れ周りの蜂ごと巣を覆ってしまった。その氷と壁の付け根を削って地面に落とすと、今度は魔法で炙った。如何やら焼かれた蜂の巣を麻袋に入れて終わりのようだ


 何故か炎は時間が経つと自然と消えていった。蜂の巣の周りを見ても氷の欠片も無くなっているし。


「よし完了だ、次行くぞ」

「えっ……あっ……」


 蜂の巣の駆除ってこんなのでいいのだろうか? ふと思ってしまったが依頼が早く終わるので良しとした。蜂の巣の入った袋を持って後を追った。蜂の巣は後四個、暗くなる前までには終わるかな。


 次の場所は路地を抜けた先にある小さな林だ。子供の遊び場にもならないくらい小さな林、その一つの樹洞に埋まる形でできていた。男はさっきと同じ手順で蜂の巣の駆除をする、俺はただ布を持って見ているだけ。俺必要なのか疑うくらいに手際よく処理する男になんでここにいるんだろと感慨にふけり空を見上げた。


「のろいだのろい。ジャマは人の世界にいたらだめなんだぞ」


 子供の声がして振り向くと五,六歳の子供達が石を構えて立っていた。


 呪い? ジャマ? 聞き慣れない単語を耳にして首を傾げるが、アウロラちゃんが怯えて服を掴むを見て我に返った。


「そんなきもちわるいものつれててやっぱりジャマだ」


 男の子の一人がそう言うと一斉に石を投げた。「でてけー」「たいじしてやる」といった声が聞こえ、とっさにアウロラちゃんに覆いかぶさり子どもたちの間に入ると背中に何回か石が当たった。すぐに石が当たらなくなると男が声をかけてきた。


「大丈夫かアウロラ。兄ちゃんが追い払ったからな」

「うん……レイヤが助けてくれたから」

「そうか。レイヤも怪我ないか」

「僕は大丈夫ですよ」


 訳あり兄弟か、俺には関係ないことだな。そう思い男が処理し終えた蜂の巣を布に入れる。男は妹が怪我してないか念入りに見ている。本当にこんなので金貰っていいのか、取り分なしでも文句言えねえだろ。

 そう呑気な事を考えるてる内に依頼は終わった。


 蜂の巣と蜂の死体を布に入れギルドへ依頼報告をしに行った。依頼報酬金は銅貨一枚貰った。何もしてないのに貰ってもいいのかと聞いたら「蜂の巣処理頑張ってただろ」と言われた。アイツがいいと言ったからいいのだろうけど。その後男と分かれると商店街の方へと向かった。


「これ依頼する必要あるのか」

『さぁどうでしょう。ただ場所はギルド以外は人が寄り付くような場所ではなかったですよね』

「ようは面倒ごとを押し付けたって感じか」

「そういえばスキルの確認どうやるんだ」

『あぁそれはギルドに鑑定ってカウンターがありますよね、そこでしてくれるらしいです。……明日にでも鑑定してもらいに行きますか』

「そうだな……」


 商店で晩飯を買いながらそんな会話をする。ふと視線をずらすと傷だらけの女の子が泣いている男の子の手をとって歩いてる。女の子は「男がメソメソするな!」と声を掛けながらもその足取りは優しい。


 イジメにあった弟を姉が助けたって感じかな。


『どうしたんですか?』

「いや、いいよなあーゆうのって思っただけ」

『そうですね』

「……あっそういえば名前聞いてなかった」

『オスカーですよ』

「いつ聞いたんだ」

『昨日自己紹介しましたよ』

「そういえばそんなこともあったな」


 他愛もない会話をしながら夕焼け色に染まる露地をゆったりと歩き仮宿に向かった。

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