第七話 町とギルト
朝起きるとリベルタスさんと一緒に風呂に入った。この国では風呂は朝に入るものだそうだ。風呂は身支度を整える為にあるのだと、町や王都に行けば銭湯があるらしい。開拓地のこの村で水で濡らした布で体を拭く位しかできなかった。
その後、リベルタスさんに話をしてフォボスの冒険者ギルドまで連れて行ってくれる事になった。冒険者に成りたいと行ったら物凄く反対された。街の知人に働き口を探してやると言われ、説得するのに1時間ぐらいかかった。
リベルタスさんの町まで徒歩で行き、五の鐘までには着くそうだ。五の鐘は日本でいうと午後3時の事だ。この世界では午前六時から午後九時まで約三時間事に鐘を鳴らし一の鐘、二の鐘と言っていくらしい。
朝食を食べてすぐに村を出た。途中馬車に乗せてもらったこともあり予定よりも早くついた。馬車を引いてたのは馬じゃなくて驢馬だったんだけど。
「おー見えたぞ、アレがフォボスだ!」
「おー」
町の中の様子が見えない。町の周りを石城門と平屋ぐらいの高さの木城壁で囲ってる。城壁や城門には所々傷がありそれが逆に威圧感を放ってる。
「城壁って石壁だけじゃないんだな……」
「あー王都に近付くと城壁も石でできているぞ」
「へー、そうなんですか」
『そんな事どうでもいいので早く入りましょう!』
「いや、何でお前が興奮してるんだ。こういう光景見慣れてるだろ」
『いや〜ぁ、こんな光景久しぶりですから、実に千年ぶりですよ』
「あっそ」
俺も早く街中を見てみたいしギルドに登録したいし、後風呂に入りたい。
「あっおい! 走るな」
「すみません、先行っときます」
城門の前まできて俺は今直立不動の姿勢で立ち尽くしている。決して城門の迫力や威圧感に圧倒された訳ではなく、目の前に居るおっさんにだ。身長は二百に届こうかと言うくらいあり、格闘技をしてるんじゃないかというガタイをしている。腕を組んで俺を見詰めてる。その目は鋭く、ゴブリン達をその眼力だけで殺せるんじゃないかと言うぐらいだ。
「ようゴータス、相変わらず怖いな」
「何だその言い方は、てかこのガキお前の連れか?」
リベルタスさんが手を振りながら歩いてくる。このゴータスって人はリベルタスさんの知り合いなのか。てかこの人笑った顔を怖い。口を大きく開いてる姿は鬼を連想させた。今から全てを食らおうかと言うぐらいの迫力がある。
「へーこのガキ穴落ちでか……お前だから信じるがちゃんと金はは払って貰うぞ。後で身分書持ってこいよ」
「分かってるって」
立ちすくんでるうちにリベルタスさんが何もかもやってくれていた。
「あの、ありがとうございます」
「これくらいいいよ」
町に入り、十分くらいの場所にギルドはあった。冒険者ギルドは煉瓦造りの建物で想像とは違い清潔感ある建物だ。隣には酒場があり冒険者の宿屋も兼ねている。
ギルドに入ると、正面に冒険者受付カウンターがありそこで依頼の発注から依頼の受付までをしている。右側には魔物や薬草など素材買取カウンターがありその隣に素材の解体部屋がある。二階はギルドマスターの執務室と応接室、会議室が何部屋かあるくらいだそうだ。
「俺は依頼の報告があるから、冒険者登録なら正面の受付で出来るからな」
「ありがとうございました」
リベルタスさんに御礼を言ったあと受付カウンターに向かった。受付カウンターは五つあり左側から依頼の発注・受付、冒険者登録、依頼報告、鑑定と並んでる。依頼報告所が二カウンター使ってる。F〜D、C〜Aと別れてる。
「あのー、冒険者登録をしに来ました」
返事が無い。悪い時間帯に来たかな。横の依頼報告所に行列ができて職員が右へ左へ慌ただしく働いてる。行列を眺めていたが意外と俺と同じ位の年齢の人が多い、女の子もいるようだ。
「すみません、お待たせしました冒険者登録ですね。まずこの書類に必要事項を記入して下さい。文字は書けますか? 名前以外は未記入でも構いませんよ 」
「あっはい、文字は書けないので……」
頭を撫でながらすみませんと言って名前だけ言って記入をしてもらった。この世界の文字は覚えどった方がいいかな。後で歩世に教えてもらおう。そんな事を考えてるうちに、職員が何かの薄く小さい板とナイフを持ってきた。
「では機器に血を一滴垂らしてください。」
四足の付いた板に赤色の卵みたいなものをはめた機器だ。職員にナイフを借りて血を垂らすと機器が光、機器の下に置いてた冒険者ライセンスに光が放射された。
「これで登録完了です。冒険者はS,A,B,C,D,E,Fとランクがあり一定以上の依頼をこなす事にランクが上がって行きます。依頼は左手にある掲示板から受ける事ができます。詳しくは掲示板左上に冒険者の規則について書かれていますので其方をご覧下さい」
「えっあっ、はい」
登録できたのか? 職員の人は慌ただしそうに去っていったけど⋯⋯冒険者についてはボードの所に書いてあるど言ってたっけ? 取り敢えず見てから考えるか。てかAとかBって……。
「なあー歩世AとかBってこっちの文字だよな」
『冒険者ギルドを立てたのは私達の世界の人ですから』
「マジで!!」
やばい、驚きすぎて声が出てしまった。周りからの視線が集まる、早いところ立ち去ろう。
ギルドを出てしばらく周りをブラついた。ギルドの周りには武器屋や鍛冶屋など並んていて、街の中心街に行くと日用品を売る店が並んでいる。皆生き生きして慌ただしく走る人が沢山いて何故か自分も嬉しくなった。
「結局ギルドに戻って来たな」
『まぁやる事ないですし、依頼でも受けましょう』
「依頼って……受ける必要ないだろ」
『そうでもないよ、玲夜今所持金いくらですか』
「あっ、金」
そうだ今俺は一文無しだ。……宿にも泊まれないって事だよな……依頼をこなさないと。暫く依頼掲示板を眺めているとリベルタスさんがやってきた。
「よう、済まないな依頼報告長引いてな。登録終わったなら行くぞ」
「行くって何処へですか?」
「何処へってそりゃぁ北門に、身分書見せないと衛兵に捕まるぞ」
「あっ」
城門に行った後リベルタスさんと別れて冒険者の宿ギルドのに行った。宿を確かめると同年代くらいの人達が大部屋に雑魚寝していた。宿と言うよりかは倉庫の方がピンとくる。
「布も何もないけど、森で寝るよりかはましか」
『あぁアレは酷かった、体中が痛かったが特に首と腰は痛かったですね』
「ん? 何で知ってるんだ?」
『そりゃぁ五感を共有してますから……ちゃんと切れますよ』
「そうなのか、なら俺が学校に行くときの倦怠感は」
『あぁ、俺のせいです』
そうか……てか堂々と胸を張って言えることなのか?
『訓練しなくていいのですか、せめて三十分間は持続できるようにならないと……』
「そうだった……魔法っていつ教えてくれるんだよ?」
『せめて発動状態で歩く事ができないと――』
「はいはい、そうですかー」
兎に角ひたすら訓練をしないと。まだまだ時間はあるしな。
「おいそこのお前」
「……それって僕の事ですか」
訓練をしてから一時間ぐらいたった頃だ、(周りから見たらただ座っているだけに見えるけど)一人の青年が話し掛けてきた。茶髪……茶に少し赤みがかった色かな? 少し幼さが残った顔立ち。
「そうだ、俺の名前はオスカーお前は!」
「玲夜です。何か用事ですか?」
「用事ってか、一緒にパーティー組まないか?」
「えっと……」
何かこの人グイグイくるな、何か汗臭いし。パーティーって冒険者の事だよな? コタロー探さないとだし憑霊石をあるしな、断わるか。
「あのすみません、パーティーは組めません」
「……何でなんだ」
「コタ……人を探していていて、色んな国を旅してまわろうと思っているので」
「なら俺らも一緒に探がすからパーティー組もうぜ……お前転移者だろ心当たりがある」
「ヘっ」
コイツ小声で心当たりがあると……嘘か? でも転移者って。
「歩世どうだと思う?」
『どうって嘘でわないと思います、嘘つく必要がありませんし』
「そうだよな」
「穴落ちって何か特別な力でもあるのか?」
『いや、スキルを取得しやすいくらいですかね……』
へーそんな恩恵があったのか。どれ位か知らないが凄い事だろ。多分穴落ちだからって理由は無さそうだが、取り敢えずパーティー組んで考えてみるか。少しでも情報収集したいし。
「歩世もそれでいいか」
『別にいいですよ』
歩世もいいって言ったし、何かあったらその時に考えればいいか。
「あの、パーティーを組みます。そのかわり貴方が知ってる情報全て教えて下さい」
「よっしゃ、じゃ明日な。明日は妹も連れて来るからな。その敬語みたいなのやめろよこれからのパーティーメンバーなんだからさ」
気の早いやつだ。走って出ていきやがった。妹って兄妹でか。訓練の続きをするか。その後六の鐘が鳴るまで訓練を続けた。六の鐘が鳴り終わる頃から多勢の人が入ってきだし訓練が出来なくなった。十分位持続できるようになった。
この宿を使う人って僕と同じくらいの人が多いいな、多分だけど初心者冒険者の為の施設なのだろう。その後も周りをキョロキョロと見回してると青年に睨まれ顔を伏せるように眠った。
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