一章 旅立ち

第三話 異世界と召喚

 ……ここは何処だ? 真っ白な空間、周りには何も無く何も感じない。目の前に人影が座ってる。何処と無く姉貴に似てるが違うような。靄が掛かってるようにはっきりとは見えないけど。


 人影はそこに座れとでも言うかのように手招きをした。この人?

 雰囲気といい座り方といい姉貴そっくりだ。手招きの仕方なんてまんま姉貴だったし。


 人影はまだ手招きをしている。これ座ったらなにか起きるとかじゃないよな座っていいよな。誰に言ってんだよとツッコミながら警戒して座った。これ絶対夢じゃないなもしかして異世界転生……それはないか。


「えーと此処は何処ですか。お花畑でも無いし近くに河がある訳で――――!」


 話してる途中に黒い何かに邪魔されたてか呑まれた。黒いやつ空気読めよ、座って直ぐに起きるとか。普通話し終えた頃に起きるものでしょ。話途中の中途半端な時に起きるの。愚痴ってもしょうがないか。これ絶対やばいやつやん、死ぬやつやん、漫画であったよこうゆうの。暖かくて温もりがあるあれはお花畑か?


『…………いた…………が…』

「だ、誰かいるのか?」

『まき……す…………は………て…る』

「何を言っているんだ、ここは何処なんだ、教えろそこにいるんだろ!」


『……ル……ご………う』

「うっ」


  熱い、肺が呼吸できない。苦しい、助けて誰か、誰でもいい助けて……


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


  ピリリリリ ピリリリリ ピリリ


「んっ……6時――朝か」


  眠い、昨日のあの夢なんだったんだ?

 まぁ考えても意味無いか。とりあえず顔洗って眠気を覚まそう。


  これから、朝ご飯を食べ終え学校に行かないといけないわけだがダルい、身体中が重い風邪かな。 ……学校行かないと。


  やっと着いた。家から学校までの距離やたらと長く感じたし、いつもなら15分くらいなのに倍近くも掛かった。俺は鞄を机にかけると机にもたれ掛かる。


「よっ」


  誰かが俺に声をかける。俺なんかに声をかける人間なんて限られてる。そう思いながら顔を上げ返事をする。


「……コタおはよう」


 目の前に立っていたのは烏羽色の髪をした顔の形の整ったイケメン、虎太郎こたろうだ。コタは俺の幼馴染で同い年唯一の話し相手でもある。


「珍しいな遅刻ぎりぎりにくるなんて」

「何だか熱っぽくて、身体が重いし」

「熱っぽいって風邪でも引いたんじゃないのか、保健室行くか?」

「風邪とはちがうと思う、熱はなかったし薬もちゃんと飲んだ」


  朝、体温計で測ったら6度9分別に風邪って程でもはなかった。一応薬も飲んできたけど。


「そうか、じゃぁ寝不足じゃね、昨日徹夜でゲームしてたとか」

「昨日は10時には寝たよ」

「あっそう言えば寝てる時に面白い夢みた」

「なんだ? 変な夢って」

「それが、真っ白い部屋に黒い――」


 ――カチッ


「キャッ!」

「何だ」

「停電!?」

「お、おい外見てみろ」

「今朝じゃないのか」


『ゲート――カイツウで~す♪』


「ば、化け物!!」

「何なんだ!」

「早く! こっちに、廊下は普通だ!」

「レイ早く教室から出……レイ?」

「ここ……は」


  夢……なのか。あの夢と同じ暗い闇の……嫌違うあの世界と似ているが暖かく温もりがない、ただ暗く冷たい世界だ。


『おや~♪ 何人か見えていますね~♪』

『本来なら一人でいいんですが~♪ まぁ~いいでしょ~♪』


「おいレイ!! 早く廊下へ」

「――ッ!?」


  コタローが俺の手を引いて廊下へ走ろうとしたその時、眩しく暖かい光が教室を包み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る