第2話Nemesisscode番外編 極東重工・非番

「ピピピピピ....」

起床時間になった通信端末がアラーム音を奏でる。

今日は数ヶ月ぶりの非番だ。昨日の内に報告書や始末書は上に上げ終わってるから、あの部屋に篭る必要も無い。起きてゆっくりシャワーでも浴びるか。

そう思い身体を起こす。


シャワーを終え、朝食を何時もの携帯食糧とインスタントコーヒで取る。特に代わり映えの無い朝の情報を流し読みしながら今日の予定を考える。

「一昨日装備は点検したし、買い物も済ませてあるんだよなぁ...」

特にやる事が無い日も考え物だなと思ったが、どうせなら少しぶらつくかと思い身嗜みを整えて何時もの購買場に向かった。



---購買場---

日用品から食料品を扱ってる店が何軒か並ぶ所。極東重工の多くはここで買い物を済ませる事が多い。



「あ!SU隊長!おはよう御座います!」

そう元気そうな声を出すのは以前MAGUS戦の時にオペレーターをしていた結月だ。あれ以降、割と良く話す様になった。最近会う機会が多い気がする。

「おう、おはようさん。結月は買い物か?」

「はい、携帯食糧が少なくなって来ましたので...。「は」って事はSU隊長は違うのですか?」

首を少し傾げながら聞く。なんとも可愛らしい仕草だ。こんな仕事してなければゴズの様に狙ってたかも知れないな。

「あぁ、久しぶりの非番でな。やる事が無くて少しぶらつきに来ただけだ」

「なるほど!あ!もし隊長が宜しければこの後少しお時間を頂けないですか?ちょっと行きたい所がありまして!近くにコーヒーショップが出来たんですよ!インスタントですけど雰囲気が良さそうな所でして!」

「別に構わないぞ、だが買い物はどうする?一旦荷物を置いてからの方が良いだろう」

「あ、そうでした」

少し恥ずかしい様な顔をして笑う。

「ほら、荷物を持つから渡せ」

「いやいや!そんな、悪いですよ!」

「ほれ、行くぞ」

荷物を少し強引に持ち歩き出す。

「ずるいなぁ...」

そんな声が後ろから聞こえたが無視だ。聞こえないフリでもしていよう。

「あ、ちょっと待ってくださーい!」

そう小走りで追いかけて来た。



---コーヒーショップ---

最近開店した比較的新しい店。

コーヒーにこだわっていると言うよりは店の装飾にこだわっている。



「隊長って非番の日は普段何されてるんですか?」

「特にこれと言う物は無いなぁ...。しいて言えば書類仕事か?」

「それじゃあ非番じゃ無いじゃ無いですか!仕事ですよそれ!」

「だな、はははは....」

「じゃ、じゃあ今日みたいに非番が重なったら何処か遊びにでも....」

小さい声でそう呟いた瞬間、結月の通信機に連絡が入った。結月、顔が怖いぞ。

「うー、すみません本部より急用が入りましたので向かいます」

そう言って彼女は自分の代金を置いてこうとしたがここは俺が出しておくから早く行って来いとSUが言い、彼女はそれは悪いですと言ったが良いから良いからと強引に押し通した。

「すみません有難う御座います。今度一緒に何処か行った時は私が奢りますね!」

そう言って彼女は本部に駆け出した。


コーヒーを飲み切り、店を出て次は何処をぶらつこうか考えてると声を掛けられた。

「おやおや、隊長も隅に置けませんねえ」

そう言って近づいて来たのは副隊長のウィングだ。

「偶々購買場であっただけだ」

「いつもは女性からの誘いを断ってる堅物の隊長が珍しいなと思いまして」

そう軽く笑う。

「お前にも理由は言ってあるだろう」

「“悲しむ家族を作りたく無い”ですか...。ま、こんな仕事だからでしょうけどね...」

「あぁ、もうあんな顔をする人は作りたく無いんだ」

極東重工にスカウトされる前バード商会にいた時、仲間が死にその家族に酷く責められた記憶が蘇る。

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「なんであの人が死ななきゃならなかったのよ!!!」

「夫を返して!!夫を返しなさいよ!!!」

「この人殺し!!!家族を返せ!!!」

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「ま、それよりこの後他の隊員と飲みに行きませんか?」

「そう言えば前の約束もあったな。行くか、何時もの店か?」

「えぇ、店主がに富裕層しか手に入らない肉が手に入ったと自慢していたらしいので小隊の隊員で全部食ってやろうって」

そう笑いながら言う。

「それは良いな。他の奴らに食わせるには勿体無い、俺ら小隊で食うか」

「えぇ」

悪戯っぽく笑う二人

「そうとなりゃ急ぐか」

「はい、もう何人かは到着しているらしいので急ぎましょう」

「おう」

そう言って二人は目的の店に向かい人混みの中に消えてった。

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その夜、何処かの酒場で店主の悲痛な叫びが響いた。

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