第110話 初恋の人が嫉妬?

【あくる日の土曜日】


 今日は『つねちゃん』の家で勉強をする日である。


 先に佐々木は来ていて勉強を始めていた。


「おっす」


「お疲れ~」


 俺は簡単な挨拶をするとテーブルの上に参考書などを置き、勉強の準備をしている。


 そんな中、『つねちゃん』が俺に質問をしてきた。


「そう言えば二人は二年生になって同じクラスになったそうね? 良かったわねぇ?」


「ハハハ、そうなんだよ。まぁ、良かったかどうかは分からないけどさ……ハハハハ」


 俺の言葉に勉強をしていた佐々木が反応してきた。


「五十鈴ちゃん、今なんか失礼なこと言わなかっ!? もしかして私と同じクラスになりたくなかったとか!?」


「そっ、そんなことはないよ。今のは冗談だからさ……」


「ホントにぃ? ホントに冗談なのかなぁ? 五十鈴ちゃんって、たまに嘘つくしさぁ……」


 佐々木の奴、急にドキッっとする様なことを言うんじゃないよ!!

 俺が『高校生』ってこと事態が『嘘』なんだからさ……


「マーコ、お……俺は嘘なんかつかないよ!! マーコの方こそ、いつも何を考えてるのか分からないじゃない!?」


「私は何も考えてないからっ!!」


「いや、何か考えろよっ!!」


「五十鈴ちゃんの言ってる意味が分かんないわ!!」


「マーコ!!」


「はーい、二人ともストップ、ストップ!! 落ち着いてちょうだい!!」


 『つねちゃん』がたまりかねて、俺達の言い合いを止めに入ってくれた。


 俺は『つねちゃん』の声で冷静さを取り戻し、少し照れた表情をし、頭を書きながら謝った。


「ゴメンよ、つねちゃん……なんか俺、マーコと言い合いしてたら、いつの間にか興奮してたみたいだよ……」


「私もです。常谷先生、ゴメンなさい……」


佐々木も『つねちゃん』に謝るが、何故か『つねちゃん』の反応が悪い。


 俺は心配になり、『つねちゃん』に声をかける。


「つねちゃん、どうしたの? もしかして怒ってるのかな? もしそうなら本当にごめんなさい!!」


「えっ、いえ……ごめんなさい……二人の会話を聞いていて少し『違和感』を感じちゃって……」


「えっ、違和感?」


「う……うん……二人っていつから『五十鈴ちゃん』『マーコ』って呼び会うようになったのかな? つい、この間まではお互い『五十鈴君』『佐々木』って呼んでいたと思うのだけど……」



 俺は『つねちゃん』の話を聞いて『しまった!!』と思った。


 俺は『つねちゃん』にプロポーズをするまで、何がなんでも良い印象を持ってもらう為に努力をしてきたのに、いくら常に冷静な『つねちゃん』でも……俺なんかにヤキモチなど妬かないとは思うけど、目の前でそんな呼び合い方をしている二人の姿を見て良い気分になるはずがない……


 旗から見れば『恋人同士の痴話喧嘩』にも見えるだろう……


 現に二年になってから同じクラスの数名からは『二人は付き合っているのか?』という質問があったくらいだ。


 俺がぞんなことを思っていると佐々木が『つねちゃん』に説明をしだした。


「実は私、前から『五十鈴君』って呼びにくいなぁって思ってたんですよ。それで先日、同じクラスになったのを期に『五十鈴ちゃん』って呼ばせてほしいって私からお願いしたんでず。その代わり私のことは『マーコ』って呼んでくれいいからって……」


 佐々木の説明を聞いた『つねちゃん』は少し表情が和らいだかに見えたが、どことなくまだ『違和感』は取れていないみたいであった。


 そして『つねちゃん』は


「下の名前で呼ばれるってとてもいいわねぇ? 先生も下の名前で呼んでもらいたくなっちゃったわ……」と言いながら俺の顔をチラッと見てきた。


 『つねちゃん』と目が合った俺はめちゃくちゃ恥ずかしくなり、視線を反らしてしまった。


 すると佐々木が「でも、五十鈴ちゃんが今更、常谷先生のことを『香織ちゃん』とか『香織先生』なんて呼べないかもしれませんよ。五十鈴ちゃん、以外と『恥ずかしがりやさん』だし……」


 佐々木は何でそんなことまでお見通しなんだ!?

 俺が『恥ずかしがりや』なところをかもし出しているのか?


「そうよねぇ……隆くんは昔から恥ずかしがりやさんだったから……今こうして私のことを『つねちゃん』と呼んでくれるだけでも幸せなことだし……あまり贅沢なことは言えないわね……」


「隆君かぁ……私も『五十鈴ちゃん』って呼び方やめて『隆君』って呼ぼうかな……?」


 さっ、佐々木、何てこと言うんだよ!?


「佐々木さん、それはダメよ」


「えーっ、何でダメなんですか!?」


「そ、それは、ただなんとなくだけど……でも『隆君』って呼ぶのは私だけがいいなぁ……」


 『つねちゃん』は少し頬を赤くしながらそう言った。


 俺はまさかの『つねちゃん』の言葉に驚き


「つねちゃん……」


 と名前を口にするだけで精一杯であった。





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