第85話 初恋の人に癒される
髪型はセミロングで少しパーマがかっていてる小柄な子......
色白で黒目が大きく、笑顔がとても可愛らしい子……
『前の世界』で俺が一番大好きだった人……
そして高校を卒業してからも数年間、忘れられなかった人……
『つねちゃん』が初恋の人だということをいつの間にか忘れてしまった俺は中学生になるまで『恋』というものを経験していなかった。
しかし小学生の頃から親しかった『石田の死』で俺は石田のことが好きだったことに気付いてしまう。でもそれは後の祭り……
石田に俺の気持ちを伝えれないまま石田は死んでしまった。
高校に上がった俺は一年の初期に行われた『ホームルーム合宿』という一泊二日の研修旅行の夜に定番だがクラスで一番可愛いと思う女子の名前をあげるというルールの中で俺も仕方無しに『
まぁ、この時点では彼女の事は何も知らず、顔だけが好きなタイプということで名前をあげたのだが、何故か数名の男子に食いつかれ俺が拒否したにもかかわらず、そいつらが水井に『五十鈴が水井のことが好きらしいから付き合ってやって欲しい』と余計なお世話をやかれたのだ。
彼女に俺の気持ちが知られてしまった以上、このまま放っておくわけにもいかず、俺は渋々水井に返事を聞いたが、勿論答えは『ノー』であった。水井いわく、俺がどんな人間かも分からないし、やっぱり告白されるなら本人の口から言って欲しかったと……
俺からしても当然の理由だと思う。
というか俺の代わりに面白半分に水井に告白した奴等が許せないでいたと共に、理由はともあれフラれたというのは俺としても悔しい思いもあり、約半年かけて俺という人間を水井に知ってもらう為に、俺はクラスの中での行事などを頑張ったり、勇気を出して水井に話しかけたりしていた。
そして再度今度は俺から水井に告白をしたのだ。
水井の返事は『オッケー』ということで俺達はクリスマス前から付き合うことになる。
しかし数回のデートを重ねて行くうちにお互いの性格が分かるようになっていき、心の中で『俺達合わないのかな?』というような思いを持ち出していた。
俺は水井に振り向いて欲しいが為に努力したが、俺は水井の性格を知らないままに付き合いだしたのだから仕方が無いといえばそうなんだが……
水井に対しての『愛情』が薄れていく俺だったが、水井の方も俺に対する態度が初期の頃に比べれば冷たくなっているように感じていた。
その時、俺はこう思う。
これは近々水井の方から別れ話があるかもしれないな。
まぁ、俺から言うよりもその方が良いかもしれないな……
案の定、年が明けての二月、もうすぐ『バレンタインデー』という日に水井から電話があり泣きながらこう言ってきた。
『私達、もう別れましょう』
俺は水井にフラれてしまった。
フラれる覚悟はしていたが、やっぱり『初めての彼女』にフラれたのはショックだった。まして俺は水井には二度フラれたことになるからな……
こうして俺は『傷心』のまま二年生になったのだが、俺の凹んだ気持ちを癒してくれたのが同じクラスになった佐々木真由子だった。
一年の頃はクラスも違うし、バイトでは大塚や北川の友人としてしか見てなかったので大して会話もしていなかったが、佐々木以外みんなバイトを辞めてしまってからは状況が一変した。
同じ高校で唯一残った俺達二人……
お互いに自分から積極的に話をするようになったのだ。
会話をしてみると俺が最初にイメージしていた佐々木とは全然違い、とても優しくて思いやりのある子だということが分かった。
まだその時、俺は水井と付き合っていたので佐々木に対して『恋心』は無かったが、水井との付き合いに疲れ始めていた頃からはバイトで佐々木と会話をする時間だけが俺の癒しになっていたのは確かであった。
そして水井と別れ、佐々木と同じクラスになった二年からは今まで以上にお互いに親しく話す様になり、周りからも『二人は付き合っているのか?』と聞かれるくらいになっていったのだ。
ここで『この世界』で改めて高校生をやり直す俺として佐々木について幾つかのことおさらいしなければならない。
まず高校の頃の俺は大学に進学する気が無く就職希望だった事も有り勉強をあまりしていなかった。だから勿論、試験の結果は毎回、『欠点』だらけで『追試』を受けなければいけない状態であった。
しかし佐々木は俺よりも更に勉強が出来ないでいた。俺よりも『欠点』の教科も多く、二年に上がれたのも本人いわく、『奇跡』だったらしい。なので勿論、二年の三学期の頃、このままでは確実に三年には上がれない事が分かった佐々木は『留年』をする事は考えずに何の前触れもなく突然『中退』してしまったのだ。同時にバイトも辞めてしまう……
その前に俺はバイトの先輩である三田さんにある事を言われていた。
「五十鈴君はさぁ、
「えっ? そ、そんな……付き合うだなんて……そんな事は……思っていないですけど……」
「そうなんだぁ……じゃぁ、俺がマーコと付き合っても大丈夫なんだね?」
「えっ!? そっ、そうなんですか!? 三田さん、佐々木の事が好きだったんですか!? で、でも俺は大丈夫ですよ。俺の事は気にしないでください……」
「オッケー!! それを聞いて安心したよ。それじゃ、近々マーコに告白するから」
そして二人は付き合いだした。
この時の俺は気付かなかったが、どうも佐々木がバイトを辞めずにいたのは三田さんの事が好きだったからだろうと今なら納得がいく。
しかし、それ以上に俺は後悔をした。
何故、心の底から好きな佐々木に俺は想いを言えなかったのか……
何故、三田さんに聞かれた時に「俺も佐々木が好きです」と言えなかったのか……
理由は分かっていた。俺は初めて付き合った水井との破局があり自分に自信が持てなくなっていた。だから『恋愛に対して臆病』になっていたのだ。
佐々木にまでフラれてしまったら……
今の関係を崩したくない……
俺はそう思っていたので、とりあえず佐々木とは今まで通りの付き合いで良いと思っていた矢先の『中退』そして『バイト』も辞めてしまったので、俺はかなりのショックを受け心にぽっかり穴が空いた気持ちになり、何もやる気が起こらない状態であったことを今でもよく覚えている。
ちなみに俺と一緒にバイトをやり出した
「実はさぁ、今更だけど俺がバイトを辞めたのは佐々木にフラれたからなんだよ」
「えっ、そうなのか!?」
「ああ、五十鈴も知っていたとは思うけどあの時俺は大塚に好かれていたみたいなんだけどさ……でも俺は佐々木に一目ぼれしちゃってさ……で、告白したんだけどあっさりフラれちゃってさ……だから佐々木と一緒にバイトをするのもが気まずいし、大塚にも何だか申し訳無いしさぁ……それで俺が辞めることにしたんだよ……」
俺は羽田の話を聞いて自分が情けなくなった。
こいつは一目惚れだけで『告白』出来る勇気があるのに……
なんで俺はあれだけ佐々木の事が好きだったのに想いを伝える勇気が持てなかったのだろうか……本当に自分自身に嫌気がさし、この気持ちが数年続くことになってしまう。
果たして『この世界』の俺の高校生活三年間はどうなるのだろうか?
一つ言えるのは『この世界』での俺は佐々木のことを想う必要は無いし、好きになることもきっと無いだろう……
俺は『つねちゃん』のことを思い続け、十八歳になった時に『プロポーズ』をする。
その事だけを俺は想い続け、いくらこれからどんな『試練』があっても『本気』で取り組んでそれを乗り越えて、そして高校生活を『普通』に送るだけでいいんだ。
「もしもし? 隆君、どうかしたの? 先生の声、聞こえているかな?」
「えっ? あっ、ゴメン……ちゃんと聞こえているよ……」
「なら良いんだけど……それで高校生になった気分はどう?」
「うーん、そうだなぁ……『本気の本気』で頑張ろうっていう気分かな……」
「フフ、『本気の本気』って……昔から隆君は何事にも『本気』というか『全力』で頑張ってきていたのは先生よく知っているけど……もう少し肩の力を抜いても良いんじゃないかなぁ? せっかくの高校生活なんだし、エンジョイして欲しいなぁ……」
「有難う、つねちゃん……そうだね、エンジョイ出来るように俺、頑張るよ……」
「だからぁ、頑張らなくてもいいんだってば……」
俺は『つねちゃん』のとても優しい声を聞き、心が癒されたと同時に得体のしれない『モヤモヤ感』が消えて行くのであった。
やはり俺にはこの人しかいない……
だから俺は『この世界』にタイムリープしてきたんだ。
愛してるよ。つねちゃん……
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『この世界』での隆の高校生生活は一体どんなものになるのでしょう?
『好きにはならない』と思っている佐々木を目の前にした時、隆は本当に『好き』という感情は芽生えないのか?
今まで少しだけではあるが『未来』は変化している。
高校生である隆の『未来』は今後どうなっていくのでしょう?
次回もどうぞお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます