第63話 初恋の人の将来の相手?
五月……今日からゴールデンウイークだ。
俺はこの数年、このゴールデンウイークには縁がある。
というのもこの時期によく『つねちゃん』と会っているという事だ。
そして今年も俺は『つねちゃん』と『デート』をする約束をしている。
俺は『デート』だと思っているが『つねちゃん』の方は俺と一緒に出掛ける事を『デート』と思ってくれているのかは微妙なんだが……
それでも俺は『つねちゃん』と二人っきりで一緒に出掛けられるだけで幸せな気分だ。
「隆君、今日は久しぶりの『デート』だね? 先生、朝からとってもワクワクしていたわ」
先ほどの俺の呟きは撤回する。
『つねちゃん』も『デート』と認識してくれているみたいだ。
俺は嬉し過ぎてもう死んでも良いくらいだ!!
いや、死んでいる場合じゃ無いよな!!
俺達の人生はこれからなんだ。
それにまだ俺は正式に『つねちゃん』にプロポーズをしていないんだから……
「それで今日はどこに行くの?」
「そうねぇ……最近隆君は『あの遊園地』に行くのは嫌みたいだし……どこが良いかなぁ? 隆君は行ってみたいところは無いのかな?」
正直、俺は『つねちゃん』と一緒に出掛けられるならどこだって良いんだ。
それに俺は『遊園地』が嫌な訳でも無い。
なんてったってアクシデントとはいえ俺と『つねちゃん』が初めて『キス』をしたところだからな。嫌なはずがない……
というか、俺にとって『あの遊園地』は『聖地』みたいなものになっている。
まぁ、高校生になれば俺はその『聖地』で三年間もアルバイトをする事になるんだけどな。
まぁ俺が『遊園地』に行く事を拒んでいるのには別の理由があるんだ……
今はその理由を『つねちゃん』に言う時期じゃ無いと思っているだけだ。
「つねちゃん、それじゃ今日は『青葉緑地公園』に行ってみない? それでさ、そこで『バーベキュー』をやろうよ……」
実は『前の世界』の俺は友人達とよく『バーベキュー』をしていた。ほとんどの『バーベキューセット』を持っているくらいに好きだった。
どちらかといえば『インドア派』の俺が何故かよく分からないが『バーベキュー』をする事だけは好きだったのだ。
「えっ? バーベキュー……??」
そういえば『この時代』って『前の世界』の頃に比べたら、あまり『バーベキュー』をするのは流行っていなかったかな? たしか俺が成人した頃くらいに世の中の人達がバーベキューの道具を購入する様になって家族や友人達と『バーベキュー』をやるようになったんだっけか……?
「い……嫌なら別に他のところでもいいんだけど……」
「うううん、全然嫌じゃ無いわよ。まさか隆君の口から『バーベキュー』って言葉が出てくると思わなかったから先生、少し驚いただけなの。実はねぇ隆君……先生こう見えて『バーベキュー』大好きなのよ」
俺は驚いた。
まさか『つねちゃん』も俺と同じ『バーベキュー好き』だったとは……
『卓球』といい『バーベキュー』といい、俺達二人はなんて趣味がピッタリなんだろうか? どう考えたって『相性バッチリ』じゃないか!!
俺は嬉しさのあまり心の中で飛び跳ねている。
でもその気持ちを表には出さない様に努力した。
まぁ、恥ずかしいからな……
「つねちゃんが『バーベキュー好き』って意外だね? 俺、驚いたよ……」
「フフ、そうでしょうねぇ……女の私がまさかそういった事が好きだなんて誰も思わないかもしれないわね。でもうちは昔から両親が『バーベキュー好き』で先生が小さい時から結構『バーベキュー』をやっていたのよ。だから自然と好きになったというか……でも最近は仕事が忙しいからというよりも私みたいな『バーベキュー好き』が周りにいなかったという事もあって全然やっていなかったし……それがまさか隆君から『バーベキュー』をやろうって言ってくれるなんて……先生、とっても嬉しくて嬉しくて……」
『つねちゃん』は本当に嬉しそうである。
今まで見せた笑顔以上の満面の笑顔で喜んでいる。
そんな『つねちゃん』を見て俺も最高に嬉しかった。
「でも今日はバーベキューの道具は公園で借りた方がいいかもね……?」
「そうね。その方が楽だしね……。それじゃ今から近くのスーパーに食材を買いに行きましょう!!」
「うっ、うん!!」
【青葉緑地公園内】
「うわぁああ、ここの公園も久しぶりだわぁ!! 緑がとても綺麗ねぇ!!」
『つねちゃん』はまるで『少女』の様にはしゃいでいる。
「俺も小学生の時に『遠足』で来た以来だよ。それにゴールデンウイークだから人も凄く多いよね?」
「そうね。早く『バーベキュー会場』に行きましょうか? 今日はバーベキューセットが無いから『有料のバーベキュー会場』を借りなきゃいけないし……」
「そうだね。急いで早歩きで行かないと……」
「だめよ、隆君。隆君は凄い量の荷物を持っているんだから、そんな無理しちゃだめよ」
男の俺が荷物を持つのは当然だが、『凄い量』の食材や飲み物を買ったのは『つねちゃん』なんだけどなぁぁ。俺があれだけ二人で食べる量にしたら多すぎるって言ったのにさ……
でも俺は『つねちゃん』とのこんなたわいもない会話が心地良くて仕方が無い。
そして俺が心地良い気分で『バーベキュー会場』に行こうとした矢先、俺達に誰かが声をかけてきた。
「あれ? 隆君に香織先輩じゃない!?」
こっ……この声は!?
「しっ、志保姉ちゃん!? な、何でこんな所に!?」
そして志保姉ちゃんの横には見た事の無い男性が立っている。
俺と同じく大量の荷物を持って……
「私達今日は二人共予定が空いていてさ、暇同士だったから暇つぶしにここの『バーベキュー会場』で『バーベキュー』でもしよっかって事になったのよ」
志保姉ちゃんがそう言うと横にいた男性が笑顔で俺に話しかけてきた。
「もしかして君が『五十鈴隆君』?」
「は、はい、そうです……」
俺が少し緊張した声で返事をすると引き続き俺に何か言ってくると思ったが、その男性は何故かスルーをして『つねちゃん』に話しかける。
「お久しぶりです、香織先輩!!」
そう言われた『つねちゃん』の顔はとても困惑気味である。
そして俺の顔を横眼にチラチラと見ながらとても申し訳無い様な表情をしている。
も、もしかして、この人は……
「ひ、久しぶりね……山本君……」
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『つねちゃん』との楽しい『デート』になるはずだった隆達の前に志保と謎の男性が!? そして『つねちゃん』が口に出した名前は……『山本君』……
遂に隆が『前の世界』に逆戻りをするきっかけを作った男が目の前に現れた。
隆はどうする? そして『つねちゃん』は!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます