霜を踏み躙るもの15

対面するは不孝さん、まずはお互い探り合いからです。と言っても魔法を持たない私は不孝さんに対しての有効打が少ない以上、初手はパス。不孝さんの初手は何やら全身を粟立てています。



「あー、分身ですか」



「分身をそんなに沢山出せてたまるか、これは分体だ」



あれ、3体までしか分身出来ないんでしょうか。只のショゴスである私が9体分身までできる以上、2桁は分身するものと思っていたのですが。ちなみに分体というのは自動操縦の肉片、ぶっちゃけ分身の下位互換みたいなものです。一度だけ使ってみたのですが搭載しているAIの性能が微妙だったので個人的評価は産廃、おそらく二度と使うことは無いでしょう。



そんなことを考えているうちに不孝さんの身体にできた泡沫が弾け、中から大量の分体が生まれました。いや待ってください、それって……



「ショゴス型、以外の分体……!」



小型恐竜や機械系、ナメクジや見覚えのあるダンゴムシ等様々な分体が私に殺到します。あー、メタい話になりますけどボス戦っぽくてわくわくしてきましたね! というか、これなら確かに分体を使う意味もあるかもしれません。私の時はショゴス型以外の分体を作れなかった以上何か条件があるんでしょう。



「よっ、ほっ、アッパー!」



真っ先に突っ込んできた小型恐竜の嚙みつきを横ステップで回避、そのまま右向け右して顎を蹴り上げます。いい手ごたえ、ショゴス由来の分体ですが物理攻撃が通るみたいですね。頭の吹き飛んだ小型恐竜はそのまま溶けて消えてしまいます。



「なるほど、ショゴスとしての特性は消えるんですね」



それはいい知らせなんですが、嫌な予感がします。と、次の瞬間その予感が現実となりました。



「あっぶな! ……ですよねー」



ナメクジ型分体と対峙していると、後方で何やらチカッと光るものが見えました。嫌な予感がしたため前方へ跳躍。瞬間、先ほどまで私がいた地点をレーザーのようなものが通過しナメクジ型分体を貫きます。どうやらショゴス特性の代わりに得たものがあるようです。っていうか、ちょっと待ってください!



「ズルいでしょうよそれは!」



レーザー攻撃が有効と見たのか十数体ほどいた機械型分体が異様なほどの高機動とともに一斉にレーザーを乱射してきました。幸い射角がそこまででもないため上が安地……前言撤回、短時間とは言え彼らどうやら飛びやがるようです。しかもそのまま空中で無防備なところを攻撃してきました。



「舐、める、なぁぁぁぁあああ!」



足を伸長させて飛行中の分体を殴打、その勢いを利用してレーザーを回避。さらに回避した先の分体を背負い投げの要領で下へ投げ追い打ちのレーザーを相殺します。レーザーに貫かれ爆散した分体を目隠しに地上の分体へ接近、捕捉される前に各個撃破し……っと回避ィ! 煙幕を突き破って飛んできたレーザーを回避します。



「ピピピピピッ……」



「え、もしかしてレーザーとホバー機能に飽き足らずレーダーまで搭載してます?」



何ですかこのぶっ壊れモンスター! どう考えてもボス戦の雑魚mobとして出てくるような性能していないでしょう! 文句を言っている間にも私の元にレーザーが殺到します。あーもう、やってやりますよチクショー!


取り合えずレーダーが何を探知しているか考えます。あの爆発の中です、視覚や熱じゃないのは間違いないでしょう。爆散した機械分体の破片や爆風が疑似的に飽和チャフやフレアのような役割を果たしていたため、電波や赤外線の線も薄いです。となると……



「なるほど分からないですね」



結構物知りな自負はありますが、別に専門家みたいな知識があるわけじゃありませんしここは素直に諦めるとしましょう。とは言え、あのレーダーを攻略しないと勝ちの目が薄いのも事実です。さてどうしたものか……。

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