霜を踏み躙るもの12


それにしても長いこと手入れがされていないのか酷い臭いです。おそらくここらにある肉片はほとんど腐ってしまっているのでしょう。腐っていなければ片端から食べてレベリングができたと思うと少し残念……いえ、食べずに済んだのでむしろラッキーと言うべきでしょうか? あ、ガラス筒のふちに何か書いてありますね。何々、「佐比売党 サンプル#8」……?



「ここ、くっさいですね!」



「ああ、なんでそんなに元気なのかは知らんがひでぇ臭いなのには同意だな」



お二人も同じことを思っていたのか、あたりの臭いに対して苦言を呈します。あ、もしかして先ほどのドロップはこのためなのでは?



「んー、丁度いいですしこれ使いますか」



インベントリから鋭角界(ティンダロス)の芳香を取り出し使用すると、あたりにフローラルな香りが漂い始めました。



……。



「なんていうか、腐敗臭と混ざって、こう……」



「倒錯的な雰囲気すらあるな」



「これはこれでくっさいですね!」



腐った肉の臭いと甘ったるい芳香が混ざり合った結果、得も言われぬ噎せ返るような臭気になったようです。実際に嗅いだことがあるわけではないですが、なんとなくラフレシアが連想されます。臭いについては諦めたほうがいいかもしれません。



「取り合えず一度臭いについては置いといて、新しいエリアに来たことですし探索しましょうか。という事で各自自由行動!」



散ッ!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一通り見て回ったところ奥に巨大な扉が見つかりました。そのほか様々な資料も出てきましたが、私たちはそれらを鑑みて「今の私たちには理解できない」という結論に至ります。


「佐比売党」なる団体とともに頻出する東雲霊峰という人物。


ショゴス種と電人の秘儀。


人造クトーニアン計画。


東雲霊峰、これはおそらくエイブラハムの言っていた「レイホウ」とやらでしょう。電人の秘儀は王首領さんがいつかのシナリオ報酬で貰ってましたね。人造クトーニアンはそのシナリオに出てきた少女です。


佐比売党は今回のシナリオが初出。ショゴス種はショゴスという「種族」のことかと思いましたが英語で"race"ではなく"seed"と表記されていたあたり「ショゴスの種たね」という意味のようです。


聞き覚えのある単語もいくつかありますがそれぞれの単語の関係性が不明瞭であり、背後関係がはっきりしません。どうやらこの佐比売党とやらが裏でこそこそしていたようなのですが具体的に何をしていたのかサッパリです。



「お二人は何か気付いたことは……」



「あ? 銃以外のことでお前が気づけないことに俺が気づくわけないだろ」



「何もないですっ」



ですよね。



「じゃあ進みますか」



目の前の扉を開けます。これは……鉄、でしょうか? 随分錆びています。はてさて人がいるところに着きましたかね?


……既視感?


扉の奥からは生臭い匂いと瘴気のようなものが溢れてきます。







『ミリオン・モンスター:永久とこしえに不孝をなすものに遭遇しました』







……そうきましたか。







―――――――――――――――――――――――――――

短くてごめんなさい。第4話と同じ終わり方にしたかったんです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る