霜を踏み躙るもの10
ティンダロスの猟犬・ドロップアイテム
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角張った完全球
分類:アクセサリ
効果:秩序値上昇(小)
人知の到達しえない完全なる"球"。ひび割れてなお形を保つそれは、装備者に完全の一端を授ける。
蒼白い血
分類:素材
ティンダロスの住人が纏う臭いの根源。悪夢を煮詰めたとも称され、しかしたしかに完全と深淵の繋がりを人に思い出させる。
分類:素材
鋭く、而して滑らかなる角。あるいはその先端は思うがままに歪む。突くも突かぬも、お前次第だ。
分類:アイテム
効果:周囲の生物に対し催眠導入(中)とPOW低下(小)を付与する
ティンダロスの住人の纏う腐臭、その要素の1つ。甘く蠱惑的な香りを放つそれは、薔薇によくにている。
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情緒がどうとか騒ぐチャッカマンさんを尻目に、猟犬のドロップアイテムを確認します。意外とチャッカマンさんはそういうの気にするんですね。
まずはこのひび割れだらけの球体です。一見するとただのガラス球ですが、中のひび割れがどの角度から見ても同じ形に見えます。なんかあれですね、モナリザ効果みたいです。どこから見ても目が合う的な。効果としては……うーん? とりあえず装備してみましょう。
「んん?」
「ん? どうした」
「いえ、このアクセサリを装備してみようかと思ったんですが、弾かれてしまいまして」
「先輩、どんな効果なんですか?」
「秩序値上昇(小)だって。そもそも秩序値が何かわからないから取り合えず装備してみようかと思ったんだけど……」
「どれ、貸してみ」
横から手を伸ばしたチャッカマンさんが球体をひょいとつまみます。しばらく虚空を見つめていたのはアクセサリスロットを弄っていたからでしょうか。
「ん、んー……あぁ、これ異形度が上がってるな。
ミッドナイト……? ……あぁ、前にトーカが言ってた夢魔法ですか。確かSAN値と異形度を参照するとかなんとか。
「つまり、仮称異形度は正式には秩序値と呼ばれるステータスということですか」
「みっともないどりぃむって何ですか?」
「ミッドナイトメアとドゥームズデイ・ドリームね。というか使えないの?」
チャッカマンさんに補足してもらいつつ、夢魔法の概要を説明します。ラピスの種族は人間、異形度もとい秩序値が低い以上彼女も夢魔法が使えるはずです。
「……あっ!」
「どうした?」
「聖者のスキルに〈聖邪〉ってのがあるんですけど、その効果に秩序値上昇(極大)ってありました!」
「忘れてたの?」
「いえ、今までは[情報規制]になってました!」
「ってことは秩序値の存在を知ったことで効果が開示されたと考えるのが自然かな」
恐らく秩序値がカンストしている私とラピスには必要ないですね。誰かにあげちゃいましょう。それから……血と角は素材だから置いておくとして、あとは芳香ですか。ツッコミを入れたら負けなのかもしれませんが、何でドロップ品が瓶詰めなんでしょう?
「思ったより固いですね……よし、開きました」
瞬間、フローラルで甘い香りがフワッと広がります。
「なんだぁ? この甘ったるい匂いは」
「フレーバー的には猟犬の臭いの構成要素の1つらしいですけど」
「はぁぁああ、これがあれの素ねぇ……これ自体はいい匂いなのにな」
「きっとあれですよ! 船頭多くして弘法の川流れ? です!」
「ラピス、テスト範囲のことわざ合体させてまとめて憶えたでしょ」
「え! なんでわかったんですか!?」
「わからいでか」
なんたってうちの十華がテスト前によくやってますから。
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「さて、これで屋敷は大体見て回ったわけですが」
「爺さんの言ってた怪物っぽいのは何処にもいなかったな」
「どこにいっちゃったんでしょう?」
「クトゥルフ神話で黒幕やら怪物やらがいる場所なんて1つですよ」
「……地下か」
もしくは屋根裏ですね。1階と2階の間取りを比べたとき、明らかに無駄な空間があるので恐らくそこでしょう。
私たち3人は地下への入り口を探し、階下へと向かいました。
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