霜を踏み躙るもの3


肉醜塊グロブスター

それは、この世界においてスライムの1種とされているものだ。その発生原理はよくわかっておらず、ある時突然出現する。戦闘力は多種と同様に低く、大人であればまず負けることは無いだろう。ある学者がこの発生原理不明の生物の根元を辿ろうと、肉醜塊を解剖したことがある。どこが口でどこが腹かも分からないような生物の解剖は困難を極めたが、確かな発見も得られた。すなわち、この生物は様々な生き物の組織によって構成されており、その発生を辿るのは不可能に近い、という事実を発見したのだ。

そんな肉醜塊にはある伝説がある。曰く、肉醜塊は全ての生物の祖であり、その中には我々を新たなステージへと導いてくれるものがいるというのだ。ただ、この伝説を証明するものは何一つとして残ってはいない。

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「……っていう鑑定結果で、残りは鑑定不能でした」



「フレーバーだけだね」



「ですね」



どうやらラピスではLv不足で鑑定できないようです。Lv99のラピスが鑑定できない以上、リトルマザーとやらのレベルは3桁確定。少々部が悪いかも知れません。


というよりこれ、どう考えてもリトルマザーがその伝説の肉醜塊ですよね。そしてその伝説の内容的に考えて……



「成る程、レベル上限開放ですか」



「あぁ! 成る程、そういうことだったんですね!」



……いや、マジックラフト社よ。レベル上限開放の手段が推定レアモンスターの討伐ってどうなんだ。運の悪い人はいつまでもLv99とかになりかねませんよ。



「……先輩」



「ん?」



「その……こ、これと一緒に戦って貰ってもいいですか?」



その上目使いはわざとですか。スゴい可愛いです。



「もっちろん。後輩の頼みを聞けなくて先輩面なんてできないからね。それに、私だって戦ってみたいし」



分が悪い? ゲームで分の悪さなんか気にしてたら身動きとれなくなっちゃいますよ。











「いやきっつ」



正直ここまでキツいとは思っていませんでした。いえ、別に負けそうとかそういう訳じゃないんですが……。



「先輩、次行けます!」



「おっけーやったれ!」



「<罪無き投石>!」



スキルエフェクトを纏った木片が、放物線を描いてリトルマザーの肉体に喰い込みます。リトルマザーは一瞬たじろぎましたが、再びタンクを張っている私へと攻撃を始めます。

ラピスの使っているスキル<罪無き投石>は装甲、耐性を無視して対象に固定値20のダメージを与えるスキルです。さらに、このスキルによるキルは<反魂半魂アッド・バイム>などの条件に抵触しません。ちなみに、ラピスの持つ唯一の攻撃手段でもあります。


そして、何故高火力を通り越してバ火力アタッカーの私が攻撃に参加していないかというと……



「くっ、見た目から物理無効は分かりますがPOWまで高いってどうなってるんですか……!」



「次行きます!」



「やったれやったれ!」



そう、リトルマザーは物理無効且つ高POWという私にとって相性最悪の敵だったのです。魔法を持っておらず、相手のPOWによって成功率の大きく変わる魔術しか持っていない私では、どうあがいても1ダメージすら与えることができません。

さらに酷かったのが、リトルマザーは物理攻撃しか行わず、ヘイトはもっとも近くにいるものに固定されていることです。コロナvsリトルマザー、ダメージ無き泥沼の闘いがここに勃発しました。



「次行けます!」



「やっちゃえ!」



要するに、ショゴスの形態の私とリトルマザーが喰らい合う地獄絵図の中、相手のHPが確認できない以上いつ終わるとも知れない投石を繰り返すラピス、という画が長時間に渡って繰り広げられることになるということです。ちなみに既に2時間経っています。チャッカマンさんが戻ってきていないのが不思議なくらいです。



「次行きます!」



「Go!」








~3時間後~


「~~~っ、終わったーっ!」



「やりましたね!あ、Lv100になってます!」



遂に、遂にリトルマザーを討伐しました。まさか3時間も肉塊に揉まれ続けることになるとは。百音式並列思考術四十八番を活用してなおツラい戦いでした。3時間石を投げ続けていただけのラピスが元気いっぱいなのが信じられません。



「よう、タマ見つけてきたぜ。それはそうと、いきなりレベルが100になったんだが、なんか倒したのか?」



「」



「は!? ちょ、おい、待て。お前は何に怒ってるんだ!?」



「灰は灰にって知ってます?」



「おい、話を聞け! な? あ、ぐ、ぐぶぉあ!」



天誅!







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