霜を踏み躙るもの2



「あー、あー、皆さん聞こえていらっしゃるでしょうか? 私コロナは今、雪と氷の世界におります。気温は体感でおよそ-20℃、辺り一面ほぼ雪景色です」



「何やってんだ?」



「いや、テレビでこういうのよくあるじゃないですか」



「そんなことしてる場合か?」



「先輩はテレキャスターも似合うと思います!」



「あーっと、ラピスちゃん、でいいのかな? こいつのこと全肯定するのやめてくれない? 歯止め効かなくなるから。自分で言うのもなんだけど俺がツッコミに回らなきゃいけないって相当な自由人だぞ」



「私が先輩を疑うわけないじゃないですか」



「Oh...」



上を見上げれば、降り頻る雪とは裏腹に快晴。辺りを見渡せば白銀の世界が広がっています。そう、私たちが飛ばされた先は南極もかくやというほどに冷たい場所でした。



「なぁコロナ、巫山戯るのもいいがそろそろ真面目に出る方法考えるぞ。弾丸が残り少ねぇんだ。弾丸欠乏症で死んじまう」



「わーっ!!!」



「あっ、私もご一緒しますっ、わーっ!!!」



「ほんっとに自由人だな!?」



いや、積もりたての雪見たら飛び込みたくなるじゃないですか。リアルじゃ風邪待ったなしだからできないんですよ。



「さて、取り敢えずはあの家を調べてみましょうか。」



私たちの目の前には木製の洋館がポツンと建っています。明らかに「入ってくれ」と言わんばかりに玄関扉が開きっぱなしです。



「……うん、え? 倒れたまま話し出すの?」



「起き上がる時間が勿体ないです」



「倒れなきゃいいんじゃねぇかな……」



「家のなかに銃火器もあるかもですよ?」



「よし急ぐぞ、指揮を執ってくれコロナ」



うん、扱いがわかってきました。と言うか一連のツッコミを聞く限り銃関係以外だと案外マトモな人ですね。



「んー、じゃあ作戦立案。作戦名「|正面から突っ込む(威力偵察)」」



「作戦概要は?」



「正面から突っ込む、以上!」



突撃ぃーっっっ!!!














はい、特に何も待ち構えてはいませんでした。普通に玄関です。

ただ、明かりが乏しく若干視界は不明瞭ですね。プレイヤーは明度補正がありますが、NPC視点だと真っ暗かもしれないレベルです。



「さて、今回のシナリオのクリア条件は分かりやすくていいですね。怪物、メタい言い方をすればボスの討伐=シナリオクリアです」



「! あっちからチャカの匂いがする!」



ダダダダダダッ!


突然叫ぶとチャッカマンさんは、階段を上がって2階へと走り去っていきました。



「……」



「……」



「……二人で攻略しよっか」



「先輩と二人……大歓迎です!」



「それは良かった」



見た感じは一般的な洋風の豪邸といった感じです。全体的に荒れ果てており、床には血の足跡がついていることを除けば、ですが。



「んー、ラピス」



「りょーかいですっ、《エリアサーチ》! ……結構な数の敵さんがいますよ。多分歩き回ってます」



成る程、足跡はエネミーの徘徊した跡ですか。……足跡で殆ど元の床が見えない辺り、相当数いるのでは?



「ありがと」



「いえいえ!」



いやぁ、斥候役がいると便利ですね。特に索敵と工作が。因みにラピスの職業ですが、メインが「聖者」でバフの塊、サブが「諜報」でデバフの塊です。完全なサポートキャラですね。しかも

【反魂半魂(アッド・バイム)】を保持している関係上、攻撃手段を1つしか持ち合わせていないという。



「あっ先輩、一体こっちに来ます!」



「りょーかい」



ぺたり べちゃ ずる ずる



ぺたり べちゃ ずる ずる



水気を多く含んだものを叩きつけるような、雑巾か何かを引きずるような音と共にそれはやって来ました。

ヌラヌラと厭らしく光を反射する肉塊。

醜悪な臭いと悪辣な姿はまるで子供の悪夢ゆめを体現したかのようで。






『Danger!』


『ヴァージンモンスター:肉醜塊グロブスター・リトルマザーに遭遇しました』


『称号[発見者ウィットネス:肉醜塊]を獲得しました』






今日1日にイベント集中しすぎでは???

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