ソロンの街に、さよならバイバイ♪



「もっと食べたい」クリアから数日。


所詮は第1の街のクエスト報酬というべきか、特筆すべき点もないほどの渋さに私は1つの決断をしました。



そろそろソロンの街を出ましょう。



そもそも別に何かしらの制限があるわけでもなし、さっさと進めばよかったのです。ただ、その……こう、ずっと同じところに留まってたので愛着が湧いたといいますか、「絶対動かねぇ」というある種の意地みたいなものが生まれたといいますか……。


……あー、うん、とにかく行きましょう!可愛い後輩との「約束」もあることですしね。


と言うわけでやって参りました、第1フィールド「腐敗した聖域跡地」。ずいぶんと久しぶりな気がします。


おや、だんごむしさんもご無沙汰ですね。はい、ドーン。


ドロップを流し見しつつ、ボス戦について確認します。

まず、モンスタのボス戦は基本的に1体に対し1パーティまでしか挑めません。因みにモンスタのパーティは上限8人です。


次に、ボスの強さは人数、種族、レベルによって変動します。つまりLv99ショゴス10人で挑めば地獄が見られるということです。


そして最後にモンスタにおけるボス戦最大の特徴。それは既クリアのPLがいると難易度がバグ過ぎる上がり方をするためキャリーが不可能に近いということです。検証班によるとステータスが平均して3~4倍になっているとのこと。殺意が高すぎて殺意が湧いてきますね。


悪辣な運営についてはともかく、下2つの理由から今回のボス戦はソロ討伐です。


因みに「腐敗した聖域跡地」のボス「スクラップ・ヒュージボア」は物理攻撃しか持っていません。











「まぁ、そうなりますよね」



機械片で構成された巨蛇が崩れ落ちる。無機物故に声はなく、されどその身体は軋み断末魔を上げた。



『フィールドボス:スクラップ・ヒュージボアを討伐しました』



『ドロップアイテム:スクラップ・ヒュージボアの光輪核×1、破損した先史遺産×2先史機械片×5』



『第2街:デュオニュソに到達しました』



うーん、酷いものを見ました。物理無効のショゴスと完全物理のスクラップ・ヒュージボア。一方的展開ワンサイドゲームと呼ぶのも生温いほどにボコボコのボコにしてしまったため、若干の憐憫を感じないでもありませんが、ならこんなボスと種族を作るなと言う話です。


結論、私は悪くない。それはそうとして……。



「さて、次の街に行きますか」



……いやだってここの街、渋いことで有名なんですもん。ソロンより狭い、トリボニアやカルティヌスよりショボいとなんであるのかよく分からない街なんですよ。


デュオニュソとトリボニア、カルティヌスの間には2種類のフィールドがあり、PLはどちらか一方を通ることで行き来することができます。


1つ目は「四顧寥廓の汚水帯」。デュオニュソとトリボニアの間の遮蔽物の少ない湿地帯です。湿地は全て汚水で構成されており、長く浸かっていると毒のスタック値が溜まります。足場も悪いため、軽戦士殺しなフィールドです。


2つ目は「澱みの大神林」。デュオニュソとカルティヌスを繋ぐ森林地帯です。常に澱んだ霧が漂っており、挙動遅滞のデバフがかかります。


因みに今回は向かっているのは四顧寥廓の汚水帯です。そこで彼女と落ち合うことになっています。



「……ん、着きましたか」



うーん、うっすらドブ臭いです。その辺りは再現しなくてもいいと言うのに……。


お、モンスターがいましたよ。ダンゴムシの次はムカデですか。



『スウェイジピードLv23』



「スウェイジピード……汚水ムカデ、でしょうか?」



なんともドストレートなネーミングです。英語にしたからといって誤魔化せると思ったら大間違いですよ。



「はい、ドーン」



うーん、なんとも。流石に未だにワンパンですか。こうなるとエイブラハムがどれだけ硬かったかよく分かりますね。しかしこうなると2ボスも余裕そうですし、直ぐにいってしまってもいいかもです。











『フィールドボス:テンタクル・ポリューティングを討伐しました』



『ドロップアイテム:汚水×16』



『第3街:トリボニアに到達しました』



「あ”ぁぁぁぁ!」



クソボス! クソボスですよこれは! 汚水は掛けてくるわ、粘液でヌルヌルの体で絡み付いてくるわ、殴るとタコとスライムとホルモンを混ぜたみたいな感触がするわ……。オマケにドロップ! 汚水×16!? 割りに合いませんよ! このボスをデザインした人は間違いなく性格がネジ曲がってます。戦うだけで不快になる上に、体力が矢鱈と多いので戦闘は長い、そして得られるものは汚水×16。



「絶ッッッ対に意見メール送ってやります」



心の荒んだ私は、辺りのモンスターを手当たり次第に潰してから、街へ進みます。お、ポリューテッド・ディープ。確かレアエネミーですね、ドーン。



その後一頻り暴れるも心は荒んだままです。しかし、傷心の私はトリボニアに入り、女神に会いました。



「先輩、来てくれたんですね! ありがとうございます!」



「女神だ……」



「え?」



待ち合わせの相手……ラピスの目が点になりました。






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