第64話



昨日と同じく宿屋で目を覚ました私は、机の上に置いておいた繭の方を見てギョッとします。


そこには



「あ、お母さん!」



1人の少女……クラリス・ドートドーターが座っていました。


私が彼女を視認すると同時に、目の前にメッセージウィンドウが浮かびます。



『規定人数に達しました。ブランチシナリオ「白無垢の母」を開始します』



『装備の効果が解放されました。


────────────────


白無垢の仮面


・装備:頭


・VIT:0


・効果:装備解除不可


・効果:一定以下の狂気の影響を任意に遮断する


・効果:クトーニアンから自身の目を隠す


────────────────


シュド・メルの声が、迫る、響く、聞こえる』



ううん? え、あ、ちょ、えぇ?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


クラリス・ドートドーター入りガラス筒は停滞キューブに入ったまま、特に変わった様子もなし、と。


ふむ。



「えーっと、お母さんって私のことですか?」



「うん!」



混乱から立ち直った私は、取り敢えずこの子にいくつか質問することにしました。



「なんで私がお母さんなんですか?」



「? お母さんはお母さんだよ?」



あー、CoCあるあるの答えをどうもありがとう。これは何聞いてもあまり意味がない奴っぽいですね。



「……」



「……?」



いやこれどうしたらいいんでしょう?繭が無くなっている以上この子が人造クトーニアンなんでしょうが……人型、というかクラリスさん型なのが気になります。


それに、先ほどのシナリオ開始メッセージの「規定人数」という言葉。おそらく私以外にも同一シナリオの参加者がいるのでしょう。


……取り敢えず他参加者との合流を目指すとしましょうか。



「……ついてきますか?」



「うん!」



ついてくるんですか。ジッとしててくれ……ないですよねぇ。


チェックアウトをして宿から出て、まずは掲示板で情報を集めることにします。



「今のところ確認できた参加者は私を除いて2人、と。思ったより少ないですが……2人ともクラリスニアン連れてるんですか」



クラリスニアン×3。


うーん、良い予感が全くしないですね。幸いにも2人はソロンにいるようなので、今から会いに行ってみましょう。


最後の発言からして、どちらも畑にいるようです。


ついでにナリアの様子見でもしますかね。



「お母さん、なにしてるの?」



「ん? ちょっとした調べ物ですよ」



うーむ、どうにかして誰かに押し付けられないものでしょうか。碌でもないことに巻き込まれる未来しか見えません。


と、



「お」



畑まで道中、ある看板が目に留まります。



『ソロン衛兵舎』



……。



「すみませーん、迷子を拾ったんですがー!」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


いやー、スッキリ!

厄介ごと間違いなしの子供を追っ払うことに成功しましたよ!



「ふんふふーん♪ って、あれ? これもう畑に行かなくてもいいのでは?」



……まあ、ナリアの様子見だけでもしましょうか。



「そうと決ま



「お母さん、どうして置いてくの?」














ひえっ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る