第65話




「おかーさん♪」



「……」



「えっへへ〜♪」



「……」



……完全にホラーですよ。振り切ったと思って前向いたらそこにいる系のヤツです。いや、宇宙的恐怖:コズミックホラーなのでホラーなのは間違っちゃいないですが。


ホラー関係での「お母さん」って単語、なんだか得体の知れない怖さがありますよね。なんていうか、オーラがすごい。「お兄ちゃん」も同じくです。「お父さん」と「お姉ちゃん」はそうでもない。この違いは一体……。


いやいや、そうじゃありません。思考が脱線してます。今はこのクラリスニアンをどうするかです。


なんだか知らないうちに畑の近くまで来てますし、取り敢えずは当初の目的を果たすとしましょう。


少し先に見える人影は4つ。


グラサンの男性、目隠しをした女性、クラリスニアン、クラリスニアンです。


三つ子にしても異様なほどに同じ姿ですごい怖いですね。


掲示板で畑に向かっていることは伝えてありますし、取り敢えずPL2人に挨拶をしておきましょう。



「白無垢の母の方でしょうか?」



「ええ、そう……っててけりちゃん!?」



「ははぁ、まさかこんな有名人が来るとは」



「え、あ、はい。てけりちゃんことコロナ、種族はショゴスです。よろしくおねがいします」



毎度思うんですが、なんでそんなに驚くんでしょう? 同じゲームをしているわけですし、出会うこともあるでしょうに。


そんなことを考えていると、グラサンの男性から自己紹介に応じてくれました。



「フハハハハ、我は王首領、重人である。……ってことでよろしくおねがいします。ロールプレイの都合上失礼な発言もあるとは思いますが、スルーしていただければ結構です」



「私はミラ。種族はパンの子よ。よろしくね」



王首領さんの素とロールプレイとの温度差が……。



「で、こちらが人造クトーニアンですか」



「ええ、「妄執の朽ちた果て」で会ったの」



「で、あるな」



…? もしかして繭から孵したのって私だけだったりします?



「私は第1回イベントのポイント交換にあった「人造クトーニアンの繭」から羽化したんですが……」



「あら、そんなものあったかしら?」



「貴様の目は節穴か? 3万ptの欄にあったであろう」



「……ロールプレイって分かっててもムカつくわね」



「うっ、勘弁して下さい」



何が王首領さんをそこまでさせるんでしょう。ストレス発散でしょうか?



「まぁ、どこで会ったかはこの際置いておきましょう。彼女たちは私達を「母」として認識している、これであってますか?」



「ええ、出会い頭にお母さん呼ばわりされたわ」



「我が女に見えるとは、こやつも節穴である。」



あ、男の王首領さんも「お母さん」なんですね。……うん、やっぱり「お母さん」って響きは不気味な感じです。


ちなみに放置されているクラリスニアン達ですが、何やら畑の隅の暗い所に向かって話しています。


……って、え?



「あの………」



「?」



「我に何か用であるか?」



「あの子達、何もいない暗がりに向かって喋ってません?」



「「……」」



私がクラリスニアン達の方を指差して2人にそう告げると、2人は凍ったように動かなくなってしまいました。


数秒後、凍結から復帰した王首領さんが口を開きます。



「…で、あるな」



便利ですねその言葉。


クラリスニアン達の喋り声はボソボソと呟くようなもののため、聞き取りづらいですが、「うん、帰るよ」とか「大事にしてね、大事にするよ」とか言ってるのが聞こえます。


いやだから怖いって。






王首領、さて何と読むでしょう? 正解者いたら今日、若しくは明日は3回更新です(自分の首を絞めていくスタイル)

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