万を越える妄執とただ一つの願い13
短いけどこの回はこれだけでまとめたかったんだ、赦してくれ。
───何故。
エイブラハムの頭をそんな思考が走ったのは一瞬、即座に答えに辿り着く。
この少女の身体は不定形の軟泥に似ている。だとすれば、2つに分かれての分身に本体などはじめから存在しない。それは「分身」と言うよりも「分裂」と言うべきものだ。
ぬかった。
所詮はこの程度かと勝手に失望してしまった。
人間など、と。
多少他種族の力を手に入れた程度の人間が、と。
だがこのザマは何だ?追い詰められているのは自分では無いか。
あぁ、なんたる傲慢さよ。
人間の執念がどれほどのものか。
人間の執念は3万年を生きる化け物を生み出すほどのものであると、一番知っているのは自分だろうに。
申し訳ない。
そうだ、この少女に謝罪しよう。
謝罪の意を込めて───
「〈鬼嫐腐爆〉」
───今持てる力の全てをぶつけよう。
消えゆく蝋燭は、消え際が最もよく燃える。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
───来た。
コロナの脳裏をそんな思考が走ったのは一瞬、視界が暗転する。
ここに来ての新スキルは〈肉腐吹〉に似ていた。恐らく原理は肉腐吹と同じ、それを限界まで高めた圧力で放ったものだろう。さながら、引き絞った弓のように。
直ぐに視界が「明転」、コロナは笑った。
手負いの獣、やはり警戒して正解だった。
まだ何かあるはずだ、と。
「イタチの最後っ屁」を侮ってはならない、と。
それがこの結果だ。エイブラハムは相手を舐め、コロナは舐めなかった。
あぁ、戦いを終わらせる一刀がエイブラハムの胴部に吸い込まれるようにして向かっていく。
人間の執念がどれほどのものか。
ましてやそれが3万年も積み重なればどうなるか、それをコロナは知らない。
ならば最大限出来得る全てをぶつけるのみ。
こういう時、何というんだったか。
確か前世紀の傑作リプレイでは───
「遊んでくれてありがとう。それじゃあfarewell」
───直撃。
エイブラハムの身体が硬直し、崩れ落ちた。
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