第32話
「それでマイカ、どこ行く?」
「……私、初ログイン。行きたい場所あるほど、詳しいと思う?」
あぁ、それもそうですね。ですが……
「私もこの街のことよく知らないよ?」
いつだか街を見て回ろうとした時も、ゴアさんの発狂騒ぎで結局有耶無耶になりましたしね。
「……」
「……」
「……コロナ、この2週間、何してた」
「大体金策に走ってたね」
「……それで、所持金、じゃない所持トゥルは?」
「0トゥルだね」
だってデスペナ明けですから。
「……」
「……」
「……」
「……あー、えーっと……あ、そうだ種族何にした?」
「……誤魔化した」
「誤魔化してない」
ないったらない。
「……はぁ。人間を、選んだ」
「マイカも重人かぁ……」
重人の方がやけに多い気がしますね。やはり使いやすいのでしょうか?
「……重人?」
「うん、この世界だとそうやって呼ぶの」
「……へー」
さて、ショゴスの性質上街を利用する機会の少ない私と初ログインのマイカ。
……これはフィールドに行った方がいいかもですね。
そうマイカに伝えようとした私に、少々久し振りにも感じられる声が掛けられます。
「やっと見つけたぞ、てけりちゃん!」
「あ、プレーンさん。イベントぶりですね」
「「あ」じゃねぇぞ、「あ」じゃ!」
「……コロナ、謝って」
おかしな人ですね。どうしてあって早々こんなにも怒っているのでしょう?そしてマイカ、あなたは話も聞いていないのにどうして私が悪い前提なんですか。
「……どうせ、コロナが、何かしたに、決まってる」
「おぉ、よく分かってるじゃねぇか!」
「酷いですね、私が何をしたって言うんですか」
「ナイトゴーントに攫わせて、その上その醜態のスクショまで撮っただろうが!」
「……思ってたより、マシだった。」
「でしょう?」
「え"」
プレーンさんが喉の奥からカエルが潰れたような音を出しました。
何ですか、写真を撮ったくらいでピーピーと。どうせゲーム外には持っていけないんだからいいでしょうに。
「プレーンさん、細かいこと気にしてると禿げますよ?」
「……その程度のこと、いちいち気にしてたら、コロナとは付き合っていけない」
マイカ、ナイス援護射撃です。
正義は我にあり!
ジャスティスは勝ァつ!
「……おかしいのは、コロナ。けど、もう手遅れ」
「ちょ、マイカ!?」
マイカに背中から刺されました。
親友を裏切るなんて、君と言うやつは人の心というものが無いのかァ!
と、まあ御巫山戯はここまでにして。
プレーンさんは丁度いいタイミングに来てくれました。
「プレーンさん、あなたを生粋の重人と見込んで頼みがあります」
「随分唐突だな……。なんだ、金(トゥル)なら貸さないぞ。口先で丸め込まれて踏み倒されそうだからな」
「確かにお金はありませんが、そうじゃありません。ここにいるマイカに重人の心得みたいなものを教えて欲しいんです。というか、私が踏み倒しなんて非道いことするわけないでしょう」
ん? なんでしょう、ものすごく遠くの星の誰かに後ろ指をさされたような……。いえ、そんなわけありませんね、気のせいでしょう。
「……あぁ、確かにいちいち気にしてたらキリが無さそうだ。いいぜ、要するに重人プレイヤーとして知っておくべきことを教えればいいんだろ?」
「はい。」
「……よろしく、お願いします」
マイカと2人でプレーンさんに頭を下げます。
「おう、任せろ。まずはだな……」
こうしてプレーンさんの重人講座が始まりました。
まとめるとこんな感じですね。
・重人の初期能力値の最低値は4、最高値は27
・種族スキル/魔法を除き、全てのスキル/魔法が習得可能
・初期スキル/魔法は計10個
・レベルアップ時、ステータスポイントが手に入らない
・パッシブスキルか補助スキル/魔法を取らないと、他種族のステの暴力に晒される
こうしてみるとショゴスのステータスの異様さが際立ちますね。
ちなみに、プレーンさんは用事があるとかなんとかで、説明を終えてすぐ帰ってしまいました。どうやら何か予定があったです。引き留めてしまってちょっと申し訳ないですね。
それはそうと、マイカは初期スキル/魔法をどうしたのでしょう?
「……大丈夫、ちゃんと、パッシブスキルも、とった」
「見せて」
「……まぁ、いいけど」
────────────────
PN名:マイカ
Lv:1
種族:重人
所持トゥル:0トゥル
職業:双剣士
副業:無し
HP:280
MP:520
STR:38
CON:36
SIZ:9
DEX:54
APP:16
POW:52
AGI:54
TEC:54
VIT:8
LUC:260
スキル
・〈HP強化〉
・〈MP強化〉
・〈STR強化〉
・〈CON強化〉
・〈DEX強化〉
・〈POW強化〉
・〈AGI強化〉
・〈TEC強化〉
・〈VIT強化〉
・〈LUC強化〉
装備
頭:無し
右手:無し
左手:無し
胴:無し
脚:無し
足:無し
アクセサリ:無し
────────────────
「……マイカ」
「……ん」
「パッシブスキルもじゃなくて、パッシブスキルだけだよね?」
「……ん」
過ぎたるは及ばざるが如し、って知らないんでしょうか? いくらなんでもやりすぎてしょうに。
「……だ、大丈夫だと、思う、よ?」
「目を見て話せ」
これも一種の極振りと言えるんでしょうか……。
やはり、一度フィールドに出て戦闘してみるのが正解かも知れません。
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