第31話




日が沈むのを待ってウチへ帰った私は、夕食を作って十華と食卓についていました。



「お姉ちゃん、途中でログアウトしてたみたいだけど、どうしたの?」



「デスペナ」



「あぁ……」



おい、憐れむんじゃねぇ。



「エイブラハムってそんなに強かったの?」



「うん、あれはヤバイよ。瑠璃みたいに取り巻きに瞬殺されちゃった」



「え、イベントでダントツ1位のお姉ちゃんが瞬殺ってマジ!?」



「マジマジ」



「うへぇ……」



十華が露骨に顔を顰めます。いくつか対抗策を考えてはいるんですけどね。

まぁ、気持ちはわかりますが。



「そっちのレベリングはどうだったの?」



「今日だけで10レベから22レベまであがった! いやー、瑠璃ちゃんも爪上さんも強いね!」



「瑠璃は兎も角、爪上さんは腐ってもプロゲーマーだからね。腐っても」



レベリングが順調なようで何よりです。今日1日で私の2週間分のレベルアップを上回っているのは癪ですが。

……Xデーまで3週間ありますし、ショゴスを探しに行くのもありかも知れませんね。

ゴミ処理場に入れるならそれが一番なのですが……流石にイエローネームはちょっと。



「あ、そうだ。明日から舞香もモンスタ始めるってさ」



「へ? 加賀美先輩、まだ始めてなかったんだ?」



「宿題が終わってなかったからって」



「あー、そう言えば今年の高2の宿題はメッチャ多かったんだってね。お疲れ〜」



「?」



はて、十華は何を言っているのでしょう?



「……お姉ちゃんには関係なかったか。えっと、うん。気にしなくていいよ」



「……? そうですか」












夕食後、デスペナでログインできないため早めの就寝。1日経って今日は舞香とモンスタをする日です。


現在時刻は8時30分、少し早いですがログインしてしまうことにします。久し振りにステータス確認もしたいですしね。


というわけで早めにログインする旨を舞香に連絡し、モンスタにログインします。

さてさてステータスは、っと。

ちなみに誓約の恩恵はDEX、AGIの機動力ブッパです。イベント中、機動力不足を感じることが多々あったので。





────────────────


PN名:コロナ(33)

Lv:11

種族:ショゴス(捕食:通常9特殊1)

所持トゥル:0トゥル

職業:瀆神者 New!

副業:支配者 New!

HP:821

MP:741

STR:83

CON:62

SIZ:84(10)

DEX:10(13)

APP:ー(21)

POW:72

AGI:10(15)

TEC:7(9)

VIT:7

LUK:ー(276)

※()内は人間時

スキル

・〈ショゴス〉

・〈経験値取得不可〉

・〈魔法取得不可〉

・〈清掃Lv歪〉

・〈相喰嘲身〉

・〈餓鬼哀々〉


装備(人間時)

頭:白無垢の仮面

右手:叢雲

左手:無し

胴:アリエルの夜宴礼装

脚:アリエルの夜宴礼装

足:無し

アクセサリ:ヌトセ=カームブレのアミュレット


装備(真の姿)

・無し


称号

[初めての発狂]

[血縁喰らい]

[百万の恵まれたるものの継承候補]

[庭師のお気に入り]

[庭師との邂逅]

[初代ショゴスプレイヤー]

[狂気の体現者]

[アイドル]

[魔術師] New!

[色の支配者] New!

[外道] New!

[第1回イベント覇者] New!

[魔導図書館司書] New!

[狂気を飼い慣らすもの] New!

[白無垢の母] New!

[名状し難き誓約者] New!

[下克上] New!

[神に仇なすもの] New!


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「……」



なんだかステータス確認の度に同じような反応をしている気がしますが、気にしないことにします。それよりも気になることがありますので。


1つ目はレベルです。

何故か3つもレベルアップしています。いつの間に私はショゴスを食べたのでしょう?それも、3匹も。


2つ目は職業についてです。

瀆神者……なんて物騒な。メイドなんていう可愛らしい職業からどう派生したらこうなるのでしょうか?


────────────────


瀆神者

それは、神に仇なすもの。

一挙一動が神を侮辱し、一言一言が神を呪う言葉となる。


────────────────


しかも矢鱈と仰々しいフレーバーテキスト。私が何をしたというのでしょう。

副職も副職です。何ですか支配者って。そもそもそれは職業とは言わないでしょう。


────────────────


支配者

人の上に立つ者の証。他の者を蹴り落とし、踏みつけにしているからこその地位であることを忘れてはならない。


────────────────


いや、もう少し言い方あるでしょう。確かに支配者というか権力者なんてそんなのばっかですが……。


そして、最後に異様な数の称号。


────────────────


[魔術師]

魔術を自由自在に行使する者の証。

魔法など低俗。私は魔術に生きる。

効果:魔法習得率低下(大)、魔術行使時のコスト軽減(小)


[色の支配者]

宇宙からの色を飼い慣らす者の証。

嗚呼美しき色よ、貪り喰らえ。

効果:無し


[外道]

外道。

効果:無し


[第1回イベント覇者]

第1回イベント優勝者の証。

効果:[秘匿済]


[魔導図書館司書]

魔導書を大量に所持している者の証。

ようこそ、狂気の図書館へ。

効果:魔導書の研究、理解時の発狂率低下(微)


[狂気を飼い慣らすもの]

異形の存在を複数体配下に加えた証。

狂気に耐えて三流、狂気に慣れて二流、狂気を飼い慣らしてこそ一流。

効果:自身・配下と同種族に対するSANチェックがなくなる


[白無垢の母]

人造クトーニアンの保護者の証。

うがぁ、くぉるすぃ、ふたぐん。

効果:無し


[名状し難き誓約者]

ハスターと冒瀆的な誓約を結んだ者の証。

貴方は、間違った相手に魂を売った。

効果:無し


[下克上]

契約上、自身の上に立つ者に弓を引いた証。

力こそ全て。私こそ上に相応しい。

効果:ショゴスであれば支配者に転職する


[神に仇なすもの]

神に弓を引いた者の証。

神を呪い、神を貶め、神を蔑む。貴方は神の怒りを買った。

効果:瀆神者に転職する


────────────────


いくつかは身に覚えがありますが……下克上なんてどこで手に入れたんでしょう?



「っはぁぁあ〜……」



「……もn、コロナ、何してる。」



なんとも言えない感情のこもった溜息を吐く私に、後ろから声が掛けられます。



「あ、舞香……だよね?」



「……ん。こっちだと、マイカ」



「捻りなさすぎない?」



「……捻れば良いってものでも、ない。学名……フッ」



この野郎、鼻で嗤いやがりましたよ。


何がともあれ、私はモンスタ内で舞香……マイカと合流することに成功しました。





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