第1回突発オフ会3





「うーん、美味しい!」



「美味しいです!」



「うまっ、これどこのメーカーのルー?」



「自家製です」



「自家製!?」



「かっ……!? み、水をっ……!? ……っ!?」



約1名が口を押さえて悶絶していますが、どうやら概ね好評のようです。


どれどれ……うん、いい感じです、93点。調子に乗ってトウガラシを少し入れ過ぎたかもしれませんが、許容範囲でしょう。



「どこが少しだ、どこが! 口から火ィ吹くかと思ったぞ!?」



「あ、口に出てましたか。アポ無し訪問の罰だと思って甘んじて受け入れて下さい」



「ぐっ、それについては反省してなくもない」



その程度ですか。やはりトウガラシを追加して正解でしたね。


爪上さんに香辛料の配合比を聞かれたので紙に書いて渡します。



「なんで家に石臼がある前提なんだ……」



「母が血迷って買ってきました」



「蛙の子は蛙、か……」



なんだとこの野郎。



「先輩、それで今日お話したかったことなんですが!」



んー? ……あぁ、そう言えば元々は夕食前で時間が取れないから瑠璃を招待したんでしたね。どっかの誰かさんの家凸のせいで忘れてました。



「そういえばそうだったね。時間が取れないか、っていうのはその話がしたかったから?」



「はい、そうです! あとおかわり下さい!」



「私も!」



「はいはい。いっぱい食べてくれるのは嬉しいけど、喉に詰まらせないようにね?」



「はい!」



「うん!」



やっぱり、元気な時の瑠璃は十華と似てますね。いえ、十華ほどおバカじゃありませんが。



「それで、話って?」



「ムグ……? はっ、そうでした!」



……やっぱり少しだけおバカさんかもしれません。



「私、リンカーネーションシナリオ? ってやつを発生させたんですけど、一緒にやりませんか?」



「……」



「……」



「……」



「……?」



「……あれ? 私何か変なことしちゃいました!?」



瑠璃の予想外の一言に全員……失礼、十華以外の全員が唖然とします。



「……え? ラピ、じゃない灩、それマジ?」



「マジです!」



鷹之芸さんが辛さすら忘れて瑠璃に聞きます。爪上さんは唖然としたままです。


リンカーネーションシナリオ。

間違いなくリンカーネーションモンスターと関係のあるそれは、どう考えても爆弾です。それも、特大の。

それを瑠璃は発生させたと?


あと、私が未だ1つもシナリオを発生させてないのに瑠璃がリンカーネーションシナリオを発生させていたことに、地味なダメージを受けました。



「瑠璃、詳しく教えてくれる?」



「了解です! シナリオ名は「心を失い魂を失えど、我が願いは千と一度を越えて」で、腐敗した聖域跡地で発生させました!」



「灩、それはまだ誰にも言ってないよね?」



「もちろんです!」



こういうところは瑠璃もちゃんとゲーマーです。MMOにおいて情報は命ですし、瑠璃はそれをよく知ってますからね。



「掲示板を確認したが、特に情報は出てねぇな。ゲーム内掲示板は分からねぇが」



「あ、そう言えば当ててないんでしたね」



「うるせぇ! 結局蓮も当ててるしなんなんだよ! ていうか2陣は当てたからな!」



なんだ、外さなかったんですか。



「それについては悪かったって。ゲーム内掲示板はよく使うけど、リンカーネーションシナリオについての書き込みは見たことないよ」



「瑠璃、それは私達でも発生させられるの?」



「できますよ! フラグは特定の場所に行ってイベントを発生させるだけみたいです!」



へぇ、随分と簡単ですね。意外と大したこと……いえ、おそらくそうじゃありませんね。



「どうやってその場所を特定したの? 偶然?」



「今までのエイブラハムの落し子の出現場所と回数、時刻と周期を一から十までぜーんぶ調べて割り出しました!」



やっぱりそうでしたか。瑠璃はこういうのが得意ですからね。



「うげぇ、何その苦行……」



「さすがは情報屋……」



「瑠璃らしいね」



「……? ありがとうございます?」



褒めてはいますけど、半分呆れも混じってるんですが……。


それはそうとこの話、受けることにしましょう。他ならぬ瑠璃からの頼みですし、何より面白そうです。



「分かった、一緒にやろっか」



「やった!」



瑠璃が満面の笑みを浮かべます。この笑顔だけでも了承した甲斐がありましたね。



「その話、俺も参加していい?」



「もちろんです! エイブラハムさん、すっごく強いですから爪上さんがいると心強いです!」



「そんなに強いの?」



「はい、取り巻きさんの攻撃だけでやられちゃいました!」



取り巻きだけでイベントランキング3位が負けるんですか……。



「なにそれつっよ。てか俺も参加したいから来月まで待ってくれたりは……」



「あ、俺からも頼む。戦闘系のシナリオなら都も役に立つだろうし」



瑠璃が私に視線を向けるので、自分で決めるよう手振りで示します。瑠璃の発生させたシナリオですからね。



「じゃあ、待ちます!」



「お、さんきゅ」



これは来月までに色々と準備が必要ですね。



「話についていけない……」



あ、十華のこと忘れてました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る