第1回突発オフ会2




3人が来るのを待つ間に夕食の支度をすませてしまいましょう。

とはいえ今日の人数は普段の2.5倍。その上男性が2人もいるため、どれだけ作ればいいか分かりません。



「一度にたくさん作れて明日以降に持ち越し可能なもの、ですか……」



カレー、ですかね? ……そうですね、香辛料は一式あるはずですしカレーにしましょう。


辛さは……確か鷹之芸さん以外は辛いモノ好きでしたね。激辛にしましょう。鷹之芸さんは……まぁ、突然の家凸の罰ということで。

というか、仮にもぺぺロンチーノ(唐辛子)を名乗る片割れが辛いの苦手ってどうなんだ。


とりあえず床下収納から香辛料を磨り潰す石臼を取り出します。さぁ久しぶりの出番ですよ、母が血迷って購入した石臼くん!


それから香辛料は、っと。



「ウコン、コショウ、アンス、トウガラシ、コリアンダーにクミン、クローブ、シナモン、フェネグリ、カルダモン、ニッケイ、オールスパイス……うーん、何か足りないような。……あぁ、ナツメグが無いですね」



一式残ってたと思ったのですが。

十華にひとっ走りしてきてもらいましょう。スーパーは少し遠いので、私では休憩を挟むことになってしまいます。



「十華ー、ちょっとスーパーでナツメグ買って来てー!」



「もしかしてカレー!? やった、行ってくる!」



相変わらず足の速い子です。テレポート技術が欲しいですね。


……いえ、技術としては確立しているんでしたか。確か、一度原子分解してから転送先に同一のものを再構成するという方法だったはずです。

ただ、「原子レベルで同一とはいえ、転送後の自分は果たして自分なのか」という倫理的問題にぶつかって移動手段としては確立しませんでした。

うーむ、残念。


そんなことを考える間もお米を研いだり玉ねぎを炒めたりと手は止めません。やっぱり時代は並列思考ですよ。



「ただいまーっ!」



早っ! それこそテレポートでもしたのではないかというぐらい早く十華が帰って来ました。


おや、瑠璃も一緒ですね。



「はいこれ、ナツメグ! あと玄関で瑠璃ちゃんに会った!」



「お邪魔します!」



「はい、いらっしゃい。十華は手洗いうがいしたら香辛料磨り潰してくれる?」



「了解っ!」



十華が洗面所へと駆けていきました。それを見た瑠璃がこちらを見て言います。



「先輩っ! 私も何かお手伝いを!」



「うーん、瑠璃はお客様だから座って待っててくれる?」



「分っかりましたー!」



そう言って瑠璃も十華を追って手洗いうがいに行きます。

勝手知ったる相手なら十華並に元気な子なんだけどなぁ……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「よし! ご飯も炊けましたし、これで完成ですね」



ピンポーン



インターホンが鳴りました。おそらく鷹之芸さんと爪上さんでしょう。


玄関に向かい、ピープホールで確認してから扉を開けます。



「お邪魔します」



「おう、来たぞ……!?」



鷹之芸さんがフリーズしました。なんというか、デジャビュです。



「爪上さんと同じ反応ですね」



「あー、先に伝えておいたんだけどなぁ……」



「……はっ!? え、お前がモネ……姉川なのか!?」



「そうですが?」



「なんでこんなに外ヅラだけはいいんだ……」



「だけ」とはなんですか。私はいつだって品行方正清廉潔白だというのに。



「鷹之芸さん、追い出しますよ?」



「あ、すまん。思わず声に出たわ」



……唐辛子追加ですね。



「取り敢えず入ってください。他の2人が待ってます」



「了解、じゃあ改めてお邪魔します」



「邪魔するぞー」



2人をリビングダイニングへと案内します。

お、配膳が終わっていますね。十華と瑠璃がやってくれたのでしょう。



「2人とも、配膳ありがとね」



「ふふん!」



「いえいえ! ……あっ、あとのお2人も来たんですね!」



「おっ、お前がラピスか。……美少女率高いな」



「あれ、じゃあそっちの子は?」



爪上さんが十華を指さします。



「私の妹の十華です」



「よ、よろしくオネガイシマス……」



おや、十華の様子が……。



「十華、どうしたの?」



「オ姉チャン、コノ人達、プロゲーマーノ……」



「おう、鷹之芸だ。よろしくな」



「こっちは爪上です。よろしくね?」



「オ姉チャン、プロゲーマート知リ合イダッタノ……?」



あー……。



「言ってなかったっけ?」



「聞いてないよ! というか、お姉ちゃんが忘れるわけないじゃん! ワザと教えなかったでしょ!」



ばれてーら。



「はいはい、お客様の前でみっともなく騒がないの」



「十華さん、カレー冷めちゃいますよ!」



「ぐぬぬ……分かったよ」



瑠璃、ナイス援護射撃です。

十華が落ち着いたようなので全員で席に着きます。


……何故か私に視線が集まっているのですが。私が音頭を取れということでしょうか?



「あー……えっと、じゃあ初のオフ会ということで……乾杯!」



「「「「かんぱーい!」」」」



もちろんお酒はありません。3人が未成年ですから。




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