第22話




昼食を終え、現在時刻は午後1時。夜10時過ぎまではログインできない計算です。私が普段から11時前には就寝している以上、実質今日はログインできないと考えていいでしょう。



「……やることがないですね」



思っていた以上にゲームばかりしていたようで、ログインできないとなるとやることがありません。宿題は終えましたし、十華はお昼を食べて午後練に行きましたし……。


おや、ロンチーノさんから返信がきていますね。



────────────────


件名:re:re:このクソ外道

差出人:ロンチーノ

宛先:モネ

本文:家凸するから覚悟してね。


────────────────



はい? 家の場所、教えてないんですが???



「……ま、いっか」



特に困る事もありませんしね。



────────────────


件名:re:re:re:このクソ外道

差出人:モネ

宛先:ロンチーノ

本文:別に良いですよ。というか場所知ってるんですか?

〈位置情報〉


────────────────


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


side:ロンチーノ



────────────────


件名:re:re:re:このクソ外道

差出人:モネ

宛先:ロンチーノ

本文:別に良いですよ。というか場所知ってるんですか?

〈位置情報〉


────────────────



「いや、冗談のつもりだったんだけど……」



自宅のリビングで、爪上蓮は呟いた。


冗談のつもりがこの返信。最初は向こうも冗談を言っているのかと思ったが、位置情報もついてるあたりそういうことでも無いらしい。流石に位置情報がオカマバーみたいな罠ではないだろう。



「……ないよね?」



無い、とも言い切れないのが姉川百音という女である。



「……取り敢えず門のとこまで行ってみるか」







〜2時間後〜


ピンポーン



「……」



ピープホールから確認すると、そこにはゲーム誌などでよく見かける眼鏡をかけた青年が。

わぁ、ホントに来た。



ピンポーン



「……」



ピンポーン



「……」



ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン



あぁもう出ればいいんでしょう、出れば!インターホンを鳴らす永久機関を止めるため玄関扉を開けます。



「迷惑行為で警察に突き出しますよ?」



「やぁ、腐れ外道さん。こっちでは初めま……」



突然ロンチーノ……もとい爪上さんがフリーズしました。どうしたんでしょう?



「……まさかアバターそのままの美少女とは」



「モンスタのアバターは弄れないでしょう」



「僕はモンスタの方でモネ…姉川さんをみたことないですよ。そうじゃなくてAMOの話です」



Ars Magna Online、通称AMO。私が並列思考を使ってBANされたゲームです。そういえばぺぺロンチーノ達に誘われて始めたんでしたね。結果は知っての通りですが。


いえ、それよりも……



「その口調は素ですか? 普段の口調に慣れてるので気持ち悪…違和感がすごいです」



「今気持ち悪いって言おうとしましたよね?……あー、こっちの方がよかった? リアルじゃ初対面だから仕事用の丁寧口調にしてやったのに……」



中身がコレだとわかってる以上、取繕われても気持ち悪いだけです。



「それで、天下のプロゲーマー様が一体何のようですか?」



「それよりもお前、ひとり? え、もしかして俺男扱いされてない?」



どういう事でしょう。



「……?」



「……あー、そういう感じか。人様の家の教育方針かもだし何も言わないけどさ……。っと、そうじゃなくて何の用かだったな。ランキングの件に決まってるだろう。親切にもこっちから来てやったんだ、精々崇め奉れ」



「親切な人間はその程度のことで怒って家凸しないのでは?」



「親切な人間だって騙し討ちでキルされたら怒ると思うよ。しかも配信中だったし」



「……」



「……」



まったく、この程度のこと今更でしょうに。それならこれでどうでしょう?



「仕方ありません、グラデュエルで決着をつけましょう」



「何も仕方なくないけど、分かった」



いい加減玄関先での口論も近所迷惑なので爪上さんをウチへ招き入れます。

そのままリビングへ向かおうとしたのですが、途中、玄関で立ち止まったままの爪上さんに気付きました。



「あがらないんですか?」



「ほかの人が家にいないのに……ホントにあがっていいの?」



「リスキル目的で自宅(敵拠点)に凸してくる人が何を今更」



「いやそれゲームの話ィ……」



何ですか急に遠慮して、気持ち悪いですね。



「てか、アネもいないよね? 言っとくけどモネ1人に負けるほど俺はおちぶれちゃいないよ?」



……まさか本当に信じていなかったとは。



「だからアネもモネも私だと言ってるでしょう」



「え!? なに、ガチだったの?」



だから何度もそう言っているでしょうに。そう言って自分用にコントローラーを2つ用意した私を、爪上さんは驚愕の眼差しで見つめていました。












「はい、これで今回も私の勝ちですね」



1対1(2on1)でボコボコのボコにして差し上げました。ダメージもほとんど受けずに15連勝、完璧な勝利です。



「2対1は卑怯だと思う」



「何を言ってるんですか、ちゃんと1人対1人でしょう」



「そうだけど何か違う。1人対1人とは言え1P&2P対3Pは1on1とは言わないと思うんだ」



……面倒くさい人ですね。15連敗もしたんですから大人しく負けを認めればいいものを。



「細かいこと気にしてるとハゲますよ。夕食の支度もあるのでさっさと帰ってください」



「ぐっ、もうそんな時間か。仕方ない、今日のところは引いてあげるよ」



「何を恩着せがましいことを……。あ、最後に1つ。一次抽選外れたって言ってませんでしたか?」



「俺だけ当たったって知ったら都が拗ねるでしょ」



「あぁ、なるほど。……ん?それなら配信したのは失策では?」



「あ"」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る