第7話



【side都】


俺、鷹之芸 都(たかのわざ みやこ)はプロゲーマーだ。

自分で言うのもなんだが、俺はゲームが上手い。

中学からの親友にして現チームメイトである爪上 蓮(そうじょう れん)とタッグを組んでアマチュアの頃から数々の大会で優勝してきた。

おそらく、日本のプロゲーマーのTOP2は俺と蓮の2人だろう。

個人参加の大会の決勝で蓮と当たることも珍しくない。


なのに。


だと言うのに。


目の前の2人組、アネとモネには全く勝てる気がしない。

1on1ならば、おそらくどちらが相手だろうと勝てるだろう。

アネもモネもゲームの腕は確かだが、俺や蓮には及ばない。


だが、アネモネペアとなると話は違う。

俺と蓮、ぺぺとロンチーノのタッグが勝てないどころか善戦するので精一杯になるのだ。


その理由はアネとモネの変態的なまでの連携能力にある。

俺たち2人だってタッグを組んで6年、かなりハイレベルな連携が出来ていると自負している。

だが、この2人はそんなもんじゃない。


スキの大きい自傷技に対するノータイムでのカバーと回復。


故意のフレンドリーファイアによる急加速と緊急回避。


はっきり言って異常だ。

ありとあらゆる行動が互いを補強し合って、まるで1匹の怪物のようになっている。


本人曰く「2人組じゃなくて1人での2キャラ同時操作」らしいが、それが本当ならそれこそ怪物だろう。

しかし、そう言われても信じられる。それほどまでに強い。


あぁ、ロンチーノがやられた。

ぺぺがやられるのも時間の問題だろう。


結局半分しか削れなかったな。


これでも1ヶ月のブランクを挟んで弱体化してる筈なんだぜ?

笑えてくるだろ?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


フレンドチャット

────────────────


ぺぺ:グッドゲーム


ロンチーノ:グッドゲーム


モネ:グッドゲームです


ぺぺ:やっぱお前ら化け物だわ、1ヶ月のブランクどこいった。


モネ:お前らとはなんですか、私は1人だと何度も言ってるでしょう


ロンチーノ:否定できる要素がないから怖いんだよなぁ


ぺぺ:てか引退したはずのアネモネがどうしてここに? モンスタは?


モネ:メンテ中です


ぺぺ:なる


モネ:リアリティ凄いですよ、楽しいなぁ!


ロンチーノ:なんだこのヤロー、1陣外した俺たちへの当てつけか、お?


ぺぺ:腹立つわ〜


モネ:そのつもりで言ったのですが…。伝わらなかったのであれば謝罪しますよ?


ロンチーノ:こいつ……っ!


ぺぺ:うわ腹立つーっ!


モネ:楽しいですぅ!


ぺぺ:腹立つぅぅぅううう!!


ロンチーノ:2陣で俺らも参加するから、そん時は覚えてろよ


モネ:成る程、2陣も外すんですねわかります


ぺぺ:腹・立・つ・!


モネ:ぺぺさんのお腹が七転び八起き


ロンチーノ:悔しいけど笑った


────────────────

普段の口調が余計丁寧だから腹立つ!

何気に面白い置土産も腹立つ!

あの野郎絶対許さねぇ!


…不安になってきたからもう一口応募しておくか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【side百音】


ふぅ、そろそろお昼の時間ですし、グラデュエルはここまでにしておきましょうか。


……そういえば昨夜は夕食を作っていない気がします。お詫びとして十華の好物のオムライスでも作りましょう。




20分程かけてオムライスを2つこしらえます。

っと、廊下を走る音が聞こえてきました。



「お姉ちゃん、今日オムライス!?」



「昨日、夕食作ってあげられなかったからね。お詫びに今日のお昼は十華の好物にしたよ」



「うむ、苦しゅうない!」



十華に配膳を手伝わせ、テーブルを囲んでオムライスをパクつきます。

……ちょっとケチャップが多かったですね。87点。



「そうだ、今日からしばらく部活ないから私もモンスタできるよ」



十華は短距離走のスポ選入学で私と同じ私立三川市大学附属高校に通っています。ウチの高校は進学校にしては珍しく、陸上の強豪校なんです。



「珍しいね、ウチの陸上部が長期休暇なんて」



「コーチがモンスタの1陣当てたんだって。」




おい強豪校。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その後しばらく十華と駄弁り、夏季休暇の課題を消化し切ると、メンテ終了の時間が迫ってきました。



「お姉ちゃん、向こうで合流しよう!どこ集合にする?」



「うーん、多分厳しいと思うよ?」



「え、なんで?」



ん?あぁ、十華にはまでちゃんと説明してませんでしたね。

十華に昨日の強制ログアウトまでの流れを一通り説明します。



「へぇ、だからあんなに具合悪そうだったんだぁ。…ちょっとマジックラフト社に乗り込んでくる」



「やめなさい」



私のために怒ってくれるのは嬉しいですが、流石にそれはマズイです。



「ぶー」



「ぶーじゃありません。ほら、メンテ終わったからログインするよ?」



「はぁーい」

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