長嶺誠治の選択 その1
''責任は『選択』をしている人自身が持つべきで、神様に転嫁するな''
確か、プラトンの言葉だっけ。
Nightもとい内藤さんからの占いを終え、俺たちの班は迎えに来たバスに乗り込み、宿舎へと帰る。
バスでの道中、俺は内藤さんからの言葉を気にしていた。
ーーこれから俺が選択していかなければならないことと、とんでもないほどの女難の相。
おそらくだが、これらは密接に関係していることなのだろう。
となると……やはり花蓮のことなのだろうか。
もしかしたら、花蓮は浮気などはしていなくて、ただの俺の勘違いなのだとしたら……なんて、考えてみたりもしたが、男と二人であそこまで楽しそうに歩いていた花蓮を思い返すと勘違いではないと思える。
「あー……さっぱりわからん」
「誠治殿? さっきからぶつぶつ何を言っているでござる?」
「いーや、何でもない。てか、さっきから何をそんなシェイクしてんだ?」
「プロテインでござるよ。先ほどの荷物運びでだいぶ筋肉を疲れさせてしまったでござる。カタボッてるでござる」
「カタボ……? まあいいや、もうそろ飲んでいいんじゃないか?」
「確かにそうでござるな! どれ……」
半蔵はシャイカーで溶かしたプロテインを一気飲みした。
凄いなダイソンかよ……。
「ふう……筋肉ついたでござる」
「プロテインにどんだけ信頼置いてるんだよ……」
占いと言えば、半蔵も意味深なことを内藤さんに言われていた気がする。
冬休みに大冒険をするとかなんとか……まさか、交通事故にでもあって転生した先は異世界でした! とかか?
そしたら半蔵の寿命はあと数週間だけということになるが……まぁ、言ってもただの占いだしな。
俺も世界一の占い師からの占いということもあり、気にしすぎている節はあるかもしれない。
それに……人生において『選択』が如何に重要かなんて当たり前のことだよな。
今後の人生を生きる上での大事なことを再確認させてもらったということで、俺はこれ以上深く考えるのはやめた。
夕暮れ時の田んぼ畑の中を走るバスの車窓から、ぼんやりと景色を物憂げに、ただ眺めていた。
***
バスが宿舎についた。
私は部屋に戻るよりも先に、誠治の存在が近くにないか隈なく探していた。
会いたい。
どうしても会いたい。
一言でもいいから誠治と話したい。
今日一日、誠治に無視されたこと、誠治が綾女と二人っきりだったことがずっと頭に残って離れなかった。
何にも身が入らなかった。
ただ私は思考していた。
どうすれば誠治と寄りを戻せるか?
どうすればもう一度誠治と話せるか?
どうすればもう一度誠治と手を繋げるか?
どうすればもう一度誠治と抱き締めあえるか?
どうすればもう一度誠治は私だけを見てくれるか?
どうすれば誠治は私だけのものになってくれるか?
どうすれば……悪い
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
ーーーー考えていた。
でも私は気がついた。
こういう時は、絶対に焦ってはいけない。
冷静に、いつも通りに、この気持ちは内に秘めておこう。
……表向きには。
「まずは……誠治の動向を知る必要があるなぁ……」
ピコン、と携帯にLINEの通知が鳴る。
確認すると、伊月くんからだった。
『林間学校どう? お土産話待ってるね!笑』
「……くだらな」
伊月くんからのメッセージに既読もつけず、そのまま携帯をポケットにしまった。
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