大石花蓮の憂鬱(2)
私と誠治は学校では付き合ってることを隠しているため、基本的に学校で絡むことはほとんどない。
図書委員の活動があるときは話せるけれど、二人きりの時のようには接することができない。
付き合った当初は、『やっぱりみんなに伝えた方がいいかな?』と私も聞いたのだが、誠治は『いや、やめとこう』と言われた。
誠治自身も、学校での私とはあまり絡みたくないのだろう。
そんなところにズキンと胸にくるものがあるけれど、二人きりのときは思い切り甘える。秘密の恋のような感じがして悪くないなと思った。
しかしここ最近、友達から遊びに誘われることが多くなって、誠治とデートにいく機会が減っていった。
『来週も友達と遊ぶ約束しちゃった……』
『そっか、まあ俺よりも友達優先してくれていいからな? 学校での人間関係大切にしないと……俺みたいになっちゃうぞ?』
『はは、何それ。半蔵くんがいるじゃない』
『あ、忘れてた』
『ひどいよそれは〜』
『冗談だよ冗談。あいつくらいだよ、俺と友達でいてくれるのは』
『そっか、大切にしないとね。私にもいつか紹介してよ』
『あー確かに半蔵になら話してもいいかもしれないなあ』
誠治とよく友達の話をすることがあるけれど、友達には私たちのことは一切話せないことにモヤモヤする。
誠治が私のことを考えての行動なのだと思うけれど、私は別に誠治を彼氏として恥ずかしいとか思ったことはないし、胸張って友達に紹介する覚悟はある。
でも、それで誠治のことを悪く言われてしまうのではないかと被害妄想をしてしまう自分が嫌だ。
でも、誠治のことを自慢気に話しても受け入れてくれる人もいる。
『あはは、彼氏くん面白いね』
『そうなの! 綾女とか他の友達にも誠治を紹介したいんだけど……こうやって気軽に話せるのは伊月くんだけだよ』
『そっか……じゃあ僕は、役得ってやつかな? こうやって花蓮ちゃんみたいな可愛い子と二人で楽しく話せるんだし』
『ちょっ……伊月くん、平気でそんな事言わないでよ……』
ここ最近、伊月くんが距離を詰めてきている気がして、少しだけ引いてしまう。
本当は誠治との話しを聞いてくれるのも、私に近づくための口実なんじゃないかと疑ってしまうほどに。
こうやって伊月くんと二人で話すことになるのも、本来は綾女が遊びに誘ってきて、毎回私に連絡もなしで伊月くんを連れてくるからだ。
綾女はしょっちゅう席を外すし、今回に至っては途中で用事ができたと言って私を伊月くんと二人にする。
多分綾女的には、私には彼氏がいないだろうと思って伊月くんとくっつけようとしているんだと思うけど……。
それにここ最近、誠治から一切連絡がない。
私から誠治にLINEを送っても既読無視。
どうしてしまったのだろう?
学校がある日に、直接会いに行こうとしても綾女たちと一緒に行動することが多いから、会いにも行きづらい。
誠治も学校が終わったらすぐ帰ってしまう。
どうして?
『そういえば、花蓮ちゃん携帯の調子はどうなの? 綾女に直してもらったんだよね』
『……あ、うん。何も問題ないよ。変なメールがずっと来てて……でも綾女に相談したら全部やってくれた』
『そっかそっか、よかったね。綾女が携帯会社の社長の御令嬢さんで。今の時代、携帯で全部の情報が漏れちゃうからね』
『本当に怖いよね。私SNSのアカウントには全部ロックかけてるもん』
『それはそれは、ガードが硬いね……』
私の携帯のパスワードは、全て誠治の誕生日だ。
セキュリティが甘いと言えば甘いけれど、誰も私が誠治の誕生日をパスワードにしているとは思わないだろう。
誠治から連絡が来ないのも、全部携帯のせいだといいのに……。
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