沢渡 未来 & 京極 蘭斗 vs オードロブ
『沢渡さん、目の前にいる人が今回の無差別殺人の犯人です!』
「はーい……バッチリ見えてるよ。なるほどね、こりゃ俺達も呼ばれるか……」
オペレーターの
『『『NOW INSTALLING』』
2人は左手首についたブレスレットに手をかざす。
そして白の特殊スーツと黒いプロテクターが瞬時に装着され、白のフルフェイスヘルメットが装備された。
「作戦はどうする、沢渡。」
「俺とお前だったら別にいらなくないか?他はどうせ非番だ。」
「確かに……暴れるだけでいいか。」
「おい、俺に勝とうとしてるらしいぜ。」
『奴ラヲ軽ンジルナ。』
オードロブは魔剣に笑みを向けて語り始めるが、対する魔剣の歯切れが良くない。
「分かってるって、俺も見てるんだから……んじゃ、人間相手に物騒なもの向けて警察の味方するバカヤロウを制裁しますかね。」
「馬鹿はどっちだ。呼吸するように人を殺すお前が馬鹿じゃないなら、俺らは聖人君子じゃないか。」
沢渡が挑発するようにそんなことを言っている隣で、京極はゆっくりと深呼吸していた。
「Be cool……」
「それじゃ、行くか。」
ダッ
と2人が踏み込むと、一瞬で距離を詰めるその速度に驚いた。
(速い!)
オードロブが感じたことは2つ。
1つは、自分の体は目の前の戦士のような動きを、
もう1つは、今まで簡単に殺してきた人間とは全く異なるということを、改めて理解した。
『ナルホド。』
「その気味悪い剣、叩き切ってやる。」
「やれるもんならやれ!やれ!やれ!」
沢渡の攻撃を魔剣で防ぐと、その横から京極がレーザーサーベルで斬り掛かる。
するとその京極目掛けて魔剣が伸び、京極を襲う。
すると、まるで分かっていたかのような反応速度でもう片方のレーザーサーベルを防ぎ、それを弾く。
そのスキを沢渡がレーザートンファーで殴り掛かるが--
『油断スルナ。』
魔剣がそう言った瞬間、オードロブの体から黒い血管のようなものが全身から吹き出した。
「バアボ!」
「「!」」
それらは棘となっており、無差別に2人を攻撃する。
直撃は武器で避け、それ以外はなんとかスーツに穴が空く程度で済んだが、油断はできない。
「……ああ!おい、勝手にするなよ!」
『オカゲデ伸ビナカッタ。』
「そういう能力ね……」
「
お互いに距離を取り、出方を伺う。
「まさか、あの剣にも……意識が……」
「いや、有り得るな。喋ってるし……」
「いやいや、喋ってるからって決めつけるのは……」
『ヤレ、オードロブ。』
「言われなくてもぉ!」
彼が振りかぶって剣を振るった瞬間、その剣が伸びた。
「おい、それは……!」
「!おいそれ不味くねえか!」
沢渡が特殊バイクを飛ばし、京極がすぐにオードロブへ向かって駆けだした。
オードロブの魔剣が、建物に切り口を入れた。
オードロブが剣を"上から"振ったのでは無い、"横から"振るったのだ。
その結果、数棟の建物が一瞬のうちにスパッと斬れた。
建物は真っ二つに切り落とされ、建物はおろか中にいた人たちも落ちてゆく。
(勢いで逆の方も!)
勢いが衰えないままに、振り切ろうとするオードロブへ向かって京極は止めにかかった。
(やっぱりいたか、逃げ遅れた避難者!)
沢渡がバイクでなんとか人を捕まえていく。
しかし限界もあり、助けた人数分による特殊バイクの減速と空を飛んでいるが故の不安定さ、そして手前の方はなんとかなっても、先に倒れる奥の建物の人たちは助けられない。
為す術なく、落ちる建物の下敷きになってしまう。
「……クソ……!」
「沢渡!」
『沢渡さん!』
「ああ、分かってる!」
襲い来る伸びた魔剣は、魔剣を防ぐ京極を無視して、遠慮なく沢渡まで伸びてくる。
ナビの隣にあるプラスチックのケースを叩き割り、沢渡は特殊バイクのスイッチを押したその瞬間。前輪を守るように備えられた左右のボックスが駆動して開き、ミサイルがナビ上でターゲットをロックした。
ボックスが開くと、自動追跡機能付きのミサイルが6発放たれ、オードロブを狙う。
「戻れ!」
『分カッテイル。』
沢渡を襲う魔剣は方向転換を行い、そのミサイルを優先して壊した。
そのたったわずかのスキをついて、着地しそれを背に沢渡がレーザートンファーを構えた。
「さて……あの剣相手に、どうやって守るか……」
ガキィン、ガキィン、ガキィン
魔剣の異常な力に退くことなく、剣に相対し、京極は防ぎきっていた。
「なんというパワー……」
「おいおい!いい加減壊れろよ!」
そう言って退いたのは、オードロブの方だった。
『
オードロブは距離を取り、黒い斬撃を繰り出した。
京極はそれを真正面から受け止める。
「……っく……!この程度……この程度……!」
ザザ……ザザ……
押し負け後退してしまう。
それでも力は緩めず、この斬撃を押し返す気でいる。
目は死なない。
「選ばれし者は俺かもな!」
なんだ突然、そう言いたくなる気持ちを沢渡は飲み込んだ。
ああ、なんと哀れなのだろう。
せっかく得た力を、こうやって俺らに止められてしまうとは。
「この程度か……お前の力は……」
「あ?」
京極の言葉に思わずといった様子で、オードロブが反応した。
少なくとも、オードロブには強がりとしか映らなかった。
「お前が選ばれし者であるなら、人殺しは皆選ばれし者ってことじゃないか。だったら何かを守っている俺らの方が、まだ選ばれし者じゃないか?こんな社会で一生懸命金稼いで生きている奴、生まれながらの障害を笑い飛ばして生きている方がよっぽど選ばれた者だと思うし、カッコイイと思うね。」
その言葉に、オードロブが行動で示す。
オードロブの剣が沢渡を襲う。
「最大出力。」
レーザートンファーの出力を最大限まで高めることで、トンファーに不足する大きさを補い、攻撃が民間人に当たらないようにした上で全てを捌き切る。
それを難なく対応するその先で、京極が笑って見せた。
「確かにクールだが、そこは俺らも括ってくれよ。人を守るために命張ってるのは……クールじゃないか?」
「ははは!って訳で、さっさとクールに決めて見せろ。」
「うる、せえ!」
そう言って、闇の斬撃を霧に変えて見せた。
「は、は……」
一瞬の戸惑いを見せるも、すぐに剣を元のサイズに戻し、京極に斬り掛る。
「んー、なるほど
「Be cool!」
京極はすぐにレーザーサーベルを持つ手に力を込め、再びオードロブの人体上ありえない、無茶苦茶な動きの剣戟に対応していく。
沢渡が息を整えようとすると、泣きじゃくる声が聞こえた。
どこにいる--
周囲を見渡すも、どこにも見当たらない。
近くにはいるはずだ!
『小鳥遊くん、これを借りるよ。あ、あー。こちら支部長、こちら支部長。聞こえたら返事して--』
通信が入る。
声の主は小鳥遊ではない、日本支部支部長の
「あんたふざけてる場合か!」
『失敬。沢渡君、京極君。避難者を連れて撤退したまえ。大変不本意だが、王城のせいで訳の分からない機会兵が出兵して、そっちに向かってる。』
「は!?なんで!」
耳を疑った。
王城のがお遊び半分で実験を行うのだとしか思えなかった。
『不本意だと言ったろう。それに、試作とかいう理由でお前たちガーディアンの判別もつかずに武器を持っていたら攻撃する。……いい迷惑だ。』
(一斉休暇の理由って、まさかこれか!?)
「分か、りました。すぐ帰ります……京極、帰投だ!」
「っく!正気か!」
「マジで早く帰るぞ、あのクソ野郎の実験ショーだ!」
「クソ野郎……?冗談だろう!なぜあの男が!」
「いいから、避難者連れて逃げる!そっち任せていいか!」
「分か……ったが……あの剣は伸びる、近くのトラックに人を乗せろ!」
京極が抑えている間に、近くのトラックに誘導する。
それを見ていたのか、オードロブは沢渡にも攻撃を行い始め、京極には黒い血管が襲い始めた。
「おい誰か、俺のバイクにコードが入ってる!それをバイクとトラックに括りつけてくれ!」
絶対に手は出させないよう、集中して攻撃に対応する。
最悪攻撃は自分に食らうように、全神経を尖らせる。
「……!京極退け!
その向こう。
道の奥から、10体ばかりの機械兵が固まって現れた。
光式機動レーザーマシン
王城 ヨハン 鏡がそう名付けたその機械兵は、ゆっくりと
歩いてくる。
急いで光式武器と敵いるのだから速く走れという思いを仕舞い、特殊バイクに乗り込んだ。
「京極、こっち乗ってくれ。俺はもう少しこの辺りに逃げ遅れた人がいるか、探してみる。あの機械が、人様を心配して戦うようには全く見えない。」
「……分かった。無茶だけはするな、クールじゃない。」
「頼んだ。」
武器を持つオードロブに、向かって一斉にレーザーマシンが襲い始めた。
「邪魔だヨ!」
スパッ!
という音は機械兵からは聞こえない。
上下左右様々な避け方でかわす。
そして、彼らの両手のひらに備え付けられたレーザーガンが相次いで放たれる。
レーザーガンの雨を受けながらも前進し、最小限のダメージに抑え、全身から黒い血管を放出した。
機械兵の身体を次々に突き刺していく。
ダメージはあるのか知らないが、機械兵は恐れを知らずに向かってくる。
懐からレーザーサーベルを取り出し、向かってくる。
オードロブはそれを受け、押していく。
相手が複数だろうが、傷つこうが、狂気に飲まれて笑い飛ばし、向かっていく。
たった一瞬のうちに、魔剣を伸ばす。
その剣先は、向かって来ずに手のひらのレーザーガンを構えていた機械兵を仕留めた。
するとその機会兵から「ピーッ」という音がして、爆発した。
オードロブは爆風に飲まれて、抵抗も出来ずにただただ吹っ飛んでいく。
『ホウ……』
その最中……赤い瞳に映るのは、泣きじゃくりながら母親の亡骸の元で泣き叫ぶ女の子だった。
涙を拭うその手の指のすき間から見える瞳の奥には、泣き顔とは裏腹に、怒りに染まる何かがあった。
♢♢♢
「ちっ、あのガラクタども……!ん?」
自分の倒れた背後には、
立ち上がり、周囲を見渡す。
自分が吹っ飛んできた方向に干されていたシーツは既になかったが、それ以外の場所には白いシーツが干されていた。
柔軟剤の臭いが、仄かに鼻の奥を触った。
そのフレグランスの向こう側に、誰かがいた。
その男は肩の高さ程度しかないフェンスにもたれ掛かり、スマートフォンを覗き込んで、こちらを見ていた。
そこにいたのは、白茶色の髪を持ち、青い瞳を持つ日本人顔の青年だった。
「……そんな事あるか?偶然にしては、ずいぶん都合のいいところに飛んできたな。」
オードロブは震えていた。
この震えは恐怖によるものでなければ、武者震いでもない。
「……何か用か、魔剣使い。」
「お前、俺を裏切って捕まえた奴だよな……?」
青年に向かって指をさして、オードロブは目を黒黒と染めてそう言った。
青年は肩を竦めて、答えた。
「何のことだか。」
「とぼけるなヨ!」
その瞬間、魔剣の戦士は青年に飛びかかった。
「
ガキィン!
「!?」
黒い氷の槍がわずか一瞬で現れ、オードロブの攻撃を防いだ。
そのままフェルゴールは片手で押し切り、そのままオードロブを蹴り飛ばす。
だがその蹴りを飛ばされることで勢いを殺し、フェンスを掴み、華麗に着地して見せた。
「やれやれ、俺を覚えているのか。……存在感は薄い自信があったんだがな。」
「恨みの対象、みーつけた!」
さて……こいつ、壊していいのかな?
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