第11話 やらかしと夏の予感
「ひーくん行こっ!」
「氷冴くん私も忘れないでね?」
隣を桜と玲が歩いている。
その視線はほぼ二人に向けられていて僕だと勘違いすることはない。
まぁたまに小言付きで嫉妬の籠った視線を頂く事もあったけどそれは完全に慣れていた。
まぁ席替えして二人が隣に来た時点でお察しだよね?
そう言えば忘れ去られていた楓真は何をしているんだろうか。
生きてるかな…?
校内での僕の通り名は『
三人から好意を持たれているのは知っているけど、僕は未だに一人に絞りかねてるしな…
『
ごめんな?ハル。
さて、そんな話はさておき。
プロットを消してしまった誰かのせいで、いつの間にか期末テストが終わっていたらしい。
なので、校内は早くも夏休み一色になっていた。
いや、マジ申し訳ない。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「全く、ソシャゲ厨にも困ったものね。」
小説を読んでいた翠がぼそっと呟いた。
「ん?誰の事?」
「氷冴はいいの。」
僕は関係ないらしい。
「ひーくんは夏休みどうする?」
「僕は本読んでご飯食べて寝てるかな…男の鍛錬はそれで充分ってアニメで言ってたし」
「つまんない」
「氷冴くんはもう少し美女三人に囲まれてる事に自覚を持とう?」
「失礼しました」
自覚はしてるつもりだったんだけどな。
「ひーくんお出かけしよっ!」
ぴくっ…と翠と玲の肩が動く。
「うん。いいけど…二人はどこ行きたい?」
その言葉に桜は「むぅ。」っと頬膨らます。
一方の二人は殺気を消して笑顔でこちらを向いた。
「「えっと~」」
「はい。ダメです~!これはひーくんと桜のデートなんで!二人はお留守番です!」
「えっ?デートだったのこれ…」
「当たり前でしょ!ひーくんとやりたい8つのこと考えてきたもん!」
「お、お手柔らかにお願いします…」
「1つ!お買い物デート!2つ!二人でプリクラ!、、、、、、8つ!温泉旅行!そしてこの夜に既成事実を作ってだね…」
「ダメぇぇぇ!」
翠が部室で叫ぶ。
「じょーだん。じょーだん」
「棒読みはやめてくれ…」
「でも四人で合宿とか面白いよね?」
玲が翠に提案している。
「文芸部の合宿…いいわね。玲、その案採用するわ」
玲が拳を突き上げガッツポーズ。
「文芸部の合宿って何するの?」
「やることないのにひーくんとの時間減らさないでよ」
「いや…まだ8つやるとは言ってないからね!?」
「まかせなさい?私は部長兼生徒会長なのよ!」
そう言ってドヤ顔する翠は何処か怖かった。
「氷冴くん楽しみだね」
「楽しみなのかな…この感情は…」
カオス一直線なのは間違いないんだよなぁ…
それでも期待に胸を膨らませているのは間違いないな。
うん。
あぁ…ひぐらしが鳴き始めてるなぁ。
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