第10話 暗闇の中で

僕は弱い。


幼馴染とずっと比べられ、「お前には勿体ない」と言い続けられてきた。




中学までの翠は相変わらず才色兼備の優秀な生徒会長だったし、桜もキャラと外見は違うけど家庭的で大人しかった。


言うまでもなく学年の2トップは翠と桜だった。




その一方でその二人の幼馴染は、冴えなくてこれと言った特技もなく、教室の隅っこで窓の外を眺めたり本を読んでいたり。


周りはそれが気に入らなかったんだろうな。




中学卒業の日、クラスメイトに呼び出されて校舎裏に行った僕を待っていたのは、元クラスメイトの暁 純也あかつき じゅんやだった。




「お前高坂さんと東雲さんに不釣り合いすぎるんだよ」




そう率直に言われた僕は、何も言い返すことは出来なかった。




「なんでお前なんかがいつも隣にいるんだよ。本当に不快なんだよ」


「ごめん…」




ドスッ…




「ぐっ…」




身体に痛みが走る…




「高校も同じなんだろ?少しは自分の立場わきまえろよ」


「……」




みっともないな。僕…




高校に入学すると、あの出来事以来距離をとってしまっていた。




高校では桜には人が集まっていて僕の入り込む隙はなかったし、翠は別のクラスだったし僕が距離をとるには最適だった。


そのおかげで僕たちの関係は悟られることはなかった。




♢♢♢♢♢♢♢♢




「…ひー……くん……ひーくん!」


「ご、ごめん!」


「なに黄昏てんのよ。全く。」


「申し訳ない…」




そう思うとなんで僕こんな事になってんだろうな…




「なんかあった?顔色悪いけど…」




玲が僕の顔を覗いている。




「ううん!なんか変な夢見ちゃって色々と思い出しちゃってさ」




その夢は僕一人が真っ暗闇の中で立ちすくんでいるだけだった。


僕の目先には三人の女の子の背中。




その背中は徐々に離れていく。




それを僕は見ているだけだった。




「待ってくれ」と声は出ても全く身体は動かない。




いや…動くつもりがなかったんだ。




僕がいたところで彼女達にメリットがあるわけじゃない。


むしろデメリットしかないじゃないか。




「えへへ~やっぱりひーくんの匂いは落ち着くなぁ~」


「あんまりくっつかないでって…」


「氷冴くん嫌がってるよ?」


「氷冴が嫌がってるから離しなさい」


「むぅ…」


「どうしてみんな僕の周りに集まるんだろ…」




その言葉に三人の目線が集まる。




「「「この鈍感!!」」」






僕は一人ずつからチョップを食らうのだった

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