第5話 幼馴染と僕

「ひーくんっ!!!!」




 ラノベを読む僕にくっつく桜。


 サイドテールがあたって、少しくすぐったい。




「そういう事は他所でやってくれないかしら」




 そう言ってる割に、羨ましそうな顔をで眺めてますけど翠さん?




「ほら、桜も離れて?」


「えぇ~なんで?久々にひーくんと一緒にいられるのにぃ~」




 ぷくっと頬を膨らませる桜に僕は目も合わせられない。


 だって桜可愛すぎんだろ…


 よく見ると茶髪めちゃくちゃ似合ってるし、昔は黒髪だったけどこれもありだな…




「桜。氷冴が嫌がってるからやめなさい」


「ひーくんは嫌がってないよ。身体は正直だもんね…ひーくん?」




 え…?どこでそんな言葉覚えたんだ桜!?


 翠は顔真っ赤にしてるし…




「い、いや…僕は」


「噓だよっ。からかってごめんね?」


「そ、そっか…」




 なに期待してんだ俺…




「てか、なんで桜は高校入ってイメチェンしたの?」


「ひーくんの部屋でそういう本があったから男の子は好きなのかな~って。」


「いや、みんな好きだとは限らないと思うよ…?」


「じゃあひーくんは?今の私は好きじゃない!?」


「え?僕!?僕は普通に似合ってるし、可愛いと思ってるよ」


「そっかぁ…可愛いかぁ…照れちゃうなぁ~」




 翠は小説を開きながらも、目線は僕達を追っていた。




「み、翠?」


「ふ、ふーん。そっか氷冴は桜みたいなのがいいんだな。よーくわかった」


「なんでそうなるっ!?」


「もういいもん。氷冴のばか…」


「なんで!?僕は翠も可愛いって思ってるよ!二人が僕の幼馴染なんて、何かの間違いとも思ってるくらいだし!?」


「か、可愛い…私が可愛い…」


「そうだよ!!可愛いよ!」




 一瞬冷静になった僕、とんでもないことを口走ったと悟る。


 やばいな。空気がおかしい。


 翠に至っては「プシュー」と蒸気が出そうな勢いで、顔を真っ赤にしている…




「そ、そろそろ帰りましょうか!下校時間も近いし!」


「そ、そーだね…」


「じゃあ僕はお先に…」




 僕は出ていこうとすると、二人が「えっ?」とでも言うかのように頭を傾げた。




「「一緒に帰るよね?」」




 声がハモると、二人の顔が引きつった。




「二人がいいのならだけど…」


「「当たり前ね(でしょ)!」」




 こうして僕達三人は中学ぶりに三人並んで帰るのだった。




 その道中。




「あっ、にーちゃん!」




 後ろから暖香の声がする。




「おかえ、って…にーちゃんが女の子連れてるぅぅ!!しかも二人!?き、今日はお赤飯かな!?あっ、でも二股はダメだよ!?それは世間的に…」


「落ち着けハル!翠と桜だよ!」




 取り乱す暖香の肩を揺さぶり、僕は声をかける。




「はっ…ほんとだ。翠さんと桜さんだ…二人とも一層可愛くなりましたね…」


「あ、ありがとうハルちゃん」


「か、可愛い…」




 翠の顔がまた真っ赤になっている。


 いつもは凛としてるけど、こういう翠も可愛いかもな…




「それに比べてにーちゃんは…」


「え?なんで僕?」




 暖香は僕を、ごみを見るかのように見つめている。


 本当に酷い妹だよ。全く…




「わ、私帰るわね」




 そう言うと僕たちに有無を言わさずに帰ってしまった。




「翠!」




 僕が呼ぶと翠は振り返ってくれた。




「また明日!」




 僕が大きく手を振ると、翠は小さく手を振り微笑んでいた。




「ずるいなぁ…」




 そう呟いた桜は頬を膨らます。




「なんで?」


「だって、少し家が離れてるからひーくんに手振ってもらえるじゃん」


「ちょっとよくわからないけど…僕達も帰ろっか」


「そうだねっ」


「あれ?ハルがいない」


「お邪魔そうだから帰りまーすって言って走って帰ったよ?」




 はぁ…変なところで気を使うなよ…あいつ…










 ♢♢♢♢♢♢♢♢




「にーちゃんおかえりぃ~」


「ただいま」


「さぁ。話を聞かせてもらおうか?いや!聞かせてもらう!」




 誰か…助けてくれぇぇ!!

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