第4話 翠の誤算と二人の契約

昼休み。




 ピロンッ…




『今から部室に集合。弁当持参。』




「翠か…」




 僕は翠から呼び出され、部室へ向かおうとしていた。




「氷冴どこ行くんだ?」


「あぁ…今日は一緒に食べられない。ごめんな」


「お、おい!氷冴!そんなボッチを見るような目を向けるな!」


「いや、そんなことないんだが…」


「こ、この裏切り者!急にモテやがって!くそっ!」


「な、なんでそうなるんだよ!もう行くからな!」




 楓真のやつ…なんなんだよまったく…


 僕は首をかしげながら教室を出るのだった。




「カムバッァァァク!!マイ氷冴ォォ!!」




 聞かなかったことにしよう。




 はぁ…朝のことで機嫌悪くないといいなぁ~




 ♢♢♢♢♢♢♢♢




「きたぞ~」




 部室に入ると翠ともう一人…


 翠と言い合いしている制服を着崩した茶髪美女。




「なんで抜け駆けしてんのよ!」


「別に抜け駆けしてないわよ」


「さ、桜?」


「あっ、ひーくん!」


「ど、どうしたんだよ(いろんな意味で)」


「氷冴。その阿婆擦れの話は聞かなくていいのよ」


「あ、阿婆擦れって…酷い!」




 いや、阿婆擦れではないと思うんだよなぁ~


 僕の直感がそう言ってる。




「てか、そもそも私達には契約があるでしょ。翠は忘れたの?」


「わ、忘れてないわよ…」




 あれ…契約って?


 僕全く話についていけないんだけど。




「じゃあ、私も入部しよっかな!文芸部に!」


「それは嫌」


「翠に拒否権はないから。ひーくんダメかな…」




 桜が僕の顔を覗く。上目遣いで。もう一回言う、上目遣いで。


 そんなの…




「いいんじゃないかな?」




 断れるわけないだろォォ!!




「はぁ…氷冴…」


「やったぁ!よろしくねっ!ひーくんっ」


「うん。また三人で仲良くできるね!」




 しーん…




 唐突に静寂が訪れる。


 あれ?僕地雷踏んだ?




「なんか変なこと言ったかな?」


「そ、そうね。また三人で…」


「翠もよろしくねーアハハ…」




 二人とも天を仰いでいる。


 なんだよ。僕がラノベの鈍感主人公みたいじゃん。




「さっ、お昼を食べましょうか。」


「そうね。ひーくんは真ん中ね!」




 桜に誘導され、僕はソファの真ん中に座る。




「じゃっ。ひーくん隣失礼するね」


「わ、私も」


「二人ともなんで僕の隣?対面のソファも…」




 なんか両手に花なんですけど…




「なんでって、ひーくんと桜はでしょ?」


「そうだけど。なんか変に強調してきてない?」


「そうよ。氷冴と私はだから」




 なんか二人とも怖いんだけど…


 両サイドから殺気が…




「い、いただきます…」




 その日のお昼ご飯、喉を通らなかったのは言うまでもない。




 はぁ、放課後も憂鬱だな。




「あっ、氷冴」




 昼休みが終わる予鈴が鳴り、部室を出た後翠に呼び止められた。




「ん?」


「頼まれていたもの届いてるから、放課後持ってくるわね」


「速くない!?Omazonの急いでるよ便でも使ったの!?」


「そうよ。私の手にかかればおちゃのこさいさいよ」


「まじか!新刊も頼んだから楽しみだったんだぁ~」


「じゃあ。私は生徒会室に寄るからまた放課後ねっ」


「うん!楽しみにしてるよ」




 前言撤回。放課後くそ楽しみだ!




「ひーくん早く~」


「はーい」


「なに話してたの?」


「放課後のお楽しみかな」


「ちぇ~ケチ!」




 桜と共に教室に戻ると、クラスメイトから視線が集まったのも言うまでもない。




 楓真は裏切り者を見るような目で、玲さんはどこか気まずそうで寂しそうだった。




 楓真に関しては知らないけど、玲さんは完全に僕が避けているからだ。


 自惚れていると思われても仕方ないけど、それは間違いなかった。




 そのうちしっかりと話す必要があるな。










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