第2話

 僕は実家でそれから三日ほど過ごした後、新幹線に乗って東京に帰ろうとしていた。車内は席が埋まっていて、僕は窓側の席で、徐々に窓の外が建物が多くなっていることに気づく。僕は駅で買った弁当を食べていた。千円の幕の内弁当で味はなかなかおいしい。ペットボトルの冷たいお茶も用意してある。新幹線は徐々に東京に近づいて、途中の駅で少し乗客が入れ替わった。

 アパートに着くと、僕は鍵で玄関の扉を開けた。ワンルームのアパートで家賃は六万円だ。周りは閑静な住宅街だが、実家と比べると人も車の量もずっと多い。部屋は夏の日差しのせいかむっとしていたので、僕は窓を開けて換気をした。外からは午後の涼しい風が吹き込んできた。

 次の日、僕は八時に起きて、出かける準備をしていた。昨日買ったパンを食べてお茶を飲み、部屋を出た。今日は引っ越しのアルバイトが入っていた。僕は電車に乗って引っ越しの会社のある最寄り駅まで行った。駅から十分ほど歩いたところに建物とトラックが並ぶ駐車場があった。僕はトラックの助手席に乗り、トラックは引っ越しをする家まで行った。家は大きなマンションだった。僕はトラックを降り、部屋まで行って段ボールを持ち、それをトラックに載せていった。何度往復したかわからないが、荷物を積み終える頃には昼になっていた。僕と他の社員はコンビニで食事を買ってトラックの中で食べた。新しい家はそこから車で十五分ほどのところにあった。庭がついていて、二階建ての新築だ。僕はトラックに積んだ段ボールを新築の家の各部屋に運んで行った。

 アルバイトが終わったのは夕方だった。僕は汗びっしょりになっていたので、すぐに家に帰りシャワーを浴びた。シャワーを浴びて服を着ている時に、大学の同級生の木村から連絡があった。今日の夜、食事をしないかとメッセージが来ていた。僕は木村の家と僕のアパートの間の駅で待ち合わせをした。

 僕は駅まで歩いて行った。空はすっかり暗くなっている。夏特有の懐かしさを感じた。東京にも慣れてきたんだなと感じる。木村と待ち合わせた駅まで行くと、木村は駅前のコンビニの前にいた。

「おお、久しぶりだな」

 木村はそう言った。

「一か月ぶりくらいだろうな」

「ちょっと暇になったからさ。夏休みって案外することないんだよな」

 木村はガムを噛んでいた。

「とりあえずいつも行ってる店に行く?」

「そうだな」

 木村はどこかマイペースな性格で、僕とは気があった。特別仲がいいわけでもないが、暇な時間ができるとこうして過ごしたりしていた。

 夜の暗闇の中を歩いて、駅から数分のイタリアンのレストランに入った。僕らは赤ワインとピザを注文した。

「夏休みはどうよ?」

 木村はそう聞いた。

「昨日まで実家に帰っていたんだ」

「実家か。何かしたのか?」

「花火を見た。幼馴染と」

 僕らは赤ワインを飲み、大きなピザを食べた。僕はふいにあの時見た花火を思い出した。隣にいた香織と花火。僕はその記憶を鮮明に覚えていた。

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