06. training




綾祇アヤギくん、そうじゃない」





悠祈ユウキの家の地下室で、悠祈ユウキ相手にバトルを仕掛けているのは、この家の居候である綾祇アヤギ

悠祈ユウキは軽くいなすと綾祇アヤギを叩き伏せた。





「ぐっ‥‥!」


「だからね、力の集め方が悪いんだよ。キミの持ってる霊力はこんな程度じゃないんだから」






悠祈ユウキに一方的に叩きのめされ、綾祇アヤギは起き上がれない。

ここで居候になってから早4か月。

こんな一方的にやられまくりのトレーニングがもう1ヶ月続いている。

綾祇アヤギはぼんやりと天井を見上げた。







綾祇アヤギくんが狙われたのは、その霊力が原因だ。なんとか霊力ダダ漏れ状態をとめないと、キミはこれからもああいう連中に狙われるよ』


『自分の身を守るすべを身につけた方がいい。そのためのトレーニングをしよう。』






あの夜、墓場で怪しげな死神に巨大な鎌で殺されかけたあと、綾祇アヤギを保護した悠祈ユウキにそう言われた。

自分が一体どんな特別な霊力を持っているのかなんてわからないけれど、殺されそうになったとき本当に怖かった。

まだ死にたくない。

だから、トレーニングを始めたのだが、これが思いのほか大変なのだ。




とにかく悠祈ユウキは強い。

スキがない。


そして、手加減なんてしてくれない。




綾祇アヤギが倒れようが、怪我をしようが、起き上がれなくなろうが、容赦なくトレーニングを続ける。

だから毎日毎日ボロボロになるまで特訓しているのだ。

もっともボロボロなのは綾祇アヤギだけで、悠祈ユウキは息を乱すこともないくらいだが。





「仕方ない。今日はここまでね」





ほら、今日も悠祈ユウキはちっとも疲れてない。

いつか疲れたって言わせてやりたいけど、まだまだ綾祇アヤギの力では及ばないらしい。悔しい。

トレーニングのあと疲れて動けない綾祇アヤギをほったらかしていくのももう慣れた。





「アヤギくん、お疲れ様でした。今日もずいぶんボロボロですね‥‥」





床に寝転がったままの綾祇アヤギを回収しにきてくれるのは、青いエプロンがトレードマークのウィン。

おいしいごはんを作ってくれて、家のことを全てこなしてくれる、この家のお母さん的存在。

綾祇アヤギの警戒心をといてくれたきっかけの人物でもある。



疲れきって声すら出さない綾祇アヤギの姿に苦笑いすると、掛け声とともに身体を起こし運ぼうとするウィン。

綾祇アヤギはされるがままだ。

だが、表情からわずかな悔しさの気持ちが見て取れ、悠祈ユウキのやり方はまちがってないのだろうな、と納得する。



『あえて厳しく特訓することが綾祇アヤギくんのためになる』



そう言い切った悠祈ユウキの姿を思い出して、ウィンはひとつ息をついた。






-この屋敷のお母さんとしては、もうちょっと手加減して欲しいものだ、と。



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