02. My Position - grave guardian -




悠祈ユウキサン!!死神が…!!」





夜。

久しぶりにのんびりしようとリビングで寛いでいると、外に出たはずのウィンが慌てて戻ってきた。

“死神”という言葉に、悠祈ユウキの表情がさっと険しくなる。

手近にあった十字架をかたどった剣を手に取り、急いで外へ行く。





「ちっ…、なんて数…っ!!」





外に出ると、異様な光景が広がっていた。

数えきれないほど多くの死神が、一か所を目指して列をなしている。

死神が向かっている先を見ると、ひとりの人間。





「…まさか…?!“霊力狩り”……っ!?」





悠祈ユウキははっとして駆け出す。

彼の存在に気付いた死神たちがざわめき始め、悠祈ユウキを取り囲もうとする。


死神に追われていた少年が、自分の代わりに襲われそうになる人影に気付き、驚いたような目を向けたその時。

群がっていた死神たちが霧散して、先ほど襲われそうになっていた青年が立っていた。





「ったく。久しぶりに物騒じゃないか…」





誰に云うでもなく呟くと、ぐるりと周囲を見渡し、へたりと座り込んでいる少年に近づいてきた。





「大丈夫ですか?」





少年の前にひざを折り、顔を覗き込みながら聞いてくる。

少年はびくりと肩を揺らし、小さく頷いた。





「さっきのは“霊力狩り”。あのカマに狩られていたら、間違いなくきみは死神の仲間入りってとこでしたね」


「…アンタは…」


「自己紹介が遅れました。ここの墓守はかもりで、悠祈ユウキといます。キミは?」


「…綾祇アヤギ…」


綾祇アヤギくん、ですか。見たところ、かなり霊力が高いみたいですから、このままだとまた奴らに狙われかねないですし…僕に付いてきてください」




悠祈ユウキの言葉に、うさん臭そうな目を向けてくる綾祇アヤギ

悠祈ユウキはかまわず綾祇アヤギの手を取り、教会のような建物へ連れて行った。






「お帰りなさい、悠祈ユウキサン。大丈夫でしたか?!」





手の込んだ装飾が施された扉を開けると、待っていたかのように駆け寄ってくる人影。

はちみつ色の髪の毛を二つに括り、青いエプロンをしている姿は、どうもこの豪華な屋敷には似合わない。






「ただいま。今夜は霊力狩りだったみたいだ。今回はこの子、綾祇アヤギくんを狙っての、ね」


「霊力狩り…。最近多いですね…。いったい何を企んでいるのやら。

 初めまして、綾祇アヤギクン。私はウィン。悠祈ユウキサンの使い魔みたいなものです」


「…はあ…」


「とりあえず、綾祇アヤギくんをシャワーに案内してあげて。それからご飯にしよう。ウィン、案内してあげてね」


「はい。では綾祇アヤギクン、私についてきてください」





ウィンの言葉に、綾祇アヤギはしぶしぶ従った。

悠祈ユウキという人物は、ウィンと綾祇アヤギを笑顔で見送っている。

綾祇アヤギはその視線から逃げるように、足早にウィンを追いかけた。








■■■







死神なんてモノに追い回され、死ぬ思いをした綾祇アヤギは、食事を済ませるとほっとしたのか、ソファーで眠ってしまっている。

悠祈ユウキは、毛布を掛けてやるとやわらかく笑い、髪を撫でた。





綾祇アヤギクン、疲れてたんですね…」


「そうだね。かなりの数に追われていたから。ウィンが気付かなかったら今頃…こうしてここにはいられなかったと思う…」


「これからどうするんでしょう…」


「あの様子だと、家族はもう…。今はとにかくこの子に霊力のコントロール力を身に付けさせないといけないね。そうすればあんな風に追い回されることもなくなるはずだから」






眠る綾祇アヤギの傍らに座る悠祈アヤギとウィン。

聖職者として、一人の人間として、綾祇アヤギの辛さを知る悠祈ユウキは、綾祇アヤギを守る決意をした。


それが、二人の出会い。


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